HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~最愛~25


































「…ユノが、あまり無茶をしませんように、…」


そっと胸にあてたしおりをチャンミンはゆっくりとユンホへ差し出した。
ほんの少し濡れた睫毛がきらきらと照明に反射して、嬉しそうな微笑みもお返しとばかり要求してくる手のひらも愛しくて堪らないとユンホは思う。



「お前も、…無理するな。嫌なら今からだって俺が話をつけてやるぞ?」
チャンミンへ自分のしおりを渡しながら思わずユンホは言ってしまった。
困ったように笑うチャンミン。
そう、嫌なのはチャンミンじゃなく自分だとユンホは分かっている。
それなのにチャンミンを困らせてしまう自分にユンホは情けなくなる。



わずかに流れた微妙な空気に割って入ったのはハイルだった。
「なんだよ、チャンミナ、…結局ユノ兄へやるんじゃん。いっつもユノ兄を最優先でさ、ずりぃよ!」
真剣に拗ねるハイルを横目で見ながらシドは呆れるばかりだ。
コイツ、正真正銘のアホじゃね?とまで思っていた。
望む望まないは別として、勝手に作られるこの2人だけの世界に気づかないのだろうか。
お前の入る余地なんてねぇよ、と思うシドだったが、それを口にして絡まれるのも面倒だった。
ユンホも聞こえてるはずなのにハイルには耳も貸さない。
仕方なく口を開いたのはチャンミンだった。



「ん、…ごめん、ハイル兄。あの、僕が大切にしてる本でよかったら、…いる?」
「っ、いらねぇよ!チャンミナの本なんか小難しくて読めるかよ。」
「くっ、…」
思わず吹き出したユンホをハイルはめいいっぱい睨むがユンホはまったく動じない。
「お前さ、立派なヤクザになるのが夢なんだろう?今どきのヤクザは頭も必要だぞ?」
「っ、…だから最近ちゃんと勉強してんじゃん。」
勉強のことを言われるとハイルには大いに不利だ。
どんどん尻窄みになる言葉にチャンミンは心配そうな視線を向け、ユンホは苦笑いでシドは呆れ果てていた。



「あのね、ハイル兄。学校や住む場所を与えてくれたのは旦那さまで、僕の身の回りの物はすべてユノが買ってくれたものなんだ。純粋に僕の物なんてない。だから、僕が弁護士になれたら初めての収入でハイル兄へプレゼントするよ。」
「ぅわ、マジで?///」
一気に機嫌が直り浮かれた調子のハイルへエナだって黙っちゃいない。
「あら、なぁんにも出来ないチビッ子の世話を焼いたのは誰かしら?」
そんなふうにからかうからチャンミンは慌ててエナさんもね、と言い足した。
ニコニコ顔のチャンミンの前で俺が一番だ、私が一番でしょと言い合うハイルとエナを遠巻きに眺め、そんなことどうでもいいと開いた口が塞がらないシドだったが、シドにとってどうでもよくないのは隣から発するピリピリした空気だった。




「…ユノさん?」
おそるおそるシドが声を掛ければ、──ん?と普通に返してくるようで目がまるで笑ってない。
「チャ、チャンミンって弁護士を目指してるんですね。やっぱユノさんの為ですかねぇ。」
へらへらと愛想を言ってみるが、関係ない。と一蹴されてしまった。
本当にチャンミンのことになるとユンホが別人のようでシドは驚いてしまう。
待ち合わせに使うアクアリウムバーで、ハイエナのように寄ってくる美女達へ愛想よく接しながらまるで無関心を隠さないユンホはどこへ行ったのか。
普段こちらを見慣れてるシドとしては、燃え盛る独占欲を必死で抑え、でもまるで抑えられていないユンホがめずらしいのだ。




だから、つい嬉しくなってしまう。
思わずプッと吹き出しユンホに睨まれてしまった。
「……なんだよ?」
「くっ、…い~え。何でもないっす。」
「じゃあどうして笑う?」
「笑ってません。」
「…その顔で?」
何でもないように装っているが眉間のシワが物語る機嫌の悪さをユンホ本人が気づいてないのだからシドは可笑しくて仕方がない。
いまだにチャンミンの初任給は誰のプレゼントへ使われるかを言い争うエナとハイルをチラチラ気にしながら、ユンホの視線は何度もチャンミンへ向けられるが肝心のチャンミンがユンホを見ない。



膝に置いたユンホの人指し指が小刻みにリズムを打っていて、それもきっと無意識なのだろうとシドは思った。
これほど分かりやすくイライラする人はそういない。
「っ、チャンミン。」
シドがチャンミンを呼べば、会話がきれてほっとしたようにチャンミンが笑う。
「シドさんも?貰う前から僕のお給料がなくなっちゃいますって。」
冗談っぽく言いながらシドがふざけて拗ねるふりをするのを見て、チャンミンはチラッとユンホへ視線を投げた。



「っもう、…じゃあユノがささやかなプレゼントで我慢してくれるならね。」


「…え?」


思わず声を出したユンホと目を合わせチャンミンもきょとんとする。


「…俺にもくれるの?チャンミナ。」


さっきまでリズムを刻んだ指は止まっていて、予想外だと言わんばかりのユンホへチャンミンは不思議そうに言うのだ。


「え?ユノにあげなくて誰にあげるの?」




一瞬しんとした沈黙のあと、ぷぷっと堪えたシドの笑いはすぐに止まらなくなりアハハと部屋に響き渡る。
そうだった、これがチャンミンだったとシドは改めて納得した。
チャンミンにとってユンホの前を行く人間など誰もいないのだ。



「へ?な、なに、…え?」
シドがどうして笑ってるのかチャンミンには分からず、ハイルがまた盛大に拗ねるわけも分からない。
チャンミンにとってユンホが一番なのは呼吸をするより自然なのだから。
そしてそれはユンホにとってもそうなのだ。











夜も更け参考書を借りに来ただけのつもりがつい話しこんでしまったとハイルは慌てて母屋へ戻り、シドも受験生だからとハイルにつられ席を立った。




「弁護士ってことは法学部だよな。2年後にチャンミンが同じ学部の後輩になると思ったら俄然勉強の意欲がわいてきたよ。」
シドは大袈裟に喜び、ピクリと反応するユンホを楽しむ。 
チャンミンが附属の高校から持ちあがり、自分が外部受験という難関を突破すれば晴れて同じ大学の同じ学部になるのだ。
ハイルが進む経済学部は広大な大学の遠く離れた校舎にあってザマアミロと気を良くしていた。
シドにとってチャンミンはユンホのもので、そこへハイルがしゃしゃり出るのはかなり面白くない。
ハイルが出てくるなら自分も、…と、つい思ってしまうほどチャンミンを気に入っているシドだが、いつかチャンミンの覚悟を聞いて以来それもおこがましいと思っていた。
 




「外部受験って難しいんですよ。頑張ってくださいね。」
シドを見送る玄関先で素直に激励するチャンミンの隣。
「そうだぞ、お前こんな所で油売ってる場合か。」
調べてくれと言ってきた張本人がそんなことを言うとは、とシドは苦笑いを返す。



「シド。」
「はい?」


勝手なところのあるユンホだが、こうやって名前を呼ばれただけでシドは嬉しい。
カリスマたる素質というのはこういうことを指すのだとシドは思う。


「いろいろ頼んだけどもう調べる必要ない。お前は受験に専念して、ここへは二度と来るな。」
「…、は?っ、なにを冗談、っ、…」
いきなり言われた事の内容に、シドは思考が追いつかずへらっと笑った。
だがユンホは笑っていない。
真剣な表情で、…でも、こんなついでのように、とシドはますます混乱した。



「冗談じゃない。ずっと言うつもりだった。チャンミンも居ることだし丁度いい。」
「え?」
「…チャンミンとも今後関わるな。」
「は?…っ、意味が、」
大学の話からどうしてこんな話になるのかシドはまったく分からない。
「別に同じ大学で仲良くされるのが嫌だってわけじゃない。俺はそんなに小っせぇ男じゃないからな。」
いいや、チャンミンに関しては恐ろしく小さい男じゃないかとシドは言ってやりたい。
でもそれを許さない真剣さがユンホにあり言葉に詰まる。




「鳳昌組の件、…俺を雇った企業の裏にいる政治家はお前も知っての通りお前の父親の派閥だろう?もしかしたらお前の父親が黒幕かもしれない。だけど俺はそんなことに興味はないんだ。」


「…ただその息子が俺と接触していたら、鳳昌組の矛先がお前へ向く危険がある。最近ざわついていて油断できないんだ。」
「ユノさん、…そんなの、」
「それにお前とチャンミンが会えば、どうしたってチャンミンも目立ってしまう。」



確かに今はあまり目立つべきじゃないとシドも理解できるが、それがどうして“二度と”になるのか。
シドがどれ程ユンホへ焦がれ切望してきたか、安易な気持ちじゃないとユンホへ伝わっていないのか。






「ユノさん!俺はアンタについていくって決めてるんだよ。勝手なこと言わないでくれよ。」
絞りだすような声でシドはユンホへ向かってこぶしをあげる。
一度だけユンホの胸を打ったそれは、気づけばユンホの大きな手のひらでくるまれていた。




「俺はな、シド、…お前が法学部を選んだときに決めたんだ。お前は意識的だろうが無意識だろうが法学部を選びとった。それは政治家の父親と同じ道を進む意思の現れで、…そんなお前の邪魔を俺はしたくない。」
「っ、そんな、…ユノさん、っ」




「政治家とヤクザは常に表と裏だ。俺に表舞台を堂々と歩くお前の姿を見せてくれたっていいだろう?」



ここでユンホはやっと笑った。
優しく誇らしげな笑み。


あの日シドを射竦めた青い炎が、今は親愛の情を持ってシドを捕らえる。








だがそれはあまりにも突然すぎて、くらりと視界が揺れるのをシドは止めようもなかった。






















         

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