HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~愛慕~1


































都心の駅前は平日だというのに夜が更けても賑やかだった。
オープンして数年というひときわ目を引くモノトーンのツインタワー。
そこの地下1階にあるアクアリウムバーは、壁にはめ込んだ水槽内を泳ぐ色とりどりの熱帯魚が迎えてくれる人気の店だ。



店内の青みがかったダウンライトがより幻想的な雰囲気を醸し出し、不規則に置かれた観葉植物が規則的な調和を生むインテリアにも趣向を凝らした大人の店だった。










そこの広いカウンター席の端っこで、店長が2人組の男性相手に何やら頭を下げている。
終電まではまだあと数時間ある。
最近マスコミに取りあげられたばかりの店はほぼ満席で、店長はこの客にVIPルームへ移ってもらえるよう頼んでいるのだ。



「俺たちのことは気にするなよ。勝手に飲んでるだけだ。VIPルームだと水槽が1面だろ?ここだと3面水槽になってて好きなんだよ。」
「そんなこと仰らず、…ここでは落ち着いて打ち合わせも出来ないでしょう?それに、オーナーがいらしたのでは従業員が気にしてしまって。」



結局それが言いたかったのであろう年上の店長へ苦笑いを返す男。 
さらさらの黒髪と黒曜石の眸が色白の肌と対比して中性的な印象を与えるのになぜか男らしい、そんな相貌だった。
「しゃあない、行くか。」
音もなくスツールから立ち上がる。
立ち上がれば店長を見おろすほどの長身で、小さな顔のわりにガッシリとした上半身を上質なスーツが被っていた。







「お前が店へ顔だすと店の女の子達が騒いじゃって仕事になんねぇんだってさ。この間もお前、告られてなかった?」
「あー、どっから聞いてきた?あんまり言いふらすなよ。可哀想だからさ。」
「…そう思うならつき合ってやりゃいいのに。特定の彼女なんてずっといないだろ?」



おどけたように肩を竦めるのはジノ。
VIPルームに移り、座り心地のいいソファで深く腰を沈める男はユンホ。



「俺は忙しいの。特定の女を作ってる暇なんてねぇよ。」
「は、どうだか。」



あれから7年の歳月が経ち、ユンホとジノは27歳になっていた。













───最高の立地条件で最高のハコをお前にくれてやる。準備資金は貸しだ。お前の才覚で倍にして返せ。




そう父親に言われ建設中のビルを与えられたのは大学卒業を控えた5年前。
決定しているテナントだといくつか資料を渡され、後は自分でどうにかしろと放り出された。
ビルが完成するまでの半年間は手探り状態でとにかく勉強した。
メンテナンス会社を起こし設備管理から清掃、保安警備を自社で行い、さらに輸入会社を起こしビル内テナントで扱うワインやウィスキーなどを一手に請け負う。



それは屈指の所謂お坊っちゃん学校を中高大学と常に優秀な成績を通し、ヤクザものとは思えない実直さで一目置かれていたユンホの人望あっての所業であった。
ユンホの家業を承知で助言し尽力する友人や投資を申し出る友人もいた。
マスコミに幾度となく紹介されるのも友人のツテだ。



代わりにユンホも友人の為に力を尽くした。
経営が軌道に乗り任せられるまではとユンホは父から盃を貰っていない。
それでも裏社会で絶大な影響力をもつ看板が役に立つ時もあったし、ユンホはそれをうまく利用した。
影にしか解決し得ないことはいくらでもあるのだ。












「そう言えば、チャンミンは元気か?そろそろ夏休みだけど高校には慣れたって?」
「…お前の義弟だろうが。てめえで聞けよ。」
「んなの書類上だけの養子縁組だろ?現にユンホ、お前んちの離れにずっと住んでんじゃん。」



何年経ってもチャンミンの話題はユンホにとって不利なままだ。
この時とばかりニヤニヤするジノも気にくわない。



「一人暮らしもいいけどたまには屋敷にも顔だせよ。エナさんも寂しがってるし、チャンミナだって気にしてる。」
「はっ、エナさんなら分かるけどチャンミンはアレだろ。相変わらずユノユノでお前さえいれば満足だからな。」
「っ、ジノ!」
咎めるようにユンホがジノの名を呼んだ。
そういうことを言うなと、何度言ってもジノは聞きやしない。




「あ、…悪い。そう言えば、あと半年でチャンミンも16歳か。あっという間だな、…ま、組長の予想通りに成長しちゃったからなぁ。」
「………。」














───ユンホ。子供が16歳になったら俺に差し出せ。俺がこの子を貰おう。





7年前のちょうど今頃、母親の借金のカタにその身をヤクザの組長へ委ねたチャンミン。
ジノの家と養子縁組をしても住まいはずっとユンホの住む離れで、使用人や組員に可愛がられすくすくと成長していった。



父の言いつけ通り、ユンホは教育係として誰よりもチャンミンへ心血を注いだつもりだ。
勉強だけではない。
屋敷内の武道場であらゆる武道を教えた。
それほど運動が得意でないチャンミンへ、ただ技術だけの武術ではなく心技体を一体とした修練を目指し、華道茶道にも通じる精神の道を教えてきた。
時に厳しく接するユンホへチャンミンは歯を食いしばってついてきたのだ。
ユンホとチャンミンの絆はジノでさえ敵わないと思うほど固い。
けれどそれを口にすることは誰もが暗黙の了解のようになかった。







結局チャンミンは、ユンホではなく、組長ガンソクのものなのだ。









ユンホは黙ったまま琥珀色のグラスを揺らし、最近すれ違いであまり会えてないチャンミンを思う。






───あっという間ではなかった。





ランドセルが嬉しくって仕方ない小学生のチャンミンを。
ダボダボの制服がそのうちぴったりになっていく中学生のチャンミンを。




日々流れるように過ぎていく年月のなかで少しずつ積み重ねてきた2人だけの歴史。




「ユノ。お前もさ、そろそろ覚悟しとけよ。」



「……わかってる。」







父親の血から逃れられるわけないのに、それでも理由をつけては盃を拒んできたのは、




───ヤクザはね、親が黒と言ったら白も黒になるんだって。




いつかチャンミンが言ったセリフ。
与えられるなら、たった一度のチャンスでいいからと思う。







親が黒と言ってもこれは白だと、…ユンホは言いたかった。











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