HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~愛憐~2




































総檜の立派な門を抜けると広大な庭園が広がっていた。
この季節は桜が満開でそれは美しく、ユンホに縋りついたままどうしても剥がれず結局赤ん坊のように抱かれたチャンミンがチラチラと視線をなげる。
「綺麗だろ?」
ベンツの後部座席をおりながら抱いたままのチャンミンへユンホは声をかけた。
一瞬体を強張らせ怯えたように顔を埋めながらも、それでもウンと微かに頷く。
自宅へ戻るまでにいくつか質問をしたが頷くか首を振るだけで喋ろうとしない。
ユンホが何を聞いても、「ユノ。」と答える。
ジノに至っては怯えて目すら合わさず、見たところ5歳くらいに見えるが頭が少し弱いのだろうかとユンホは思っていた。



「ユノ。親父さんの所へソイツを連れてくか?」
「や、まだいい。取りあえず風呂へ入れて、ある程度喋れるまで落ち着かせよう。」
「ああ、…だな。じゃあ俺がエナさんに声かけてくるからお前は離れに戻ってて。」


わかったと言いながらユンホは目の前の本宅から脇にそれる。
数奇屋造りの平屋建ては横にも奥にもだだっ広く一見趣のある本格的和風住宅であったが、木造に見せかけた柱は鉄筋で開放的な窓はすべて特殊な防弾ガラスだ。
広大な敷地にいくつか建っている離れは組の若い衆や使用人が住み、その中でも一番立派な離れをユンホがひとりで使っていた。
庭園を囲む高い塀には有刺鉄線が張られ、いくつか置かれた雪見灯篭は趣深いが結局は監視カメラなのだ。






小さく区切られた庭園の小さな池を横切る。
ふと意識を向けたチャンミンへ、「小さいけど鯉がいるぞ。」そう言った途端跳ねた鯉が水飛沫をあげ、ヒャッと跳ねたチャンミンが面白くてユンホは笑った。
「…こ、い?」
「そう、鯉だ。」
初めて“ユノ”以外の単語を話したと、それだけでなぜか嬉しい。
「…キレイ。」
「ああ、キレイだな。今跳ねたのは“紅白”という種類の錦鯉。ほらアソコ、紅白に黒が混じったの、アレは“大正三色”。頭の天辺が丸く緋色になってるのが“丹頂”。」
ユンホが住む離れに作られた小さな庭園の小さな池は元々ユンホの為に作られたもので、ユンホはこの空間をとても気に入っていた。
習慣のように錦鯉を眺めるのはユンホの憩いで、それに反応してくれたチャンミンが嬉しい、嬉しいからつい細かく説明してしまった。
きっとこの子供には通じないだろうに。




「わ、っ、あぶな、…!」
慌てて抱き直そうとするが、突然両手で押され足をばたつかせたらそれも間に合わず。
ドシンと尻から落ちて何とか掴んだ片腕で頭を打つのは避けられた。
「おっ前!急に飛び降りるなよ、あぶねぇだろうが!」
そんなユンホの声などまるで聞こえないように一目散に池のほとりまで走っていく。
ペタリしゃがみこんで動かなくなったチャンミンをユンホは呆れたように眺めた。
「おい、お前を風呂へ入れてくれるエナさんがもう来るだろうから家へ入るぞ。」
そう声をかけたが石にでもなったように動かない。
おい、とユンホ自身も膝をおりチャンミンに並び覗きこんでみる。


「…あれは“紅白”、“大正三色”、…あ、“丹頂”、…きれい、…」
チャンミンは10匹ほどの錦鯉をぐるぐる視線で追って名前を繰り返していた。
ユンホの声など聞こえないはずだ。
顔の半分を隠しそうな前髪から爛々と輝く眸が覗いて、夢中で鯉の名を呼びその姿を追っている。



可愛いな、…それに、頭が弱いわけでもないらしい。


鯉とチャンミンを見比べながらユンホは思う。
それはまだ道端ですれ違うペットに抱く感情とそう変わりなく、いずれ恐ろしいほど焦がれる想いを抱くとは想像すらしていない出会いの日だった。












「っ、ユンホ坊っちゃんっっ!ちょっと、…っっ!」



何ごとかとユンホは洗面所まで走った。
後ろからジノもヤレヤレといった様子でついてくる。
ガラッと引き戸を開ければ、ユンホ達兄弟の乳母であり母親代わりの使用人エナが顔や腕を引っかき傷だらけにして立っていた。
「エナさん、…どら猫でもいたか?すごい傷だ。」
呆然とするユンホとジノへフンと鼻を鳴らし指した先には膝をかかえダンゴ虫のように丸くなった塊。
「どら猫の方がいくらかマシだよ。なんだい、この子は!風呂でキレイにしてやるってのに、暴れるは噛みつくは、引っ掻くは。何を言っても頑なに喋らないし、ユノユノってそればっかり。」
「あ、…あー、」
「ほら、やっぱりな。どうもコイツは最初に目があったユノを親鳥だと勘違いしてるらしいぞ。親鳥は親鳥らしく、ユノ、お前が風呂へ入れてやりな。」
ジノがそんなことを言い出して、ユンホだってこの子供を手懐けたわけじゃない。
さっきだって暴れて落っことしそうになったくらいだ。
「っ、ユノ!」
それでもその塊がユンホの姿を認めた途端走り寄り足に縋りついてくるから、
「あー、…しょうがねぇなぁ。」
そう言うしかないユンホだった。









普段離れではシャワーしか使わない。
でも今日はしっかり浴槽に湯をはった。


「ほら、ここへ座りな。」
チャンミンはユンホと二人きりであれば驚くほど素直に従う。
古びたトレーナーとズボンを脱がせ、まずユンホはその痩せこけた手足に驚く。
そして黄ばんだシャツとよれよれのパンツ。
初めて会う子供なのになぜか汚いという嫌悪感はなく、早く清潔な下着にかえてやりたいと思う。
全て脱がして思わず凝視してしまった。
至るところに残る痣。
青いのや赤い痣、黒ずんで色素が沈着してしまったのもある。
ああ、これは煙草を押しつけられた痕だろうか。
皮膚の焼け焦げた痕が痛々しくて思わず眉間にシワが寄ってしまう。




「…ユノ?」
自分の身体に残る痕をひとつひとつ撫でるユンホを不思議そうにチャンミンが見つめる。
「これはお前の母ちゃんが?」
「…違う。ママはそんなことしない。」
「じゃあ誰?酷いな、…あとから薬を塗ってやる。」
ユンホが触ると時々顔をしかめる。
内出血をおこした傷痕は所々腫れ上がっていた。
「ママの、…恋人。僕が邪魔だから。僕が悪いの。ママは殴ったりしない。」
ぎゅっと唇を噛み締めるのが痛々しいほどで、それは嘘だなとユンホは思った。
引っ掻いたような切り傷も多い。
おそらく長い爪の人間もこの傷をつくってるはずだ。
「…そうか。」
「箱に、…入れられて、…このままずっと目が覚めなきゃいいなって。でも息が苦しくて、…」
ポツポツと話すチャンミンを温かいシャワーで流す。
泡立てたスポンジでゆっくり優しく身体を洗った。
髪の毛なんて何度シャンプーをしても泡立たないとは、よほど汚れていたのだと思う。


手でこんもり泡立てたのを滑るように頬にのせ、親指の腹でマッサージするように広げた。
身体は折れてしまいそうなのにぷっくりとした頬が子供らしくて、恥ずかしいのか伏し目がちに少しだけ震えている。
別に子供好きというわけではない。
むしろ子供の無邪気な残酷さは嫌いだ。
それなのに自分がこれほど慈悲深い人間だったのかと意外だった。
それほど、この目の前の弱りきった子供が気になってしょうがない。
 


まだ、笑った顔も泣いた顔も見ていない。
無表情のまま怯える表情と、ほんの一瞬光がともる眸。



「本当に…死んじゃうかもしれないって、でも、…助けてくれた。ユノが、…助けてくれた。」


泡だらけの細っこい腕が伸びてきてユンホの首へ巻きつく。
こんなに怯えてるのに、これは最初から、ユンホへ抱きつく腕には一切の迷いがない。



“どうもコイツは最初に目があったユノを親鳥だと勘違いしてるらしいぞ。”
そう言ったのはジノだが、あながち間違いでもないらしい。




「あーあ、お前が抱きついてくるから服が泡だらけになっちまった。…しょうがない、俺も風呂に入るか。」
そう言いながらチャンミンの背中をぽんぽんとあやすように撫で、


「な、──チャンミン。」


初めてチャンミンの名をよんだ。
 


















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