HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

紅-クレナイ-の人《15の風景》23



































チャンミンside








遠くから陽気な鼻唄が聴こえる。
それはどんどん近づき、ガラッとドアの開く音とともに、

「っっ、ぅぎゃっ!!」

ヘンテコな叫び声になった。



「…お、おはようございます、…」
「っ、び、び、びっくりした、…あんた、チャンミナ?」


「すみません、…驚かせちゃって、」


早朝の食堂。
今朝は一番乗りで、…というか、寝るのを諦めた真夜中からここへ来ていたから当然と言えば当然の。


「驚くも何も、ちょっとやめておくれよ?心臓発作でも起こしたらどうするんだい!」
「…すみません。」


言われてみれば、おばちゃんも結構な歳だ。
悪いことしちゃったなとしゅんとした僕の背中を叩き、「一番乗りが珈琲淹れるって決まりなんだよ、早く用意しな。」とひとりで食堂を切り盛りしてる人が言う。



「取りあえず珈琲飲んでから仕事っていうのが私のスタイルだからね。付き合ってもらうよ。」


朝から威勢の良いおばちゃんに促され向かい合って珈琲を飲む。
いつもは入れない砂糖の甘みが体をほぐし、ホッと緊張が緩んだ。





「それにしても懲りずにまた喧嘩かい?せっかくのキレイな肌が台無しだ。」


やっぱりおばちゃんは何でもお見通しで。
「あれ?でもユノさんは暫く仕事でいないんじゃなかった?」
「あ、…はい。急きょ仕事が入ったとかで、……」



そう、あの日電話でカン社長はすぐにユノさんを帰してくれるって言ったのに。
翌日、メール嫌いのユノさんから入ったメール。


『仕事でしばらく帰れない。
絶対にそこを出ていくなよ。』


たったそれだけの。



でもそれだけならよかった。
急きょ仕事が入ることは今までだってよくあることで。
絶対にそこを出ていくなと言うからには、僕はここにいてユノさんを待ってもいいんだと。
そう思えたから。


それがカン社長からの電話で。
「トラブルがあったって言ったよね。どうしてもユノが必要になったから少し借りるよ。」
と、了承を求められ最後に零れたセリフ。


「…ほんとさ、モテる恋人を持つと心配が堪えないよな?」
なんて意味深なこと、わざわざ言ってくれなくてもいいのに。


そして極めつけは飛行機の中から撮ったっぽい、写真嫌いのユノさんから送られてきた1枚の画像。
そこに写っていたのは、『自由の女神』だった。


ねぇ、ユノさん。
何の説明もない画像だけ送ってどういうつもり?
薄橙色の空、朝日が透明に輝き海に反射して。
遠くに霞むマンハッタン。
確かに綺麗だ。
綺麗だけど、僕が欲しいのは自由の女神なんかじゃなく、…笑ったユノさんの写真、それだけでいいのに。


───それだけが、…いいのに。













「…チャンミナ?」



名前を呼ばれハッとする。
つい考えこんでしまい、目の前には不思議そうに僕を見つめるおばちゃん。



「チャンミナ、…泣くんじゃないよ?」
「え?…な、泣いてなんか、…」
「ふ、それでかい?」


ぽとりと頬から顎を伝い、まだ温かい珈琲へ。
一瞬だけできた波紋も、続けざまに落ちれば残像のような様々な模様になる。




「───っ、う、…」



目を閉じればさらに大粒の塊がポタポタと手の甲を濡らした。
そうなるともう止められなくて、しゃくり上げるくらいの僕をおばちゃんはただ見守ってくれる。



「チャンミナ、どうした?ユノさんが留守で寂しいってだけじゃなさそうだね。」
「や、…だいじょう、…ぶ、…」



それでも涙が止まらない。
あの時はそれが最善だと思って行動した。
初めて見るユノさんの感情を無くした激しい怒りに身がすくみ、ユンホくんを守らなければと思ってしまった。



「いいから、話してごらん?それだけでも楽になるから。笑ったりからかったりしないから。」
優しく頭を撫でられその温もりにさらに涙が溢れる。
 






あの足音が忘れられない。
どんなときも冷静で、常に足音をさせない人だった。
それが、…我を忘れたような、耳にこびりついて離れないユノさんの。



───僕は、傷つけた。


芸能界から僕を全力で奪い、施設という生きる場所を与えてくれた人を。
僕がすべてを捨ててまで選んだ最愛の人を。















ポツリポツリと独り言のように話す僕に優しい視線を向けたまま。
時々頷いては僕の頭を撫でるから子供じゃないのにって思うけど、その手に癒され嘘のように肩の力が抜けていた。



「大丈夫だよ、チャンミナ。ユノさんはそんなことで愛想を尽かすような男じゃないだろう?」
「…そんなこと、…」



───僕が一番、分かってる。



ユノさんが怒るのは当然で。
もし逆の立場だったらと考えた。
僕とユノさんの家で、僕とユノさんのベッドで。
ユノさんが誰かを組み敷いてる姿。
匂い立つような雄が僕じゃない誰かを胸に抱いて。


そんなのあり得ないと、想像しただけで暗闇が覆い指先が震えるのに。



『絶対そこを出ていくなよ。』
そう言えるユノさんはやっぱり大きい人だと思う。
それと同時に、決して僕を責めず自分のなかで消化してしまうユノさんをもどかしくも思うんだ。










「それにしてもチャンミナ、……」
「…?」


深刻な表情で僕を凝視したと思ったら突然プッと吹き出したおばちゃん。


「な、なんですか?笑いごとじゃ、…///」


ハラハラ、涙の止まらない僕の前でクスクス笑いだした。
からかったり笑ったりしないって言ったのに!


「あ、ああ、ごめんよ。だってさ、あんたがユンホを誘惑したって?…プッ、よくユノさんは笑わなかったねぇ。」
「っ、そんな雰囲気じゃなかったんです!っもう、失礼な人ですね。」
「ごめんごめん、とんだ思春期の暴走だ、困ったもんだね、ユンホにも。」


その言い方があまりに軽くて、そんな大したことじゃないように思えてしまう。
おばちゃんはいつもそうだ。
生きてさえいれば、やり直しは何度でもきくよ。
そう言って笑うおばちゃんにいつも助けられるんだ。




「ユノさん、…もう怒ってないかな?」
聞けば、
「知るかい、そんなこと。」
あっさり言われるのはいつものこと。
「でも『自由の女神』の写真送ってきたんだろう?仲直りのプレゼントじゃないのかい?」
「えー、それはあまりにも楽観的に考えすぎじゃ、…///」
「そうだよ、『俺の女神はお前だよ』って意味だよ、きっと。帰ってきてお返しにキスのひとつでもしてやりゃ仲直り完了だね。」


「…おばちゃん、…スゴい、前向きですね。」
「ふふ、まあね。」
決していい加減に言ってるわけじゃないおばちゃんの明るさに救われる。
でも駄目だよ?
もっともっとユノさんに会いたくなって壊れたんじゃないかってくらい涙が止まらない。



「おばちゃん、…ユノさんに、会いたい。」
「私に言われても困るねぇ。」
「うん、…でも会いたい。」
「ふ、…まったく、あんたは。これだけユノさんに夢中なあんたのどこをそんなに好きなんだろうねぇ、ユンホは。」


困ったように肩を竦める仕草。
ふぅと軽くため息をつき。


「ユンホはね、ユノさんを愛してるあんたを求めてるんだよ。口ではああ言ってもユノさんへの憧れも半端ないからね。」


「…そのうちユノさんあってのチャンミナだって気づくよ。」


仕方ないねえと言うように細めた眸からはユンホくんへの愛情もうかがえてそんなことにも嬉しかった。







結局、朝食の手伝いに来たはずなのに泣きすぎで疲れちゃって。
「全然眠れてないだろ?このまま寝ておいで!」と食堂を追い出された。







僕が後にした食堂で。


「…ホントにあんたはコソコソと、…ほら?出ておいで!」



「───ユンホ。」


そんな会話があったのを、僕は知るよしもなく。













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