Baby don't cry9

──ソンミside 元々大地主だったのが先々代の先見の明により買い占めた一帯の土地が高騰した。それが会社設立の発端らしい。近年の好調な企業業績を背景にオフィスビル需要が増加、賃料も上昇傾向にあれば不動産業界の収益はまずまずと言っていいだろう。現会長が女性でありながら会社の基盤を強固なものとし、拡充させたのは業界では有名な話で。そのひとり息子が稀にみる夢想家で、世界中を旅しては絵描きなどに興じる親不孝もの...

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Baby don't cry8

そうか、…とそれだけ呟き、ユノさんは再び洗い物をはじめた。 ジウも入店したことだし、そろそろ帰ってくれてもいいのにと思うが一向にその気配はなかった。「あの~、ユノさん?」「なんだ?」あー、機嫌悪いな、と言うより先ほどまでの親しげな雰囲気が夢で通常に戻っただけなのか?「もう5時過ぎてますけど、仕事お休みなんですか?そろそろ帰った方が、…」「休みなわけあるか。今日は8時から早朝会議だ。」「えーっ!それなら尚更...

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Baby don't cry7

「そうか、…動きに無駄がないんだな、…」「よくそんな器用にひっくり返せるよな。」「すげえ、…本当にドーナツだ。」なんだろう、この人は。もし鬱陶しく指図してくるようなら有無を言わせず追い出す気でいたのに。調子が狂う、…こんな素直に感心しちゃって。邪魔だ、気が散ると追い出したいけど、真剣な表情で僕の動きを目で追う人を邪険にもできなかった。「ユノさん、少し静かにして、」「あ、ああ、悪い。あんまりキレイだから、」「...

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Baby don't cry6

僕の前髪をはらう長い指に少しずつ意識が浮上する。こんなに優しく髪へ触れられるのは、子供のころ神父様に褒められたとき以来だ。 それがなんだかうっとりするくらい心地よくて、僕は不思議と身を委ねるような優しいまどろみの中にいた。そのうち触れるか触れないかの距離で髪を往復していた指がふと額を撫でた。鈍い痛み、…ああ、そういえば車から降りるときにぶつけたんだった。そこでぐんと意識が浮上し、あれ?僕はどうして...

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Baby don't cry5

沸騰した頭で車に飛び乗ってから後悔が波のように押し寄せてきた。いくら腹が立ったと言っても店の施錠もせず飛び出してくるなんて。ボーナスで買った中古のミニバンを店の裏手にある銀行の第2駐車場へ乗り入れた。ここから2階建店舗の2階部分がよく見える。その2階に厨房と倉庫、休憩所があり、現在煌々と明かりがともっているのはチョンユンホがまだ中にいるからだろう。それとも明かりをつけたままで怒りにまかせ帰ってしま...

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