HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~最愛~22


































「チャンミンさんですね。」
「え?」


庭で枯れ葉を掃いていたチャンミンは寒椿の生け垣越しに掛けられた声を一瞬デイルかと勘違いした。
ちょうどデイルが散歩と言っては顔をだす時間だったし、そこに立っていた男性が見た目はまったく違うのに雰囲気がどこかデイルと似ていたのだ。
それも丁寧に自己紹介され合点がいく。







「兄さまの秘書の方なんですね。どおりで似てると思いました。」
「デイルさんと私は、…似てますか?」
「似てると言うか、匂いが一緒です。」
「匂い?」
「はい。仲が良いんですね。」
ニッコリと笑うチャンミンからは警戒心の欠片も感じず、デイルの秘書セヨンは毒気を抜かれる思いだった。
写真でしか見たことのない高校生は実際会ってみれば思っていたより幼い。
確かに整った容姿ではあるが、男色の組長どころか息子のユンホまで夢中だとは到底思えない。


セヨンはコホンと咳払いをして再びチャンミンを見たが、やはりなぜ自分がここへ来たのか疑いもしない純朴な様子で、この子を口説くのは容易そうだとほくそ笑む。
「実はデイルさんの体調が思わしくなく、どうしても散歩してあなたと喋りたいと言うのを無理やり止めたんですよ。もしお時間があれば今から母屋の方へ遊びに来てくださらないかとお願いにあがりました。」
セヨンが畏まって言うとチャンミンは心配そうに眉を寄せ頷いた。
「もちろんです。もしお邪魔じゃなければ連れていってください。」
「ありがとうございます。同じ敷地内です、宜しければこのままご足労願えますか。」



淡々と進む話にセヨンはにっこりと笑う。
どうやらこの高校生はかなりのお人好しらしい。
まだ幼い頃借金のかたに組長へその身を売り、16歳の誕生日までは忙しい組長の代わりに息子ユンホが教育係を担っているというのは周知の事実だ。
そのユンホがここへきて急に若頭補佐というデイルと同じ地位に座り、シマの境界線で暴れていた組を吸収し一気に売り出し中なのだ。



まさかこの高校生が愛人として本宅へ入るのとユンホの想定外の動きが深く関わっているとは思いもよらぬセヨンだったが、ユンホの周囲を調べ弱味を握ろうと躍起になっているところをデイルから知らされた。
デイルがこの高校生を気に入ってることはその口ぶりからセヨンも気づいていて、だからこそチャンミンと会って話さなければと思ったのだ。



このままユンホに増長されては困る。
何とかしてユンホを失脚させねばとセヨンは目論んでいた。












入り組んだ長い長い廊下を進み、チャンミンは初めてデイルの部屋へ招かれる。
外観は純和風の広大な平屋建てだが屋敷内は和洋折衷住宅になっていて、デイルの部屋は洋室の続き間だった。
和風のドアが品よく襖と馴染み不思議と調和のとれた造りになっているとチャンミンはキョロキョロしてしまう。



こちらです。とセヨンへ促され足を踏み入れた部屋で、デイルはパソコンと向き合っていて寝入ってる様子はない。
「兄さま!」
デイルの元気な姿を認め安心したのか花のように微笑むチャンミンを不思議そうに眺めていたのはセヨンだ。
仕事がら人間観察が癖になっているセヨンだが、チャンミンの雰囲気が先程までと違う、愛想のいい優等生がふわりと柔らかい空気を纏いドキッとするほど愛らしいのだ。


「チャンミン、よく来てくれた。ふふ、セヨンが驚いてるぞ。セヨン、チャンミンはひどく人見知りで警戒心が強いんだよ。気づかなかったろ?」
「あ、…、はい。」
愉しそうに笑ったデイルはパソコンを閉じてチャンミンをソファーへ座らせる。
「ここへ来た頃はユンホ以外誰とも喋らなかったらしい。今でもユンホといるときのチャンミンは別人のようだがな。」
「っ、兄さま!///」
アハハと笑いながらデイルはチャンミンと向かい合うように一人掛けのソファーへ体を沈めセヨンを呼び寄せた。
「でもお前への態度と俺とで違うのなら、俺もチャンミンにとって少しは親しい部類に入ってるのかな?」
嬉しそうに笑顔を向けるデイルとそれを照れくさそうに返すチャンミンをセヨンは見比べる。
チャンミンが可愛くて仕方がないといったデイルの笑顔はセヨンが今まで見てきたなかでも特別優しげで柔らかい笑顔だった。







「早速ですが、今日は大切な話があって来ていただきました。」
唐突に始めたセヨンの話をチャンミンは姿勢よくソファーに座って聞く。
どうやらユンホを狙って探っている組があるらしいと、それはチャンミンにとって不安な内容からはじまった。


「鳳昌組をご存知ですか?うちとは系列が違い特に敵対はしてませんが親交もなく、規模的にはうちとほぼ互角の組です。」
いきなり組の名前を言われてもチャンミンはヤクザに詳しくない、いいえと首を振るしかなかった。
セヨンの話によると鳳昌組がユンホに恨みを持っているという噂が流れてるらしい。
まだ組に入ったばかりのユンホが恨みを買うのはおかしいと調べはじめたセヨンが行き当たったのが数ヵ月前の土地の売買だった。
ユンホが交渉を引き受けた企業と政治家の画策をセヨンは知らない。
だが契約直前にユンホによって売買を白紙にされた企業と鳳昌組には深い繋がりがあり、セヨンはここに何かあると睨んでいた。
鳳昌組の組長は“脅しの蛇”と恐れられ、実際蛇のように執念深い男らしい。
この男に睨まれたらさすがにユンホが不利だとセヨンは踏んでいた。




「チャンミンさん。組員であなたとユンホさんの関係を知るのは恐らく若頭とデイルさん、あと私だけです。そしてそれ以上広がることなく組長によってあなたとユンホさんは引き裂かれるでしょう。」
「っ、…な、」
「それにユンホさんには強引に動きすぎたツケが回ってきてる。」


チャンミンの顔色がみるみる悪くなっていく。
どうやらユンホは仕事の話をチャンミンにはまったく話してないようだとセヨンは感じた。
これだけ歳が離れているのだ、素直で従順なチャンミンを猫可愛がりしているといったところか。



「元々ユンホさんはヤクザ稼業へ消極的でした。でもチャンミンさんを組長へ渡したくない。…それが修羅と言われるユンホさんの今の原動力ということで宜しいですね。」
セヨンは手に持ったファイルから書類を抜き取りテーブルへ広げる。
「旅券はすぐに手配できます。…パスポートと新しい戸籍、金はユンホさんから預かってまして順調に運用されてるものがあります。」


意味が分からないといった様子のチャンミンへセヨンは身をのりだし低い声で囁く。 
「このまま組長の手にかかる前に、二人で別人になり海外へ逃げるのです。すべての手配を私が致します。これはあなた達だけでなく私やデイルさんにもリスクを伴うがそれだけのメリットがある。」



予想もしない申し出にチャンミンは驚きチラリと目の前のデイルを見るが、デイルはいつもと変わらない穏やかな表情で何を考えているのか読めない。


「…兄さま?」


一瞬デイルと目線が合うが、やはりデイルは何も言わない。
スッとチャンミンが立ち上がる。
先程までの顔色の悪さに赤みが差し、凛とした立ち姿にセヨンは暫し見惚れた。



「兄さま、…ふざけないでください。」
「チャンミンさん。ふざけてなどいない、万全の準備はもう整ってます。あとはあなたがユンホさんを説得するだけになってるんです。」
チャンミンの普段は愛らしいくりっとした眸が強い光を持ってセヨンを見据え、今までとまったく違う顔にセヨンは戸惑ってしまう。
「貴方には話してません。セヨンさんの上司で親はデイル兄さまでしょう?この話を聞いたことはユノへは内緒にします。言えないよ、兄さま。ユノが尊敬し誰よりも慕っている兄さまがユノへ逃げろだなんて、…っ、」



震える語尾をぐっと飲み込みチャンミンは唇を噛んだ。
初めて来て以来たびたび訪れるシドから、シドの友人達がどれ程ユンホに世話になりユンホを崇拝しているかを聞いていた。
シドだってそうだ。
チャンミンはユンホさえいればいい。
けれどユンホはそうじゃないのだ。
ユンホがどう思っているかに関わらず、ユンホを必要としている人の多さをチャンミンは理解していたし、それを奪うつもりもない。
別人になってまでユンホを独り占めすることはユンホを失うことだとチャンミンは思ったのだ。




くくっ、…と笑ったのはデイルだった。
真剣なチャンミンをからかうように肩を小刻みに揺らし、うつ向いて表情が見えないのがチャンミンの感情をさらに逆撫でする。


「兄さまっ!」
ぎゅっとこぶしを握り顔を強張らせるチャンミンへ向けられたデイルの表情はとても穏やかで、


「やっぱり可愛いなぁ、…チャンミン。」



なぜか、嬉しそうでもあった。
















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