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Baby don't cry12

車に乗って5分もすると緑豊かな高級住宅地だ。普段ほとんど通ることのない坂道はため息が出るほど立派な屋敷が建ち並び、その美しい佇まいにどうしたって僕は落ち着かない。そのなかでも一際高級感漂うマンションへユノさんは車を乗り入れる。まさかと思うが、でも多分ここはユノさんの自宅だろう。2層吹き抜けのホテルのようなエントランスに足を踏み入れた途端背中に緊張がはしる。フロントコンシェルジュが恭しく一礼する前を...

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Baby don't cry11

「あまり急ぐことはない。」唐突に言うから何の事かと言葉につまる僕へ、「モッチリング、… ゆっくりやればいい。」などと、それはユノさんが言うことじゃないだろと突っ込みたくなるようなことを平然と言ってのける人へ僕は慌てて首を振った。「こ、困りますって!僕は今年度末の決算までに業績をあげなきゃなんないんですから。はやいとこモッチリングは卒業してくださいよ~!」ユノさんに会いたいと思うことと、ドーナツトレーニ...

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Baby don't cry10

しばらく接待が続き夜に時間が作れないというので、モッチリング修行も当分休みになってしまった。ドーナツ作りを侮ってはいけない。まだやっとモッチリングもどきが出来るかどうかの技術でしばらくの休みは厳しい。きっと1から教え直しだろう。せっかくハードな生活にも慣れてきたのに。一気に教えて目的を達成し、営業後にドーナツトレーニングなんて馬鹿げた仕事をはやく終わらせたかった。そして傲慢で口煩い人からさっさと解...

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Baby don't cry9

──ソンミside 元々大地主だったのが先々代の先見の明により買い占めた一帯の土地が高騰した。それが会社設立の発端らしい。近年の好調な企業業績を背景にオフィスビル需要が増加、賃料も上昇傾向にあれば不動産業界の収益はまずまずと言っていいだろう。現会長が女性でありながら会社の基盤を強固なものとし、拡充させたのは業界では有名な話で。そのひとり息子が稀にみる夢想家で、世界中を旅しては絵描きなどに興じる親不孝もの...

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Baby don't cry8

そうか、…とそれだけ呟き、ユノさんは再び洗い物をはじめた。 ジウも入店したことだし、そろそろ帰ってくれてもいいのにと思うが一向にその気配はなかった。「あの~、ユノさん?」「なんだ?」あー、機嫌悪いな、と言うより先ほどまでの親しげな雰囲気が夢で通常に戻っただけなのか?「もう5時過ぎてますけど、仕事お休みなんですか?そろそろ帰った方が、…」「休みなわけあるか。今日は8時から早朝会議だ。」「えーっ!それなら尚更...

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Baby don't cry7

「そうか、…動きに無駄がないんだな、…」「よくそんな器用にひっくり返せるよな。」「すげえ、…本当にドーナツだ。」なんだろう、この人は。もし鬱陶しく指図してくるようなら有無を言わせず追い出す気でいたのに。調子が狂う、…こんな素直に感心しちゃって。邪魔だ、気が散ると追い出したいけど、真剣な表情で僕の動きを目で追う人を邪険にもできなかった。「ユノさん、少し静かにして、」「あ、ああ、悪い。あんまりキレイだから、」「...

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Baby don't cry6

僕の前髪をはらう長い指に少しずつ意識が浮上する。こんなに優しく髪へ触れられるのは、子供のころ神父様に褒められたとき以来だ。 それがなんだかうっとりするくらい心地よくて、僕は不思議と身を委ねるような優しいまどろみの中にいた。そのうち触れるか触れないかの距離で髪を往復していた指がふと額を撫でた。鈍い痛み、…ああ、そういえば車から降りるときにぶつけたんだった。そこでぐんと意識が浮上し、あれ?僕はどうして...

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Baby don't cry5

沸騰した頭で車に飛び乗ってから後悔が波のように押し寄せてきた。いくら腹が立ったと言っても店の施錠もせず飛び出してくるなんて。ボーナスで買った中古のミニバンを店の裏手にある銀行の第2駐車場へ乗り入れた。ここから2階建店舗の2階部分がよく見える。その2階に厨房と倉庫、休憩所があり、現在煌々と明かりがともっているのはチョンユンホがまだ中にいるからだろう。それとも明かりをつけたままで怒りにまかせ帰ってしま...

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