紅-クレナイ-の人《天使な君》34(完)

―ユノside―紅と緑のコントラストが美しい。隣の教会から覗く柘榴の木は、初夏の陽射しを浴びて真っ紅な花が咲き誇っていた。────楽しみだ。気の遠くなるような未来の姿を想像し、一番日当たりの良い場所、やっと根付いたのか若芽をつけ、ぐんぐん伸びる枝ぶりを眺めていた。遠くから歌声が聴こえる、───天使の歌声。また子供達にねだられたらしい。童謡から賛美歌へ、なかなか止まない歌声に、───おいおい、夜までに声を枯らすなよ、...

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紅-クレナイ-の人《天使な君》33

―チャンミンside―「ユノさん、……あまりドンジュさんを苛めないでくださいね。」仕事終わりに迎えにきてくれて、そのまま僕のマンションへ。相変わらずなかなか会えない毎日も、あとほんの少しと思えばまったく辛くはなかった。「柘榴ってさ、若木で植えると実をつけるまでに10年かかるらしいぞ。」「っ、ユノさん、後輩の子たちと一緒に歌わせてもらってるんだから、少しくらい、……話だけでも。」シャワーを浴びたばかりの背中が、しっとりと...

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紅-クレナイ-の人《天使な君》32

―ドンジュside―あの日教会で繰り広げられた光景は、チャンミンの芸能界活動を諦めるには充分だった。ユノがチャンミンとの未来を見据え、着々と準備していたという事実。2人の固い決意を目の当たりに見せられては、もう納得するしかなかった。「なあ、もう歌は教会での賛美歌だけ?」突然の引退発表は芸能界を驚愕させ、しばらくそのニュースでもちきりだった。……が、次第に収まっていく熱に。確かなものが何もない芸能界より、確かな...

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紅-クレナイ-の人《天使な君》31

―チャンミンside―幼い頃の記憶はすべてここにあった。教会へやってくる親子連れ。母親に抱かれ、父親の親指をギュっと握る小さな手。───どうして僕にはないの?その大きな手を求め、伸ばしても届かない現実に、礼拝の夜は泣き疲れて眠るのが日常だった。「チャンミナ、……ここを、俺達の家にしよう。」僕の頬を包む優しい手。愛おしそうに緩んだ眸。親指の腹で撫でるのは、いつもの貴方の癖で。気持ちよさげにうっとりと眸を閉じるのも。「...

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紅-クレナイ-の人《天使な君》30

―チャンミンside―ユノさん、────貴方という人は、………『チャンミナ?…やっと解放された、今、どこにいる?』頬に触れる冷たい感触。機械を通して聴こえる貴方の声は、…もしかして、走ってる?めずらしく息があがっているように感じた。「ユ、ユノさんは、どこ?」もしも、…今の話が真実だとしたら、……ううん、聞きたい、ユノさんの口から直接聞きたい。───今すぐ、会いたい、と、叫びそうなほどの気持ちをこらえて。『ああ、牧師様から連絡...

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