HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~愛憐~5











 























ユンホの思いは取りあえずチャンミンへ伝わったらしい。
翌日からたどたどしくではあったけど誰とでも話すようになった。
伏し目がちだったのが少しずつ相手の目を見て喋るようになった。
バッサリと切った髪の毛はもうチャンミンの澄んだ眸を隠さない。


くっきりとした二重瞼にくるんとカールした長いまつ毛。
それが笑うとふにゃり崩れる。
その愛らしいさまに誰もが好感をもった。
おいしいお菓子があるぞとコワモテの男達が入れ替わり立ち替わり離れへやってくる。
これじゃあとても人質には見えない。
そう思うユンホだったが、結局のところ誰よりもその立場をわきまえるチャンミンだったから皆に可愛がられるのだ。



毎日の庭掃除はかかさない。
小さい身体に不釣り合いな竹ぼうきを器用に操り桜の花びらを掃いていく。
そんなチャンミンを縁側から眺めるのがユンホの癒しになっていた。
掃いても掃いても降ってくる花びらを、追いかけるようにクルクル回る。
時おり足を引っかけ花びらの絨毯へ尻餅をつく。
恥ずかしいのか、大袈裟に唇を突きだす仕草さえ可愛いとユンホは思うようになっていた。




「チャンミナ。落ちてくる花びらを“幸せ”だと思って掴んでみな。」
冗談半分の遊びだったのに、ひらひら舞う花びらは案外つかまえにくい。
手のひらに乗せたつもりが指の間からするりと抜けていく。
「あ~~っっ、もう!」
「くっ、下手くそだなぁ。そんなんじゃ幸せは掴まえられないぞ。」
縁側に片肘ついて寝そべっていたユンホがひらりと起きあがった。
大きな身体にそぐわずユンホの身のこなしは軽くすばやい。
一瞬のうちにチャンミンの元へたどり着き、風にのって舞う花びらを見上げた。
「こういうのは闇雲に追っても駄目なんだ。」
言いながらじぃっと空を見据える。
その整った横顔を見いるように眺めてチャンミンは思う。





段ボールを飛び出したら別世界が広がっていた。
見たこともない“キレイ”が溢れる世界。
満開の桜。
色とりどりの鯉。
跳ねた水飛沫の眩しさ。


───そして、ユノの横顔。





これは夢なんだとチャンミンは思っていた。
ここがどこなのかも分からないし、分かっているのは自分が人質だということ。
母親の借金で取り立てが来るのはしょっちゅうで、殴られたことも蹴られたこともある。
それなのになぜここの人達はあったかいんだろうと不思議だったし、いつ目が覚めて元の世界に戻ってしまうのか怖くて仕方なかった。








「あっ、」
目の前を一瞬だけユンホの腕が横切った。
あまりに素早い動きだったからチャンミンの方がかたまってしまう。
そんなチャンミンの目の前に差し出されたユンホの手。
勿体ぶるようにそっと開いた指の隙間から淡いピンクが見え隠れしていた。
「チャンスを狙って、仕留めるのは一瞬だ。」
「すご~い、ユノ!」
大袈裟に拍手されるとかえって恥ずかしいユンホだけど、キラキラ輝く満面の笑みが見られるのは満更じゃなく伝染するように口角が緩んでしまう。
「これ、チャンミンにやるよ。」
そう言えば一瞬嬉しそうに目を輝かせ、しばらく考えこんでふるふると頭を振った。
「どうして?」
「…だって、…」
「…俺のじゃ嫌?」
「だって、…僕の“幸せ”は僕がつかまなきゃ。」
チャンミンのこういうところをユンホはとても気に入っていた。
ご飯を食べさせてもらってるからとエナの助手のように動くチャンミン。
かえって鬱陶しいよと悪態つくエナだが、彼女がいかにチャンミンを気に入ってるかは一目瞭然だった。
「そっか、そうだな。」
ぽんとチャンミンの頭をひと撫でし、
「桜は散りはじめたらあっという間だ。急いで“幸せ”を掴めよ。」
そう言い置いてユンホは部屋へ戻っていく。
そんなユンホの後ろ姿をチャンミンはずっと見つめていた。



桜が散りきった頃には大学が始まる。
そうなったら殆ど離れを留守にするからさ、お前、エナさんのところへ行くか?
ここより狭いけど、きっと賑やかで楽しいぞ。


そんなユンホとの会話を思い出していた。








翌日、その日も麗らかな春の陽気だった。
縁側で本を読むユンホの耳に微かに自分をよぶ声が聞こえる。
そっと本を置き耳をすませば、確かに庭園を区切る生け垣の向こうから聞こえた。
パタパタパタと特徴的な。
今まで運動不足だったから少しのことで息がきれる。
毎日庭園周りを10周しろと命じたら馬鹿みたいに真面目に取り組み、すっかり年頃の子供らしい足になった。
そんな足音だった。




「っ、ユノっっっ!!」



生け垣が途切れた隙間、本来は出入口ではないがユンホが出入りするから自然にチャンミンも出入りするようになったそこから飛び込んできたのは、今にも躍りだしそうなチャンミンだった。



「ユノォーーっ!」
「っうわ、…っ!」
体重もろともタックルされて、ドンッと背中を打ちつける音と鈍い痛み。
顔をしかめるユンホへ、あぁぁ、大丈夫?などと口先だけで心配し、それよりも報告したい何かでうずうずしてるチャンミンが分かりやすくてユンホは笑えた。
座り直したユンホの膝へドスンと跨いてくるから背中へ手を添え、なに?と聞いてやる。



「っ、これ!見て!」


チャンミンが差し出したのは小さなしおり。
ぐいぐい目の前に持ってくるから近すぎて見えなかったが、小さな手をつかんで少しだけ離せばどうやら桜の押し花のようだった。


「これ、チャンミンが掴んだ“幸せ”?」
にっと笑ったユンホへ嬉しそうに何度も頷く。
「エナさんがね、アイロンでギューーッてしてくれたの!」
本当に嬉しそうに笑うから、ユンホは少しだけ面白くない。
エナさんに押し花を作ってもらうのはよくて、自分が花びらを取ってやるのは駄目なんだ。
そんなこと、全然意味が違う。何を言ってるんだ俺は。と焦って思い直す。



「でね、これはユノの。昨日縁側の上にポイしたでしょ。」
そう言って同じようなしおりをもうひとつ。
「んふ、おそろい!」
「チャンミナ。」


よほど嬉しいのか興奮ぎみのチャンミンがぎゅうっと抱きついてくる。
これはもうチャンミンとユンホにとって挨拶くらいの日常になってはいたが。
くん、と鼻を鳴らす音、
すりすり、…とユンホの鼻先へ自分の鼻先をくっつける。
「っ、…チャンミン、…?///」
鼻先と鼻先を擦りあわせ、うっとりと匂いを嗅ぐ仕草。さすがにコレは恥ずかしい。



「おい、…何やって、…っ!」
引き剥がそうとするユンホの耳元でポツリポツリ夢見心地につぶやくのが聞こえた。
「あのね。ママが酔って機嫌がいいとしてくれるんだ。スメルキスって言うんだって。」
「…チャンミン?」



ユンホの胸に凭れ、ゆっくりとチャンミンの力が抜けていく。
年齢のわりに身体が小さく体力のないチャンミンはどこでもすぐに寝る子供だった。



「…ずっと傍に置いて、…大切に、可愛がりたいって、…意味だってさ。…ママは嘘ばっかり、…」



そのまま規則的な寝息が聞こえるのに時間はかからず、くったりとしたチャンミンを膝の上で抱く。


スメルキスと言っていた。
ユンホは指先でチョイチョイと鼻の頭を引っかく。
ペットにするようなもんか?


もし次があったら、今度は嫌がらないでおこう。



チャンミンの背中を撫でながら、そんなことを思うユンホだった。














にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト