HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~最愛~18


































「あのさ、親父に言われたからってだけじゃないけど、…ちょっと忠告、いいか?」


車の後部座席で軽く目を閉じていたユンホへジノが話しかける。
ユンホはこのところ新しく子飼いになった組の統率に忙しく、ほとんど寝に帰るだけの毎日を送っていた。
カルタ取りをした日から1週間ほどチャンミンとはまともに会っていない。


「…なに?」
だからなのか少し不機嫌なユンホへ忠告するのを躊躇うジノだが致し方ない。
「デイルさんの秘書がユノの周りを探ってるらしい。弱味を見せないようにってさ。」


切れ長の眸が重そうに瞼をあげジロリと睨まれたらジノでさえビクつき躊躇してしまう。
実際最近のユンホは雰囲気が変わったとジノは思う。
時折見せる表情は切羽詰まって鬼気迫るものがあり、それが来月むかえるチャンミンの誕生日と深く関わっていることをジノは知っている。
だから心配なのだ、無茶をしすぎて周囲が見えず、ちょっとした失敗が張りつめた糸を切ってしまったとき、…ユンホはどうなるのだろう。



「弱味なんかない。」
「嘘つけ、」
「…ないさ。」



だが今のところはすべて順調だった。
ビルの管理はうまく信頼できる社員へ引き継ぎ、決定をくだすのみで円滑に経営はまわっている。
盃をもらってすぐ小規模と言えど組を潰せと組長から命じられたときはジノも肝を冷やしたが、その時のユンホはさすがだった。
多勢を嫌がりジノと2人で事務所へ乗り込み、話も聞かず襲ってきた下っ端を次々と床へ沈めるユンホへジノは震えた。


若い頃売られた喧嘩を仕方なく買うことはあったが、自ら乗り込んでの圧倒的なユンホの強さに震えたのだ。


話の分かるそこの組長はまだ若く、ユンホと2人きりでどんな会話が為されたのかはジノも知り得ない。
ただジノが部屋に呼ばれたとき、若い組長はユンホから子の盃を受けると言って笑ったのだ。









「あと、…毎月の組長との食事会。来週だそうだ。」
「っ、…!」



誰のと言わなくてもお互い通じる話で、一気にユンホの顔色が変わる。


「今回は行かせない。行かせられるわけないだろ?何をされるか分かったもんじゃない、っ!」
「無理だユノ、…何年もずっと続けてきた食事会をお前が止める権利はない。」
「……っっ、」


こぶしを固く握り奥歯を噛みしめるユンホの弱味など一目瞭然じゃないかとジノは言いたいがとても口にできる雰囲気じゃない。
ユンホが何と言おうが、ガンソクが何をしようが、チャンミンの誕生日前最後の食事会が中止になることはないのだ。











2人の沈黙を破ったのはユンホの携帯だった。
一瞬顔をしかめたユンホが液晶画面を確認し、すぐにタップして「エナさん?」と言う。
ジノはうんうんと頷くだけのユンホの様子を見ていた。
あまりいい話ではなさそうで時々“サン太”と以前も聞いた名前が出てくる。




「悪い、…この後はジノへ頼めないか?俺をここで降ろしてほしい。」
神妙な顔つきで言ってくるユンホへ、ジノはサン太とは何者なんだと思う。
今は何よりも仕事優先のユンホをここまで動かすとは。
「ああ、別にこの後は大した仕事じゃないし俺ひとりで大丈夫だろう。けどさ、サン太って、」
ジノがそこまで言うが早いか、──悪い!と言いながら信号待ちの車からユンホは飛びだし、ジノが気づいた時には反対車線のタクシーをつかまえていた。



「おいおい、…何だよ、サン太ってさ、…」
そして呆気に取られながらひとりごちるジノを尻目に、ユンホを乗せたタクシーは賑やかな夜の繁華街から走り去ったのだった。













玄関を入ったユンホを出迎えたのはエナだけで、いつもの愛しい姿が見あたらない。


「おかえりなさい。まさかこんなに早く帰ってきてくれるとは思いませんでしたよ。お仕事の邪魔しちゃいましたね。」
恐縮そうに言うエナへ、いや、いいよ。とユンホは笑顔を見せ、チャンミナは?と聞いた。
「それが、…学校から帰ってから夕食も摂らずずっと庭で、…」
困ったように言うエナの肩をぽんと叩き、ユンホも庭へ向かう。





縁側から覗けばチャンミンのしゃがみこみ丸めた背中が見える。
池のほとりでサン太の入った水槽を傍らにしょぼんと首を垂れているのがユンホからでもわかった。


「チャンミナ。」


ゆっくりと近づき声を掛ければビクンっと跳ねるように首をあげ、ユノ?と震える声にユンホは足を速める。
エナからサン太の様子が急変し、もう駄目そうだと聞いていた。
チャンミンが膝で囲むようにした水槽には水面で横に浮きパクパクと動く口だけがまだ生きてるのだと分かるサン太がいて、もう余命が少ないのは誰の目から見ても明らかだった。




「少し元気になってたのに、…」
「ああ、」
「ひとりで死んじゃうのは可哀想だから、…最後に池へ戻してあげていい?」


水槽を持ち上げたチャンミンの腕をサッとユンホはつかみ首を振った。


「駄目だよ、チャンミナ。サン太の病気が他の鯉へうつってしまう。」
「…っ、でも、…!」


チャンミンはぽろぽろと大粒の涙を溢しながら、それでも持ち上げた水槽を置こうとしない。
ユンホだってチャンミンの気持ちは分かる、分かるけどサン太を池に放すのを許すことはできなかった。
涙が次から次へと溢れでて、頬をつたって水槽に落ちる。
それをユンホは胸が締めつけられるような思いで見つめていた。



「でも、…っ、友達だったんだ、…」
「ああ、…そうだな。」
「ずっと、…ひとりぼっちで寂しいとき、慰めてくれた、…っ、」
「一番人懐っこいヤツだったな。」


唇を噛んで嗚咽を堪えるチャンミンの頭をユンホは泣いてもいいんだと言うように優しく撫でる。
何度も往復した手がチャンミンの頬へ下り、親指の腹で丁寧に涙を拭った。



「チャンミナ。サン太とはここでお別れだ。水槽を置くんだ。」
「…でも、…」
チャンミンだってユンホが正しいと思う。
けど永年住み慣れた場所じゃなく、ひとりぼっち水槽で死なせるのが可哀想なのだ。
「毎日チャンミンに可愛がられて、今もこうして傍で悲しんでくれてる。サン太は幸せものだろ?」


「…ん、」


チャンミンはそっと水槽を置いて、止まりかけた涙をまたぽろぽろと流した。
悲しくて悲しくて堪らない。
小さな体をユンホの腕に抱き抱えられ、きらきら光る水面の眩しさに目を細め見た“キレイ”。
あれは丹頂、と柔らかな声で教えられた緋色の形が他よりいびつなサン太は、ユンホが大学へ行ってる間チャンミンのいい遊び相手だった。



「でも、……寂しい、…」



鯉は賢い魚だと聞いたけど、チャンミンは心もあると思う。
ひとりぼっちで寂しいとき、ユンホへの決して口に出来ない想いに悩んだとき、いつも尾っぽを揺らし慰めてくれたのはサン太だった。



「俺がいる。チャンミナ、…俺がいるから、…」
「ユノ、…っ、あ、」



水槽の縁に置いた手をユンホはぐっと引き寄せ、チャンミンを腕のなかに閉じこめる。
ずっと庭に居たというチャンミンの身体は冷えきり、痺れて感覚のない足は簡単にユンホのもとに崩れてきた。
近くにエナがいるはずだけど、これは兄としての抱擁だとユンホは自分に言い訳をしてさらに力強く抱きしめる。






ユンホの胸に顔をうずめ、与えられた温もりに安堵の表情を浮かべむせび泣くチャンミンと、すべてを包み込むように抱きしめるユンホ。
エナはそんな2人を眺めながら、組長へどう報告すればいいのだろうと迷っていた。

















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