HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~渇愛~18



































指定された料理屋は一見して分かりにくい店構えで、如何にも敷居の高そうな暖簾をユンホはくぐった。
店へ入ってすぐ女将に案内された奥の座敷でユンホを待ち構えていたのは、組の若頭でありジノの父親であるシム・ロジンだった。



「坊っちゃん。わざわざお呼び立てして、」
「オジサン、…」


息子のジノと兄弟のように育てられたとはいえ組長の息子だからと礼儀を尽くす律儀な男だが、ユンホにとっては親友の父親で幼い頃から気に掛けてくれた人だから未だにオジサン呼びが直らない。


「そろそろ“ロジン”と呼んでください。どうやら組のバッジを意識し始めたのかと期待してるのですが。」
「…何の話ですか。」
わざととぼけるユンホだが自分がなぜ呼ばれたのか、大体の察しはついていた。
「ビルの抵当を外すよう言ってきたそうですね。最近荒稼ぎしてると噂になってますよ。まだまだ手緩いですがね。そこからもう一歩踏み込んで絞り取れるだけ絞り取るのが極道です。」
ユンホの眉がピクリと動く。
派手に動いたつもりはないのに結局筒抜けなのだ。
「俺はまだ極道じゃないですよ。」
「何を今さら。俺は嬉しいんですよ。天賦の才に恵まれながらどこかノンビリした貴方がやっとやる気になったかとね。」



ロジンの笑みはひどく満足げで、昼間から既に一本空けていた酒をユンホへもすすめる。
「いえ、仕事がありますから…、」
それを丁寧に断ったユンホはロジンの向かい側へ腰をおろし運びこまれた料理を何となく眺めていた。



昨夜急に呼び出しをくらいチャンミンへ何も伝えなかったから、起きたら朝食とも昼食ともとれる食事が用意されていてそれをしっかり食べてきてしまった。
ユンホがチャンミンの作った料理を一切残さないのは昔から変わらず、無理をしているわけじゃない、本当に美味しそうに見えるから不思議なのだ。



「湧き水とにがりだけを使った豆腐料理がここの看板なんですよ。年を取るとこういうのが美味しくなる。ジノには年寄り扱いされるがね。」
「俺も豆腐は好きですよ。特にこの湯葉の刺身、」
ああ、湯葉と言えば、──と、ロジンがユンホの言葉をさえぎる。


「以前組長がチャンミンをここへ連れてきたことがあってね、初めて食べたらしい湯葉を大層気に入ってそれは可愛かったと仰ってたよ。」
「……、」


箸を止めたユンホをロジンはまじまじと見つめた。
何かを探るような視線をユンホは努めて冷静に受け流す。
「そうですか。チャンミンは父との食事会についてあまり話さないので。でもいっとき、豆腐料理ばかり凝って作ってた時期があったからきっとその時ですね。」
さらっと返すユンホへ、ロジンは意味ありげに含み笑いを浮かべた。
「坊っちゃんもそろそろチャンミンじゃなくて女の手料理が食べたいでしょう。女に不自由はしてないと思いますが、よかったらいつでも紹介しますよ。」
 


何が言いたいのだろうとユンホは目の前の男を見据える。
チャンミンとのことはまだバレるわけにいかない、ユンホは時期をみて直接父親へ申し出るつもりだった。
静かな沈黙が流れ箸を使う音だけが聞こえる。
それより、と痺れを切らし話題を変えたのはロジンだった。




「今日坊っちゃんを呼んだのは、冗談じゃなくそろそろビルの経営は人へ任せて組長の下で働かないか打診するためです。」
「…オジサン、また急な話ですね。」
「“ロジン”と呼んでください。」
「……。」


若い頃から父親の右腕として働いてきた男はユンホが赤ん坊の頃から息子同様にユンホを可愛がり成長を見守ってきた。
その男の真剣な表情、何事かとユンホは思う。


「現会長が組長の時代に若頭だった組長指揮のもと、麻薬や売春などの非合法ビジネス一辺倒だった他組織を出し抜き合法的な芸能ビジネスに進出したのがはじまりです。
その後、組長の才覚で合法非合法をひっくるめた多角経営に成功したのは貴方もご存知ですよね。」
「……。」
「高度成長期には不動産や株、美術品投資で巨額の利益を手にし、経済が一転するといち早く不良債権整理事業へ参入しさらなる利益をあげてきました。」



とっくに知ってることを今さらのようにロジンが話しだす。
浩道組系の組でも地元の小さなヤクザだったのが、会長の武勇伝で名を馳せ、組長の頭脳と先見の明で組織を拡大し、直系の組としてかなりの発言力をもつまでになった。


「実はここだけの話ですが、組長は出来るだけ早く一線を退くおつもりのようです。」
「親父が?」
「ヤクザ家業より事業に専念したいのでしょうね。組のトップともなるとそれなりの付き合いで目が回るような忙しさですから。」


ユンホにとって父親の引退話は予想外のことだったが、言われてみればいつか兄デイルの秘書がみょうに神経質だったのはこれと無関係ではないらしいと合点がいった。


「そうですか。でも親父の引退と俺は無関係です。兄が跡目を継いだ後、兄が俺を望んでくれるなら喜んで盃を受け兄のために誠心誠意働くつもりです。」
チャンミンを誰より何より優先すると決めたユンホだったが、もし兄がそれでもと望んでくれるなら兄のために尽くす気持ちはまったく変わっていない。






ふぅ、と大きなため息のあと、ロジンの眸がさらに厳しい光を宿す。


「そういうところが貴方の甘さです。デイル坊っちゃんは金儲けにかけては誰より長けてますが、人の上に立ち指揮する器ではない。何より体が弱い。」
「…兄の広い心こそ人の上に立つ器だと思いますが、」



そう言えば兄から聞いた、“跡目をユンホに”と推す一派、


「貴方の兄上は部屋に閉じこもって機械相手に商売をしてるが、貴方は違う。最高の物件と言えどポンと与えられたビルで会社を興し、あそこまでの業績をあげた。人を使うのもうまく、信頼されそして何より生まれつき備わった人を惹きつける力、カリスマ性があるのはユンホ坊っちゃん、貴方だ。」



それが跡目を継ぐのにいっとう近いと思っていたジノの父親だったとは。









静かな沈黙が2人を襲う。
ロジンは平静を保ちながらゾクゾクした。
これだ、と思う。
この静かな間合いで足元から血の気が引くような迫力、冷めているのに熱い、言葉を発せずとも抗えない力を生まれもっているのだ、チョンユンホという男は。



「オジサン、…これを言うのは最後です。」
「あ、ああ、…」
ユンホとは比べ物にならないほど荒波に揉まれてきたロジンだったが、こんな若造ひとりに圧されている自分が信じられなかった。




「俺が兄を差し置いて跡目を継ぐことは有り得ません。それを重々ご承知のうえ、二度とこのような
事はおっしゃいませんように。」


ユンホは意識してゆっくりと言い、一度だけ深々と頭を下げそのまま店をあとにしたのだった。










料理屋での話はジノへ内緒にしようとユンホは決め、仕事に向かった。
オフィスではすぐに個室へこもり何となくジノへ顔を合わせづらいユンホだったが、暫くしてドアをノックし入ってきたジノはさらに複雑な表情をしている。


「どうした?」
「…ん、」
まさか父親から変なことを吹きこまれてないだろうなと焦るユンホだがジノの口から出たのは意外にもチャンミンの名前だった。


「チャンミンがさ、…もう一度貸してくれって言うんだよね。」
「は?何を?」


言いにくそうにもじもじするジノをユンホは早く言えとたきつける。
チャンミンに関しては相変わらず余裕がないユンホなのだ。




「あのさ、…アレ、前にチャンミンへ見せた男同士のセックス映像の、…DVD、…」


「っ、はああ??」




昼間の緊張感からは想像もできない素っ頓狂な声が思わず出てしまうユンホだった。



















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