HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~最愛~11


































まだ陽が高いうちに帰るのはどれ程ぶりだろう。
ユンホは昼前に寄っただけの会社へ電話を掛け、ジノへ体調が優れないと伝え、急ぎの仕事がないことを確認する。 
ジノへいずれ話さなければならないが、それは今じゃなくていい。
ユンホの足どりは重く、じんじんと頬の傷口が痛んだ。



ガンソクとの交渉はユンホにとって決裂を意味し、このままではチャンミンさえ奪われそうなのだ。
ただ、良いこともあった。
ガンソクの要求の優先事項が分かったことで、先ずユンホがガンソクの下で働き、跡目を継ぐこと。
チャンミンはその後だと言いたげな様子で、物のように授受しようというのだ、そこまで執着がないように思えた。



そしてガンソクの、あの動揺。
UM芸能に何があるというのか。
早急に調べなければとユンホは一件電話を掛け、そして思う。
自分の優先順位は何なのか。
跡目を継ぐことはすなわち兄に背くことなのだ。
あの優しい兄に、いつか肩を並べ助けていきたいと願っていた兄に。
そして堅気でまっとうな弁護士にしてやりたかったチャンミンを、いずれ手離すことになるのではという不安。






眉をしかめ難しい顔をしたユンホの頬を冷たい北風が吹き抜ける。
ぴりりと傷にしみて更に眉をしかめたユンホの視界に離れが見えてきた。
他の離れに比べ庭が色とりどりなのはチャンミンによるもので、今は寒椿の薄紅が冬の景色に色を添えていた。
厳しい寒さのなか日影であろうと鮮やかな花を咲かせる強く美しい花。
こうありたいとユンホは思う。
どんな状況であっても、強く、…そして考えるまでもなくユンホの最優先されるべきはチャンミンなのだ。





玄関先でユンホはふと立ち止まる。
中に人の気配を感じると、引き戸へ伸ばした手を止めた瞬間勢いよく戸が開けられた。
ああ、とユンホは内心舌打ちでもしたい気分になる。
「っ、…ユノ!」
予定より随分早く帰ってきたチャンミンの顔が驚きの表情を真っ青に変えた。
「早いな、チャンミナ。心配するな、これはちょっと、…」
チャンミンの視線が一点を凝視し言葉なく青ざめていて、頬を刃物で切られた傷などどう言い訳すべきかユンホも言い淀んでしまう。
ドサッと落とされた鞄へ視線を向けたユンホの頬をチャンミンの震える指が恐る恐る触れた。


「…っ、ユノ、これ、…どうし、…」
震えて言葉にならないチャンミンの頬を大丈夫だと落ち着かせるようにユンホも撫でた。
鏡を見てないから傷口の様子がわからない。
どうしてもっと慎重にならなかったのか、一番見せたくない人へ不用意に見せてしまった自分をユンホは責めた。 
「チャンミナ、落ち着け。見た目ほど深い傷じゃない、消毒してくれるか?とにかく中へ入ろう。」
「だって、…っ、血が、病院、…っ」
ユンホは震える肩を抱き玄関へいざない、頭のなかでどこまでチャンミンへ話すべきかをとっさに考える。


と、その時、また人の気配を感じ、振り向けばジノの父親で若頭シム・ロジンが数人の手下を引き連れ歩いてくるところだった。



「…義父さま。」
呟いたのはチャンミンで、書類上だけの養子縁組とはいえ、そういえば義理の親子だったとユンホですら思うほど親子らしさが微塵もない2人だった。
「ユンホさん。組長から貴方を病院へお連れするよう言いつけられてます。車の用意が出来ましたのでどうぞこちらへ。」
先日ユンホが会ったときよりさらに畏まった態度のロジンが来た道を戻るよう促すが、ユンホは病院になど行くつもりはない。


「オジサン、…大丈夫です。大した傷じゃない。」
「“ロジン”です、ユンホさん。」


そこでふとユンホは気づく。
今まで“ユンホ坊っちゃん”と呼んでいたのが、“ユンホさん”になっている。
ガンソクから少しは聞いてるであろうロジンが余計なことを言う前に追い返したい。


「家で処置できる程度の怪我です。ご心配なさらず。わざわざありがとうございました。」
ユンホは軽く会釈をしチャンミンの手を引くが、そのまま引き下がるロジンではない。


「組長から簡単にですが伺いました。貴方がやっと組長の盃を受ける気になったことと病院へお連れすることになった経緯。それに、…エナがこちらでユンホさんの見張り役として移り住むということ、」


背中でチャンミンを隠すように立つユンホだが、それは気休めにもならずロジンの話はチャンミンに丸聞こえだろう。
背後からチャンミンの緊張が伝わる。
チャンミンの母親の時もそうだった。
どうしてチャンミンにとって重要なことを、自分ではなく他人の口から知らされてしまうのか。





…ユノ、と消え入りそうな声がユンホの耳にだけ届く。
今すぐ振り向いて思いきり抱きしめたい。
そして7年前とは違うと、今度は絶対にこの手を離さないと言い聞かせたい。


だがロジンや他の組員を前に軽率な行動は慎まなければならない。
ジノの父親であり幼い頃から可愛がってくれた人であっても、今は完全に組長側の人間なのだ。







「貴方のキレイな顔に傷が残るのは私も忍びないんですよ。顔の傷はヤクザの勲章という時代はとうに過ぎましたからね。」
「……わかった、」


テコでも動かないロジンに、病院へ行きさえすれば解放されるとユンホは折れることにした。
早くチャンミンと2人きりになりたいのだ。
予定では夜にはエナが事情を知ってか知らずか来るだろうから。



ユンホはチャンミンへ向き直り、置いてくのは心配だけどチャンミンにも予定があるだろうと、「帰ったら説明するからな。」と優しく言った。
チャンミンは返事をしない。
代わりに真っ直ぐ見つめてくる眸が気丈に見えて不安に怯えてるようにも見えた。


やはり置いていけない。


「一緒に行くか?」
「僕も一緒に。」


被ったセリフに目を合わせ、ユンホは頷く。
この傷の説明を出来ないまま中途半端にロジンの話を聞いて、たぶん一番不安なのはチャンミンだろう。
だがそんなことロジンにはどうでもいいようだった。


「ユンホさん。チャンミンを連れていく必要はありません。」
「いや、連れていく。」
「駄目です。」



「っ、ロジン!」



思わず口をついたユンホのキツい口調に周りが一瞬息をのむ。
初めて呼び捨てにした。
だがそれは無礼というより、近い将来の上下関係を示唆するような、何の違和感もない威厳があった。





しばらくの沈黙を破って、わかりました、でもその前に、…とロジンが数歩前に出る。
ユンホより遥かに修羅場をくぐってきた男だ、俊敏な動きにユンホが一歩出遅れ──パンッと乾いた音が鳴った。
さらに戻ってきた平手を今度はユンホがつかまえる。
「いきなり何をっ、」
「ユンホさん、離してください!」


ぶたれた頬を緩く押さえ、チャンミンは恐がるでもなく受け入れるように静かにロジンを見つめていた。
ユンホが止めなければもう片方の頬も差し出したであろう覚悟を秘めた眸で。





「…家族と言うには薄い関係ですが、書類上とはいえチャンミンは義理の息子です。それが、組長を裏切って組長の息子をたぶらかした。その罪の重さをわかっていない。」
「っ、なにを、…たぶらかしたのは、俺だ。俺がすべてを承知でチャンミンを求めた。」



ユンホの腕を剥がそうとするロジンを、チャンミンは逃げもせず分かっているといった様子でただ見つめる。
そして「ごめんなさい。」とだけ小さいけどはっきりとした口調で言い、深々と頭を下げた。
「いいわけは、…しません。僕の罪がユノへこれほどの傷を作り、ユノを窮地に追い込むのであれば。義父さま、どうぞ僕を好きにしてください。」



何を言い出すのかとユンホは焦る、焦ってチャンミンの肩を引き寄せ思いきり抱きしめた。
そうでもしないとこのまま消えてしまいそうだと思ったのだ。
「っ、チャンミナ、…馬鹿なことを言うな。それは俺が許さない。」
「ユノ、…僕は、」
小さく震えながらそれでもユンホの腕から逃れようともがく身体をさらに強くユンホは抱きすくめる。




「ロジン。」
胸に収めたチャンミンの肩先からユンホは真っ直ぐロジンを見つめ射るような視線を向ける。
そして低い声で、強い意思をもった唸るような声で、ゆっくりと言った。




「言われたから仕方なくじゃない。俺はこの世界で組の頂点まで登りつめてやる。その時になって後悔したくないのなら、ロジン、…俺達に口出しはするな。」








祖父の絶対的カリスマ性と、
父の研ぎ澄まされた静かな迫力。
そのすべてを纏って立つユンホを、眩しそうに目を細めロジンは眺めた。














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