HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~渇愛~4









    

























『しのぶれど 色に出にけり わが恋は
   ものや思ふと 人の問ふまで』






───静かだった。


ユンホもチャンミンも一枚の札に視線を落としたままひとことも発しない。


言うまでもなくユンホはその句の意味を知ってるとチャンミンは分かったけれど、それでも敢えて言葉にした。




「───私の恋の気持ちを、誰にも知られないようにじっと包み隠してきましたが、とうとう顔色に出てしまったようです。恋に悩んでいるのですかと、人が尋ねるほどに。」
それだけ言って黙ってしまったチャンミンは、ユンホに何を言わせたいというのか。


「チャンミン、…勿論その句も訳も知ってる。でも、兄さんはなんだって、…」
「ユノ、…」


チャンミンは、もし一方的にでも想いを口にできるとしたら、今夜の今しかないと思った。
聞いてもらえるだけでいい。
本当なら絶対口にしてはいけない想いだけど、前に進むために、どうか我儘を聞いてほしい。





「ユノが、…好きです。」


ユンホを真っ直ぐ見据える眸はやはり清らかで、それが今は強い光を帯びユンホが目をそらすことを許さない。


「…チャンミナ。いつも言ってるだろ?俺だってお前が子供の頃から、…」
「違うよ、ユノ。」


「僕にとってユノは全てなんだ。…それは、子供の頃から一緒。でもね、違う。今は、ユノにとっても全てになりたいって望んでる。」
「……チャンミン、…」


「…兄弟でも友達でもない。ユノが好きだ。キスをするのも体を繋げるのも、本当はユノがいい。」
「お前、…っ、…」
「ごめんユノ、…ごめんなさい。言っちゃ駄目なのに、…今だけ、たった一度だけ。僕の本当の気持ちを聞いてほしかった。」




ユンホは戸惑っていた。
もう既にユンホにとってチャンミンは全てなのだ。
ただそれを口にすることは禁忌だと自分に言い聞かせてきたし、それを破ったら最後、チャンミンの幸せより自分の欲望を優先してしまいそうでこわかった。


父親のことは自分が一番よく知っている。


父は、裏切りを許さない。
今までさんざん伝え聞き、実際に見てきたことだ。



ユンホにとって何よりツラい仕置きはチャンミンを失うことで、ガンソクならそれを笑って実行にうつす残虐さをもっていた。




でも、…それでも、


ゆっくりとユンホの左手が浮きチャンミンを捉える。
どれほど酷い環境にいても失くさない清らかな光。
謙虚でひたむきで、純粋な心。
そして自分への絶対的な信頼感。



ぎゅうっと自らの手を固く握る。
爪が食い込むほど固く。





───できない。


盲目的な信頼を寄せるチャンミンを自分のエゴで奪ってはいけない。
危険を承知で父へ逆らうなど、それが果たしてチャンミンの幸せにつながるのか。




わずかにそらしたユンホの視線は戸惑いに揺れ、それに気づかないチャンミンではなかった。
広く散らばった札を両手でかき集める。
急かされるように集めてまとめ、元通り2つの山に直した。
こんな簡単に僕達の関係もやり直せたらいいのに。
純粋に慕い慕われるだけの関係に。
そう思うチャンミンだけど、それが無理なのも痛いほどわかっていた。
それに実際何度やり直しても結局行き着く想いは同じだということも。




「…チャンミナ。俺だってお前は特別だよ、わかるだろ?7年間、誰よりも近くにいて誰よりも同じ時間を共有した。可愛くて大切なんだ。幸せになってほしい。心からそう思うよ。」
握られたユンホのこぶしが筋を立て、痛そうだとチャンミンは思う。
ユンホのやるせなさまで伝わり、自分の告白を軽くあしらうつもりじゃなくユンホにも苦しみがあるのだと気づいた。



「ん、…ユノ、ありがとう。僕、幸せになれるかな?」
あれほど昂ぶった感情が今は静かに落ち着きを見せていた。
大切だからこそ我を通せないこともある。



「ああ。チャンミンならどこでも大丈夫だ。父さんは束縛をしない。チャンミンは好きな勉強をしてやりたいことをすればいい。ここよりずっと贅沢ができるぞ。」
ぎこちなくユンホは笑い、チャンミンも併せるように笑みを漏らす。
「それで、…ユノはこれからも毎日違う香水の匂いをさせるのかな?」
チャンミンの笑みはすぐに悲しそうなものに変わり、ユンホもまた。
「…もうしないよ。適当に遊ぶことはしない。チャンミンと一緒に居れるうちはずっと一緒にいよう。最後に旅行でもいくか?今までどこにも連れていってやれなかったからな。どこでもチャンミンの好きなところを選べよ。」





──本当は、そのつもりだった。


許されない想いを抱いたまま最後の思い出に旅行をねだるつもりで、その為のバイトだったりしたんだ。
でも、思いがけず告白してしまった今、それはもう意味を成さない。
想いの大きさを比べることはできないけど、多分きっと、ユノも同じような想いを抱いていて、それはユノを苦しめている。




思えばユンホからチャンミンがここを出たあとの話題を出したのははじめてだった。
無意識に避けてきた話題を口にした。
それは離れるための覚悟をしはじめたということで、チャンミンはもう特別な何かなんていらないと思う。
それよりも今まで過ごしてきた日常のひとコマひとコマが大切でかけがえのないものなのだ。






「ユノ。」
チャンミンはふるふると頭を振った。
「…どこへも行かなくていい。毎朝ユノを起こして、僕が作った朝ごはんを一緒に食べたい。ユノが仕事へ行ったら僕は課題をやってからバイトへ行くんだ。」
「チャンミン?」
「それで、いつものようにバイト終わりを待って僕を車まで送って?」
「ああ、もちろん。もう勝手にいなくなるなよ。」


「うん。…だから、早く帰ってきて。」




以前チャンミンへ部活を勧め泣かせてしまったことがあった。
そのときはよく意味を理解できず慌てるだけのユンホだったが、


───今になってやっとわかった。



特別じゃない気づけばそこにある日常が、どれほど特別であったかを。


















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