HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~渇愛~8



































一旦屋敷へ戻ったユンホは離れに寄ることなく何台も置かれた車庫へ足を向けた。
ユンホの車はアウディR8。
史上最強のエンジンでありながら、滑らかな走りを可能にする機能性と派手すぎないデザインが気に入っていた。
比べるものではないが、手のひらに吸いつくような本皮のステアリングやあるべきところに配置された感触のよさにまでこだわったスイッチ類など、それはユンホにぴったりとマッチしてユンホはなぜかチャンミンを思ってしまう。




出会ったときはほんの小さな存在で、それがいつしかユンホにとって無くてはならない存在になった。
離れていても傍らに寄り添うような結びつきを、融けあうような一体感をずっとずっと感じていた。



ユンホは左側のドアを開け、その車に乗り込む。
軟らかすぎず堅くもないシートへ体を滑らせ、一度だけ大きく深呼吸をした。



緊張してるわけではない。
単身で不良の溜まり場へ出向くのに何の恐れもない。


ただ恐いのは自分自身だった。


血が逆流してくるのを抑えるのに必死で。
俺のチャンミンに何かしてみろ、許さない。と、抑えても抑えても湧き上がる激情に自分をコントロールできるのか。
それが恐いのだ。



 

触り心地のいいハンドルを握る。
知らず知らずのうちに力が入る手に額をぶつけ舌打ちをした。



───もう、自分をごまかすのは無理かもしれない。

 

そう思うユンホだった。














一方、ユンホが言ったようにチャンミンはそのクラブ奥のVIPルームに居た。
自分やハイルと同年代の男たちに突然囲まれ腹を殴られ、一瞬朦朧とした隙に車へ押し込められた。
気づけばこんなところへ来てしまった。
バイトがあるのに。
バイトに来ない自分のことをユノはもう報告を受けてるだろうか。
心配させてやしないか。



どう見てもガラの悪い男たちに囲まれ、それでもチャンミンが考えるのはユンホのことだった。



最初に腹を殴られたチャンミンは、ここへ連れられてから矢継ぎ早に投げられた質問をすべて無視して一度だけ顔を殴られていた。
唇の端が切れて血が滲み少し腫れてるのが自分でもわかる。
それでも喋らないチャンミンに男たちは苛立っていたが今はそれどころじゃない雰囲気が流れている。




東神会の、…と、ざわめき浮き足だった男たちの会話が漏れ聞こえる。
どうやらハイルのことを言ってるらしかった。




「なぁ、アイツが東神会の息子だって噂は本当か?」
リーダー格の男がVIPルームの最奥に座らされたチャンミンへ近寄り聞いてくる。
20歳前後と思われる男は、この粗暴で野蛮なチンピラグループの中でひとり浮いてしまうほど一見優男だった。
だからチャンミンも油断したのだ。
道を聞かれ、うまい具合に狭い路地まで誘導された。
目の前を真っ赤な火花が散って、切り裂かれたような痛みに殴られたのだと気づく。
次第に薄れる視界には先程と変わらず優しげな表情が映っていて、いつかユンホに言われた──本当に恐い人間ほど恐くは見えないものなんだ、その言葉をチャンミンは思い出していた。




「…本当だったらどうするんですか?」
「う~ん、…どうしようか。」
おどけたように男は笑った。
その笑顔は爽やかな大学生としか見えないからタチが悪いとチャンミンは思う。
でも無言を通すチャンミンが殴られたとき、この男は酷く怒って殴ったメンバーを逆に殴り倒していた。
むやみにチャンミンを傷つけるつもりはないようで、拘束されることもなく目の前には男が店の人気商品だと持ってきてくれたタンドリーチキンが置かれていた。



「組関係に手を出すのはさすがにヤバイから困るなぁ。さっさと逃げよっかな?」
とても恐がってるようには見えない無邪気に笑う男はクセはあるがチャンミンにはそう悪い人間に思えなかった。
それが甘いのだと、ユノがいたら言われちゃうな。
そう思いながら男を見つめた。



「冗談じゃなくて、たぶん逃げた方がいいですよ。今なら僕さえ黙っていれば大事にならずにすみます。」
「…なに?ずいぶん親切だね。」
男はニヤリと笑いながらチャンミンと隙間を空けず隣に座る。


「あなた達の為じゃない。ユノが、…ユノがハイル兄の喧嘩で組を巻き込むのを心配してたから、…」
「……。」


道を聞いたときも腹を殴ったときも隙だらけだったのに、と男は思う。
喧嘩とは無縁の世界に生きてるような男なのに、なぜか自分達を前に恐がる様子がない。
腕っぷしはまるっきりでやり返してくる素振りもなく、それでいて強く光を放つ眸が怯えることはないのだ。



「ねぇ今日街ですっげぇ仲良さそうに歩いてたけど、ヤクザの息子とどういう知り合いなわけ?それにユノって誰だよ。」
チャンミンはうっかりユノの名前を出してしまったことを悔やんだ。
隣の男があまりに親しげに話すからついチャンミンも言葉が出てしまう。
「俺はハン・シド。高3だけど、まぁ事情があって3度目。で、君は?」
「人のことを殴って誘拐しておいて、よく自己紹介なんてできますね。」
チャンミンが呆れたように言えばアハハと屈託なく笑うから本当に呆れてしまう。



「だってさ、アイツ目障りだもん。少しちょっかいかけたら倍にして返しやがった。でもヤクザものなら話は別だ。関わり合いになるとろくなことがない。…で、君の名前は?」
名前を言うまでしつこく聞かれそうで、小さくため息をつきチャンミンは自分の名前をつぶやく。


「チャンミンかぁ。君、いいね。キレイだ。それも濁った水のなかでも生きていけるキレイさ。…分かる?」
「…まったく。」
「ふぅん。俺、チャンミンのこと気に入ったなぁ。仲間に入んない?」
「嫌です。」
「くくっ、…面白い。」


何にも面白くないとチャンミンは思った。
早く帰してほしい。
ユノが気づくまでに。
心配そうなユノの顔が浮かぶ。
過保護で心配性のユノ。
心配かけたくない。
悲しませたくない。



けじめをつけるつもりで一度だけ告白したはずが、けじめどころか溢れるほどの愛しさにチャンミンはもう溺れてしまいそうだった。
納得したふりして、
覚悟を決めたふりして、
そんなの、──もう無理かもしれない。
そうチャンミンは思っていた。

 



「ところでさ、さっきのユノってもしかして東神会三兄弟のうちのひとり?噂で聞いたことあるんだよね。アイツがやんちゃの末っ子だろ。次男がすげぇヤツで頼りない長男と跡目争いをしてるとか。長男は金儲けはうまいらしいがそのうち次男に喰われるってもっぱらの噂だぜ。次男は義理より欲を取る男なの?」


「っ、そんなこと、…っない!」
「は?」


「ユノを、…っ、ユノを侮辱するなっ!」


突然声を荒げたチャンミンにシドと名乗った男は目を見開いた。
まったく感情を表さなかったチャンミンが顔を真っ赤にして怒っている。
その素直な反応にシドはさらにチャンミンを気に入ってしまった。



「な、本当に東神会とチャンミンはどういう関係なんだ?って、ああもうどっちでもいいや。それより俺の仲間になりなよ。」
シドはチャンミンと変わらない長身をさらに密着させ肩に腕をまわす。
もっとチャンミンの顔を見たいと覗きこむように上半身を折った。



「っ、…ユノを侮辱するヤツの仲間になんて誰が!」
「ユノユノってさ、…なんだよ、ソイツが次男か?そんなすげぇの?ソイツ。」
ここでもユノユノとそればかりのチャンミンがシドは面白くない。
弱いくせに強くて、無表情かと思えば驚くほど素直な反応を見せるチャンミンをシドは本当に気に入ったのだ。








──とその時、見張りまで立てていたVIPルームのドアが開いた。




耳をつんざくような音楽は聴こえるのに変に静かだ。
ああ、ホールで踊り騒ぐ人間が時を止めたように静止してるからだとシドが気づいた時には目の前の仲間が刀を振りおろされたかのように割れていく。



その中心をゆっくりと歩いてくる男。



シドの隣ではチャンミンが立ち上がらんばかりに身を乗り出す。
それをシドは反射的に肩へ回した腕で引き戻した。




「ねぇ、自分で確かめてみたら?」
「…は、…?」



心配かけたくないとチャンミンが思っていたのは嘘じゃない。
それなのに、それとは別に恐ろしいほど跳ねる心臓。









「あれが、──ユノだよ。」















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