HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~渇愛~9




































「あれが、──ユノだよ。」





ユノが来てくれた。
その途端、ピンと張りつめた緊張の糸を今さらのように感じる。
目の前の、静かなのに圧倒的な迫力、触れれば切れそうな鋭さ、周囲の空気さえ制圧する立ち姿にチャンミンは胸が張り裂けそうだった。









青い炎だと、シドは息をのむ。
全身で怒りを顕にしてるのとは違う、凝縮された怒りが沸点を超え静かに底へ沈んでるような。



チャンミンの肩へ置いた手を思わず引っ込める。
一瞬そこへ感じた視線にゾクリと背筋が凍ったのだ。


本来なら仲間内と常連客しかいない店で、突然現れたよそ者が我が物顔でVIPルームまで突っ切るなどあり得ないはず。




「チャンミナ。帰ろう。」
「…っ、ユノ、…」



チャンミンへゆっくりと差し出される手を、スローモーションのようにシドは眺めていた。
静かに立ってるだけで蒸し暑さの残る晩夏にヒンヤリと背筋を冷や汗がつたう。
噂でいい男だとは聞いていた。
それでも長男を喰おうかという男だ、野心に満ちたぎらぎらした相貌を想像していたのに。
ところが目の前の男はどうだ。
切れ長の眸は冷静でいて意志の強さを思わせる漆黒の色をたたえ、整った上品な顔立ちは思慮深さも窺える。
 


そしてチャンミンへ向ける慈愛に満ちた表情。
背中ひとつで周囲の人間を牽制し威圧し、その一方でチャンミンへ差し出した手はひどく優しいのだ。



「あの、あなたが東神会組長の次男ユノさんですか?」
シドは確信をもって目の前の男が次男だと言いきった。
一瞬向けられた視線に鳥肌が立つ。
それ以上は何も言えなかった。



「っ、ユノ、ユノ、…っ、」
「わ、…っ、こらっ、チャンミナ!」


そして飛びこむようにユノと呼ばれた男へ抱きつくチャンミンの後ろ姿をシドは言葉なく見つめた。
先程までチャンミンをいたく気に入り仲間に入れようと思っていたことなど忘れ、絶対的な存在感の男から目が離せない。
心臓が跳ね胸のうちが燃えるように熱い。
シドは初めて憧れというものの存在を肌で感じていた。











普段は血気盛んな若者たちもユンホの迫力を前に為すすべもなく、派手な音楽だけが流れるなか息をのむ男達に見送られユンホとチャンミンは車で帰路についていた。
ユンホは店を出てからずっと無言を通し、その重苦しい雰囲気にチャンミンは何も喋れない。
車に乗る前にユンホは一度だけ電話をしていて、多分相手はジノだとチャンミンは予想していた。
ハイルが心配してるのではと思ったが、おそらくジノから伝わるだろうとも。




チャンミンは謝りたかった。
心配させたこと、迷惑をかけたこと。
それなのに真っ直ぐ前だけを見据えるユンホが恐くて言い出せないまま、車が着いた先は屋敷だった。



なかなか車から降りようとしないチャンミンは、もうまったく間に合わないだろうけど、バイトを無断欠勤してしまったことも気になっていたのだ。



「…大丈夫。今夜は休ませてもらうよう店長には話してある。」
チャンミンの心配が通じたのか、ぶっきらぼうにユンホがつぶやく。
「…あ、あの、ユノ!」
早く謝りたいと呼び掛けたチャンミンを無視するようにユンホはずんずん歩いていく。
チャンミンは小走りにそれを追いかけた。
ユノ、と口の中でつぶやいた名前は聞き遂げられることなく消えていく。




離れの玄関を入り廊下を進みながらチャンミンは泣いてしまいそうだった。
自分の不注意で迷惑をかけた、それが悔しくて申し訳なくて唇を噛みしめる。



「痛っ、…」
唇の端を切っていたことなどすっかり忘れていた。
思わず口元を手で覆ったチャンミンに気づきユンホは立ち止まる。
「どうした?」
数歩戻ってチャンミンの手を外し傷痕を見つけたユンホの悲痛な面持ちにチャンミンの胸はキリリと痛い。
「チャンミン、…それ、気づかなかった。殴られたのか?」
「ん、…でも大したことないよ。」

くそっ、とユンホは舌打ちをして柱へこぶしをぶつける。
ユンホの苛立ちがチャンミンにはわからない。
わからないから自分が悪いのだと自分を責めてしまう。



「…ごめんなさい、…ユノ、迷惑かけて、…」
「っ、ちが、…」



トン、…と、ユンホの頭が垂れ、額がチャンミンの肩に触れた。
震えてるようにチャンミンには見えて、泣きたいのは僕なのにとチャンミンは不思議に思う。
さっきまでの周囲を圧倒するようなオーラは消え、今はただユンホが自分に甘えてるようでチャンミンは嬉しくて無性に肩に乗る頭を撫でたくなった。
そしておそるおそるチャンミンは肩の上に手をかざす。








「…チャンミナ。」


そっと伸ばしたチャンミンの手を何倍もの力で握る手。


「…ユノ?」


数秒か、もしくは数分かもしれない。
ユンホの深い黒がチャンミンだけを見据えた。



「っ、ぅわ、…」


突然足が浮いて焦ったチャンミンの腰を持ち上げるようにユンホは抱く。


「ユノ?なに、…」


ユンホからの返事はない。
代わりに勢いよく部屋まで抱きかかえ、チャンミンは不安定な体勢がこわくて必死でユンホへしがみついた。



「チャンミナ、…!」


笑ってほしいのに、
ツラそうなユンホは見たくないのに、
それなのに思いつめた表情のユンホがチャンミンは悲しい。





「よく聞いて、チャンミン。もし、…もし誰かに聞かれたら、…ユノに無理やり襲われたと、そう言うんだ。」

「……え、…?」



「──いいな、…絶対そうこたえるんだ。」



何を言ってるんだろうと、チャンミンは思う。




そんなの、
僕はユノに与えられるものなら、なんだって──。








ユンホはチャンミンの抱いた腰を寝かすように畳へおろす。
ふと開いたままの障子の向こうに真っ暗な庭が見えて、そのまた向こうに小さな明かりがいくつか見えていた。
チャンミンを畳の上に寝かせたまま、ユンホは起きあがり障子をきっちりと閉める。
その背中を眺めながらチャンミンは尋常じゃないほどの動悸を感じ、そして願った。



──お願い、ユノ。…このまま冷静に戻らないで。















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