HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~愛憐~1





































まさか段ボールの中に人が閉じ込められてるとは思わなかった。
子供だ。
それも痩せ細り見るからに弱った子供。
膝を抱え丸くなり震えていた。
震えてるから生きてると認識できた。
それほど顔色が悪く薄汚い。



驚いたがここで声をあげたら他の組員に笑われるとユンホは静かに喉を鳴らした。
その時視線の先で、油っぽくベットリした前髪の隙間に鈍い光を見る。
目が合った。
離せなくなった。
その瞬間、首をもってかれるほどの重力を感じ両手で思わず支えてしまったのは、勢いよく抱きついてきた薄汚い塊だった。















広域指定暴力団浩道組系東神会。
このご時世でそんな看板を掲げられるわけもなく、表向きは株式会社東神として金融業を、その他不動産会社から人材派遣会社など多岐にわたるグループ会社を所有している。
ユンホはそこの四代目組長チョンガンソクの次男だった。



「うわ、汚ったねぇ!ユノ、なんだよそのガキ!」
大型テレビが入るほどの大きさの段ボールでもちょうど死角になり目立たず、いち早く見つけたのがユンホで、ユンホの背後から覗くように顔を出したのはジノ。
若頭の息子ジノとは同じ大学に通い兄弟のように育てられた。
ゆくゆくはユンホの右腕となり働くであろう男はユンホとは全く違うタイプの明るく気立てのいい男だった。
それなのになぜか気が合うとユンホは思っていて、実際常に行動を共にしていた。



「っ、知るかよ、…コイツが勝手に、ちっ、離せよ!」


今まで全く家業にノータッチだったのが、20歳を目前に勉強がてら煩わしい仕事へ駆り出されるようになった。
その中でもユンホは借金の取り立てが一番嫌いだ。
弱いもの虐めをしているようで酷く気持ちが沈む。
返すあてなどない人間へ貸す方も貸す方だと思う。
そしてそれが甘い考えだとも十分承知していた。




任侠の徒と言われた現会長の祖父が膨大させた組織を、父である組長がその明晰な頭脳で豊潤な資金をもたらし安定させた。
穏健派と謳われる組だが蓋をあければ取り立てにも容赦はない。
結局はどうあがいても極道は極道なのだ。










ユンホから離れて数メートルのところで様子を窺っていたジノは意外だとでも言いたげに目を丸くする。
今日の取り立ては水商売の若い女だと聞いていたが子供がいるとは知らなかった。
しかも捨てネコのように段ボールに放り込まれ、きっとろくに食べさせてもらってないのだろう、ガリガリに痩せボサボサの伸びきった髪で男女の区別もつかなかった。
折れてしまいそうな腕がありったけの力をこめてユンホの首に巻きついた時はビックリしたが、それよりもその小汚い子供に離せと言いつつ引き剥がすよりも支えるような仕草のユンホにビックリしていた。








道を歩けば誰もが振り返るような容姿の持ち主は誰よりも孤独だった。
6歳年上の兄と10歳年下の弟。
年が離れているのは全員母親が違うからで、その母親も産んだと同時に縁を切られ追い出されている。
兄デイルと弟ハイルはまだいい。
元々金銭契約を結んで産んだその筋の関係者だったから。
それがなぜかユノの母親だけは一般人で、彼女の不幸は産まれたばかりの赤ん坊とその父親を愛してしまったことだ。
小学生の頃のおぼろげな記憶ではあったが覚えている。
何度もあの家の門をたたく彼女を。
会わせてくれと。
自分の子だと何度も何度も。


にべも無く追い返すあの頃は若頭だった組長を冷酷だと思ったが、…今になって思う、組長は組長なりに彼女を愛していて、堅気に戻しまっとうな幸せを送らせたかったのだ。
組長は本当の意味で彼女を愛することができないのだから。
なぜなら組長は男しか愛せない人なのだ。



いつしか彼女の足も遠のき、風の噂で亡くなったと聞いた。
ユノはそれを知っているのか。
もちろん知ってるだろうな。
でも、何も言わない。


そういうのがユンホの年齢のわりに大人びたところであり、すべてを諦めたような何もかも静かに受容れてるようなジノにとっては歯がゆいところでもあった。







「おい、っこら、…離せって!」
ひとことも発せずひたすらがむしゃらに巻きつく子供を、ユンホの力であれば瞬時に引き剥がし投げ飛ばすことは容易だろう。
そうするどころか、急に手を離した子供が落ちないように然り気なく支えるユンホの手がジノはおかしかった。


「ユノさん、ジノさん。どうやらあの女逃げたらしいっすよ。身の回りのものが全て無くなってる。ちっ、…あの女!」
若い組員が乱雑に散らばったゴミを蹴散らしながらやってくる。
その男はユンホ達よりいくつか年上だがそこは組長や若頭の息子とあっては礼を尽くし言葉遣いも丁寧だった。
「あれ?なんすか、その小汚ないの。」
今さら気づいた男が咄嗟にユンホから子供を剥がそうとするが、子供の腕が緩むことはない。
「っ、おい!てめぇ、離せって!あの女の子供か?母ちゃんはどこ行った?」
まったく無反応の子供にユンホは耳が不自由なのだろうかと思う。
「お前、名前くらい言えよ!しかし汚ねぇし臭ぇな。ユノさん、そんなの放り投げちまってくださいよ。」
女に逃げられ回収が困難になったことに男はイラついていた。
ユンホがいなければその子供をサンドバッグに憂さを晴らしていたかもしれない。
ユンホは弱いもの虐めを嫌う。
ユンホの前でそんなことをしようものならあらゆる格闘技を極めたユンホによって逆にぼこぼこにされるのは目に見えていた。




「あのさぁ、その子供を人質として連れて帰らねぇ?さすがに自分の子供を連れ去られたとなっちゃあ慌てて取り返しにくるだろ。」
そう言ったのはジノで、ユンホの首に埋めた子供の顔を覗きこもうとする。
「な、お兄ちゃん達は恐くないぞ。名前は何て言うんだ?」
わざとらしいほど優しげに言うがやはり無反応の子供。
「ユノ、コイツ耳が聞こえねぇのかな。」
そこでピクリと反応した。




「……ユ、ノ?」



首元をもぞもぞと動く感触と生温かい息が擽ったい。
消え入りそうな震える声。
ああ、と思わずユンホはこたえた。
縋るような弱々しい声音を拾いあげたかった。



「っ、ユノ、…ユノユノユノ、っ、…!」
「っ、ぅわ、」


どこにそんな力が隠されていたのか、さらに強く抱きつく子供にユンホは仰け反りそうになる。
高く澄んだ声。 
これでは男か女かまるで分からない。


「…名前、…お前、名は何て言うんだ?」
ユンホが静かにそう問えば、ゆっくりと小さな顔が持ちあがった。
肌が薄汚れて血色が悪い。
形のいい鼻の下にはカサブタがあって鼻血の痕だろうか。
厚めの唇の端は青く痣が残っていた。 
それが戸惑いがちに動いて、ユンホにだけ聞こえるように小さく、


「…チャンミン。」


そう呟いた子供の、なぜかそこだけ澄んだ川のせせらぎのように清らかな眸から目が離せず。


ざわつく気持ちをユンホは持て余していた。















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