HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

APPLAUSE-告白-95



































しばらく放心して、押し寄せる焦燥感のまま部屋を飛び出した。
何も持たず鍵だって掛けてない。






だって、何だよアレ。
聞いてない、何も聞いてない。
僕が怒ることってアレ?
だったら完全にアウトだよ、ユノ。





玄関の前に立ち大きく深呼吸する。
そっとドアノブを回せば、…開いてる。
軽くはないドアを勢いよく開けて。





───絶句する。



常に3足は散らかっていた靴がない。
脇のシューズボックスが口を開けて綺麗に磨かれた中身を晒していた。
元々そんなに飾る人じゃない、それでもそこかしこにあった生活感をすべてリセットしたような玄関。
土産で貰ったらしいヘンテコな首振り人形も立て掛けただけの絵ハガキも何もかも。


不法侵入と言われようが我慢できず勝手に奥まで進む。
何度も訪ね何度も泊まった慣れ親しんだ部屋。
奥のリビングへ辿り着くまでのドアがすべて全開で。
嫌でも見えてしまう、まっさらなフローリング、四角く切り取ったような窓、…空っぽの空間。





心臓が跳ね、一瞬だけ躊躇する。
それでも。
予想通りのソコを確認するまではと、どこかで少しだけ期待していたのかもしれない。







───思ったより広いんだ、…なんて的外れなことを呟き、


雪崩れのようにフラッシュバックする光景。



いつも一番に向かうビールだらけの冷蔵庫。
その脇の食器棚には自然と僕のものになっていた皿やマグ、一番手前に置いたビールグラス。
僕ひとりで夜食を食べていたダイニングテーブル。
パソコンや専門誌、書類やスケッチブック、最近ではすっかり仕事用になっていたローテーブル。
そして南側いっぱいにとられた大きな窓とベランダ、底深なスチール製の灰皿と2人分のスリッパ。


それがすっかり消えた輪郭だけの空間で呆然と立ち尽くした。






視界はクリアなのに頭のなかは靄がかかり、今朝悪戯しようとしたユノとここの住人のユノは同一人物なのだろうかとおかしくなりそうで。


カタンと物音にすら気づかなかった。


「あれ、…どちら様?」
そう声を掛けられ跳ねるように振り返った。
立っていたのは営業マン風の男性で、車へ忘れ物を取りに行っていただけなんですと言い訳がましく言う。


「…あの、この部屋の持ち主の知り合いなんですけど、…これって、…」
声が震える。
まったくの他人がこの部屋に居て。
それを認識したとたん、ほんの少しだけ残っていたユノの気配さえ消えた。








コの字型の通路、重い足を引きずりながらふと視線をむける。
葉が落ち丸裸になった枝々や剪定を終えたばかりの梅の木が寒々しい。
それでも、───ユノが愛した中庭だったのに。








「ここは立地条件もいいし、まだ新しいのですぐに買い手がつくと思いますよ。とにかく急がれていたので、親会社のご子息ということもあって我々も焦りました。」



この事実をどう受けとればいいのか。
ユノへ電話しても仕事だからか通じず、今の僕に分かるのは《もうストーカー気味に覗くことは出来ない》ということだけ。


不動産会社の人があちこち写真を撮っていて、ベランダからの景色をお願いして撮ってもらう。
「春にはいろんな木々が一斉に芽吹き、色とりどりの花壇がそれは綺麗なんですよ。」
なんて宣伝文句のように口にしてしまい、なんだか泣けてくる。
帰り際最後に寝室だけ覗かせてもらった。
多分、ベッドのあった場所。
その脇にポチっと穴があいて補修した白い痕があった。
指を滑らせ、今はどこにあるのか、青灰色のドライフラワーを想い視界が滲むのを止められなかった。









なぜ。
どうして。
疑問ばかりが浮かぶ。



どうしてひと言相談してくれなかったのかと、そう思えば一発殴らなきゃ気が収まらない。
事務所へ行く前にユノの会社へ殴り込みだと着替えて部屋を出ようとしたその時。



ピンポーンとインターフォンの音。



ユノだと思った来客は意外にもユリさんだった。





「ユリさん?」
「えっと、…おはよう、チャンミナ、…///」


おはようって時間はとっくに過ぎたのにそんなこと気にも止めずやたら顔が赤いユリさん。


「あれ、店は?どうしたんですか、急に。」
「ん、…あ~、身内はやりにくいなぁ~///」
「はい?」


最初何のことかと。
すぐに、せ~の!と小さな掛け声を聞く。





「コレ!!」


目の前に差し出されたのは、花びらの縁の細かいフリルとそのうち開花するほど外弁が反り返るさまが美しい純白の薔薇。






「あ、…スペンドアライフタイム、…?」


「よ、よく知ってるわね?///」


その薔薇を3本。
そりゃあ薔薇のなかでも華麗さと美しさ、その花言葉でウェディングブーケによく使われる花だ。




モジモジと言いにくそうなユリさん。
「メッセージは花言葉、…なんだけどね、///」
「う、…うん、///」


なんだかいろいろと見えてきた。


僕のイメージを白い花だと言い。
3本の花を贈るロマンティックでクサイ人。
で、昨日からの気合いはいまだに続いてるということなのか。




「んと、…言うわよ?///」
「ど、どーぞ、///」



ユリさんがあまりに照れるから僕まで羞恥の極みで、一発殴る理由がまたひとつ増えたとコッソリ思いつつ。







「《生涯、共に生きよう》、ぅう、///…だそうです。」




それでも嬉しいから僕も大概だ、───。




「…あの、差出人は?」
取りあえず、ユリさんがすっかり忘れてるらしい重要事項を尋ねてみる。


真っ赤になったユリさんが、ぷぅっと頬を膨らませ、
「っ、分かってる癖にっっ!///」
花束と一緒にこぶしまでおみまいしてきた。


そのこぶしをわざとまともに受け顔をしかめる僕へ。
「──多分、…ちゃんとユノさんとチャンミナのことは気づいてたから。でもハヌルの想いも嫌ってほど見てきて、…出来れば好きな人の恋を叶えてあげたいじゃない?」
なんて切なく顔を歪めるから。
ごめんなさい、としか僕も言えない。



「いいのよ、チャンミナが謝ることじゃないもの。それにユノさんはいっさい隠す気ないんだって、本気なんだなって分かったし。可愛い弟が心配なのよ、これでも。」
そう言ってニコッと笑った。
ユリさんの優しさがじんわり胸に沁みて、さらにユノへの怒りがわく。






一度だけ薔薇の香りを楽しみ水を張ったボウルへ入れた。
勝手に居なくなった代償を薔薇3本でチャラにしようとは思ってないよね?
ユノへ殴り込み予定はまだ継続中で、
「ユリさん、これから急ぎで出掛けるから。」
そのまま靴を履こうと屈む僕へ差し出されたメモ。




「…?」
「伝言だって、…メッセージに伝言って追加料金を請求したいくらいだけどサービスしておくから。」


じゃあ、と頬を染めたまま帰るユリさんへ手を振りながら、ソレに目をとおす。




時間と住所だけ書かれたソレ。
走らないと間に合わないような時間設定に、チッと舌打ちしながら思いきり僕は走った。
















※タイトル画、バナー画像をAliさんよりいただいてます『ホミンを愛でるAliの小部屋』

















にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト