HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~最愛~10

































どうやら血は止まったらしい。
切り口の鋭い傷ほど塞がるのも早いと聞く。
痺れるような痛みはいまだ続いていたが、ユンホはそれよりも隠しようのない場所に傷を作ってしまったことを気にしていた。


チャンミンに何か気づかれてしまわないだろうか。
出血の量からして浅い傷ではない。
痕が残ろうとユンホは構わないけれど、もしチャンミンが責任を感じてしまったらユンホはそちらの方が痛くツラいのだ。
これほど緊迫した空気のなか、やはりチャンミンのことを考えてしまうユンホをガンソクは舐めるように見つめていた。



「派手に女遊びをしていると噂に聞いたのはついこの間だと思ったんだがな。」
そう言うガンソクへユンホはこたえず眉を寄せる。
父親に届くような噂になるほど遊んじゃいない。
良くも悪くもユンホの噂は常に尾ひれがついて広がり、そんなのユンホはもう慣れっこだった。
「それが、…迂闊だった。まさか女に不自由ないお前が男のチャンミンへ手を出すとは。」



条件を出すと言いながらガンソクはなかなか核心に触れずじくじくとユンホを責める。
抱いたのか?と聞くからユンホは正直に、「はい。」と答えた。


「そうか。よかったか?」
「…、お答えできません。」
「お前は女だけじゃなく男もイケるということか。」
「誤解しないでください。チャンミンだけです。」


のらりくらりと質問を繰り返すガンソクへさすがにユンホもイラつきを隠せない。
だがこれはガンソクの手なのだ、頭に血がのぼっては冷静に対処することが出来なくなるとユンホは努めて平静を装った。


「俺はな、ユンホ。年甲斐もなく今か今かとチャンミンの誕生日を待ちわびていたんだぞ?この7年間、月に一度会うたびにうるわしく成長していくチャンミンをだ。」
「父さん。」
「それを横取りか?とんだ孝行息子だな。」
吐き捨てるようにガンソクが言い、ユンホはどれほど責められようがガンソクから目を逸らさない。





チャンミンは誰かの物ではない。
意思を持ったひとりの人間で、そのチャンミンを幸せにできるのは自分だけだとユンホは確信していた。
そしてユンホを幸せにするのも。


──絶対に渡さない。


その思いだけでユンホは目の前の巨大な壁へ真っ向から挑み、与えられた運命にさえ足掻くと決めたのだ。




「父さん。条件とは何ですか?」
遂に痺れをきらしたユンホが口にし、ガンソクは満足そうに笑った。



「ユンホ、お前が選べる道は二つだけだ。よく考えろ。」
「……。」






何を言われるのだろうか。
だけど、チャンミンより優先するものはユンホにはない。





「跡目を継げ。」


「……え、」



最初、何を言われたのかと。
思わず聞き返したユンホへガンソクはゆっくりと話しだした。





「お前が跡目を継ぐんだ、ユンホ。デイルも幹部連中もすべて納得させたうえでここまでのぼってこい。」
「…父さん、それは、」
縁を切ってほしいと確かにそう言ったはずなのに、予想を裏切る条件にユンホは戸惑いを隠せない。



「俺がお前を手離すと思ったのか?甘いぞ、ユンホ。これはお前が俺より先にチャンミンへ手をつけたお詫びとして貰っておこう。」
そう言ってガンソクは座卓に置かれた小切手と権利証のうち小切手だけを懐へしまう。
「あのビルはお前の人脈あってのものだ。俺の下で働きはじめても引き続きお前が管理しろ。」
決定事項のように話を進めるガンソクをユンホはなんとか止めようとする。



跡目などほしくない。
甘いと言われようが、ユンホは兄と争いたくなかった。



「ああ、それと今日中にチャンミンを本宅へ移せ。お前との仲を聞いた以上もう離れには置いておけないからな。」
「っ、それは出来ない!!」
ドンとユンホのこぶしが座卓を揺らす。
力の限り握りしめたこぶしは血管が浮き爪痕が赤く滲んでいた。
ガンソクの視線がそれをみとめ、またニヤリと口端をあげる。
「俺はな、ユンホ。金にもならない愛など信じちゃいない。だがチャンミンは俺のものだ。お前がそれでもチャンミンを愛してるというなら、若頭までのしあがってきたときチャンミンをお前へやろう。」



「っ、チャンミンは物じゃない!それを前提とした条件をのむことは、出来ません。」
ユンホの全身が総毛立つような怒りのオーラをたたえ、頬の傷口が開いたのかかさぶたを破り血が滴り落ちた。





その迫力をガンソクは至高の思いで眺める。
やはり生まれ持った資質はコイツが圧倒的だと満面に笑みをたたえた。
恋や愛だのに腑抜けになってる場合ではない、早くここまでのぼってこいと腹の底から高揚感が湧きあがるのを感じていた。



ガンソクはやすやすとチャンミンをくれてやるつもりなどない。
どこか考えの甘い息子が欲する男を自分が抱き潰してやろう、そして敗北感に打ちひしがれ絶望を知ってこそ本物の極道になれるのだと教えるつもりだった。





「それならば、───逃げろ。」


極道の息子として生まれた宿命から逃れることなどできないと教えなければならない。




「チャンミンを連れてどこまでも逃げるがいい。だが俺も容赦はしない。どこに隠れようが必ず見つけだす。そして、…そうだな、お前が一生分の後悔をするような残虐な制裁をチャンミンへ加えよう。お前はチャンミンの墓前へひざまつき、力の足りない自分を悔いながら俺の跡継ぎになるのだ。」
「っ、…父さん、…っ、」
ユンホは怒りでどうにかなりそうだった。
父親の最大の狙いはユンホへ跡目を継がせることで、それならば縁を切りたいなどどう足掻いても無理なのだ。
予想外の流れに思考が狂う。
チャンミンは渡せない、それだけがユンホの望みになっていく。






「どちらがチャンミンにとって幸せか、ゆっくり考えるといい。とにかく、お前に体を拓いたというなら俺も試したい。今夜チャンミンをこちらへ寄越せ。」
 


それだけは、…っ、と、ショートしそうな頭にふとシドの話が浮かぶ。
まだ何も掴んじゃいない。 
けれどこのまま引き下がるわけにはいかない。




「UM芸能の、…」
東神組が多額の資金を投じ経営破綻を救ったという芸能事務所の名前を呟けば、意表をつかれたのかガンソクの顔色がサッと変わったのをユンホは見逃さなかった。
「ユンホ、…お前、」
「いいんですか?貴方がチャンミンへ手を出すというなら、俺も、…、」
ハッタリだった。
ユンホは東神組とUM芸能の裏の関係だけで、父親が固執する何がそこにあるのか知り得ていない。
ただ何かがあると直感が言っていた。



また、静かな睨み合いが続く。



「お前、親を脅すつもりか?」
「……チャンミンを守るためなら。」
  

「お前は鬼か。」
「チャンミンの為なら鬼にもなります。」




ゴクリとガンソクの喉が鳴る。
ユンホがどこまで調べたのか予想もつかない。
ただ言えるのは、それがガンソクにとって唯一の弱みだということ。





互いに一歩も引かず、どちらも言葉を発しない。
その緊迫した空気を断ち切ったのはガンソクだった。
この後大切な仕事を控えていて時間がないのだ。





「わかった。暫くお前に考える時間をやろう。お前が諦めてチャンミンを差し出してくるまで待とうじゃないか。ただ、好きにはさせん。見張りを立てるからな。」
「…見張り?」


「今は所用で留守しているが、今夜からエナを離れで生活させお前らを見張り逐一報告させよう。お前とチャンミンの母親代わりのエナだ。裏切れないだろ?」



ガンソクはまたニヤリと不敵に笑い、立ち上がると同時に踵を返しさっさと部屋を出ていった。
残されたユンホは大きくため息をつく。
身体中が痛いほどで、どれほど力が入っていたのか。
やるべきこと考えることが多すぎて目眩がしそうだ。


それでも。
闇雲に焦っていたのを思えば、道筋が見えた。

 
父親の思い通りにはさせない、絶対に。




ユンホは取り出したハンカチで頬を拭う。
赤く染まったそれをポケットへ戻し、残された権利証を手に取った。



まだチャンミンが帰ってくるには早い。
今のうちに離れに戻り、ハンカチを処分し傷をごまかさなければとユンホも立ち上がった。







帰りがけにふと屋敷前の冬桜が視界に映る。
華やかに咲き誇り一気に散るソメイヨシノもいいが、冷たい北風により可憐に咲く冬桜もいい。


そしてそれを遠くから眺めるチャンミンを思い浮かべ、疲れきった体にじんわりぬくもりを感じるユンホだった。












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