HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~最愛~26

































吐く息さえ凍りそうな夜道を、くっきりと輪郭を露にした月が照らす。
足早に遠ざかる背中を眺め、ユンホの小さくついた溜め息はひどく硬質で、澄みきった空気とは裏腹に重く落胆に沈んでいた。

 

上着もなしで玄関に突っ立ったままのユンホを部屋へ連れ戻したいチャンミンだが、いつまでも動こうとしない背中へ声を掛けるのも憚れるのだ。
だからそっとユンホの背中へ身体を寄せた。
両手を添え、コツンと額を合わせる。


煌々とした月が2人を照らし、風のない庭先では葉ずれの音さえしない。
「ユノ、…泣いてるの?」
ユンホの拍動を感じながらチャンミンは静かに聞いた。
「いや、まさか。」
少しだけユンホが笑う。
「…でも、シドさん、…あんなに仲良かったのに、」
「べつに仲良しとかじゃない。」
「ここへ自由に出入りするのは身内以外ではジノさんとあの人だけだったし。」
「ふ、…図々しいからな、アイツ。」



数ヵ月前に知り合ったばかりのシドだったが、その強引さとユンホへのひたむきな憧れ、しつこいほどのマメさであっという間にユンホの懐へ入り込んだのだ。
時々チャンミンさえ妬いてしまうほど信頼関係を築いてるように見えたのに。


「優しいね、…ユノは。」
「…あの仕事では報酬にかなりイロをつけて貰ってるからな。関係者の息子をヤクザがたぶらかしたと責められるのは後味が悪いだけだ。」
チャンミンはユンホの背中へ置いた両手をぐるっと腹へ回し、ユンホの優しい嘘を聞いていた。
政治家の息子がヤクザとつき合えば、これから益々シドの立場は危ういものになっていくだろう。
ユンホは組の盃を受けると決めた時点でシドとは決別するつもりで、そしてやっと言えたのだ。



「嘘ばっか、…シドさん、受験がうまくいくといいね。」
「──ああ。」


それから暫くお互い無言で、ユンホは背中にチャンミンは胸にお互いのぬくもりを感じていた。
これから表舞台を歩くだろうシドのリスクを考え離れてやる、それは出来るのにユンホはどうしてもチャンミンにだけは出来そうにない。
心のなかで“ごめん”と謝る。
明日の食事会が重く心にのしかかり、何も出来ない自分が歯痒い。




「ユノ、風邪ひいちゃう。中へ入ろうよ。」
まだ名残惜しく立つユンホをチャンミンは玄関へ引き入れ、冷えきった鼻先を自分のであやすように擦ってみる。 
自分から突き放したくせに捨て犬のように肩を落としたユンホの弱さをチャンミンは初めて見た。
そんなユンホも堪らなく愛おしい。
「僕がいるから、…ユノ、…」
「チャンミナ、…」
ユンホの左の目尻から頬へ残る傷痕をチャンミンは指でたどりそっと口づける。 
「ずっと傍にいるから。だから僕のことはユノの勝手な判断で突き放さないで。」
「勝手な、って、…ひどいな。」
苦笑いのユンホを玄関ホールの壁に押しつけ、これだけは言いたいとチャンミンは真剣に。
「勝手じゃないなら、ユノの思いこみで決めてほしくない。僕のことは僕が決めるから。」
真っ直ぐな眼差しにユンホは小さく微笑み、チャンミンの腰に回した腕でぐるりと体勢を入れ替える。
チャンミンの背中が壁を鳴らす。
キッチンでは水音が続いていて、エナが洗いものをしているようだった。
「その台詞はそっくりそのままお前に返すよ、チャンミナ。勝手な思いこみで判断せず、なんでも俺に相談するんだ。いいな?」


「……。」


高校へ入りぐっと背が伸びたものの、まだユンホへは届かない。
壁に押しつけられ射るような眸で見下ろされるのは少しだけ悔しい、どうあがいても縮まることない歳の差を突きつけられてるようで悔しいのだ。


「チャンミナ、…返事は?」
「……、っ、」


こうしてすぐ子供扱いするユンホが嫌だっていつも言ってるのに。


「…ユノが、最優先ならいいよ。」
「は?」


分からなくたっていい。
チャンミンにとって考えも行動も全ての指針がユンホにあるのは幼い頃から変わらないのだから。 


「ユノ、大好き。」
「え、…って、…ん!」
ユンホの後頭部へ回した腕を引き寄せる、伸ばした背も爪先も全部でユンホを求め口づけた。
先日デイルから提案された弁護士事務所の話をもしかしたらユンホが受けるかもしれないと、シドへの行動を見て恐れた自分をチャンミンは感じていた。
ユンホ失くしては弁護士を目指す意味さえないのに。



「っ、チャンミ、…、っ」
離れようとするユンホの向こうでキッチンの水音はまだ続いている。
まだもう少し、…あともう少し。
角度を変え隙間を縫うようにチャンミンの舌がユンホを追いかけ戸惑うユンホのそれを強引に吸った。
シドへ向けたユンホの優しさを自分へ向けられるのはどうしても嫌だった。



「っ、あ、…」
チャンミンの腕が乱暴に解かれ、両手を壁へ張りつけられる。
ユンホは少し怒ってるようで、チャンミンだって謝りたくないから口元を歪め腕をバタつかせた。
「っ、ユノ、…離し、…っ!」
「お前、」
どれ程もがいてもビクともしないユンホが悔しい。
好きだから悔しいのだ。





「──ホント、…堪んないな。お前を品行方正な弁護士にしてやるのは無理かもしれない。」



ポツリと漏らしたユンホをチャンミンは見やる。
への字に結んだユンホの口角だけがくいと上がり細めた眸が愛しさに溢れる。
再びお互いの顔が近づき、チャンミンが差し出した鼻先を一瞬だけ掠めてユンホの躊躇ない唇がチャンミンを覆った。




深く口づけ、もっともっと飲み込んでしまいたい。
幼く従順だったチャンミンも。
少年の素直で一生懸命なチャンミンも。
清らかな色香を纏い、日々麗しく育っていくチャンミンも。
ユンホを“最優先”だと、いくつ歳を重ねても変わらない頑固なチャンミンも。
そして、そんなチャンミンに溺れきっているユンホ自身も。





「んん、…ぁ、…」
積極的に攻めたつもりのチャンミンだったが、自分の稚拙さが恥ずかしくなるほどユンホのキスは濃厚で遠慮を知らない。
あっという間に身体中が熱をもち蕩けてしまいそうで、崩れそうになる膝を耐えるのに必死になってしまう。
チャンミンの両手はユンホの片手のみに拘束され、もう一方で腰を引かれユンホの膝がチャンミンの震える膝を割って入った。



チャンミンはなけなしの理性で耳をすましキッチンの水音を確認する。
それでもさすがにやり過ぎじゃないかと息もつかせぬキスや押しつけられた腰の昂りに思うチャンミンだけど、でもやはりそれを止める気にはなれないのだ。



ふとチャンミンは水音の様子が変わったことに気づき、何となく閉じていた目蓋を薄く開いた。
いつもユンホとのスメルキスや口づけでチャンミンは目を閉じる。
ユンホの匂いを感じたり触感を大切にするのに視覚は邪魔なだけなのだ。
間近で見るユンホは格好良すぎてむしろ目の毒だとチャンミンは思っていた。
それがうっすらと現れた視界に映ったのが目を真ん丸に見開いたエナだったのだからチャンミンが飛び跳ねんばかりに驚いたのも無理はない。



「っっ、…///!」
「チャンミナ?」


跳ねるようにもがくチャンミンをユンホは優しく抱き寄せ、ゆっくり振り向いてエナを確認し予想通りというように照れくさそうに笑った。
笑ってる場合じゃない!と青くなるチャンミンだけがジタバタしてるようで、ユンホを挟んで向き合うエナも驚きの表情が緩やかにニンマリと形を変えた。



「あ、あの、…っ、無理矢理じゃないから!」
「…は?」
「…え?」


何か言われる前にとチャンミンは焦ったように弁解し、ユンホとエナは2人してポカンとしている。


「だから、っ、…ユノに無理矢理されてるわけでも強要されてるわけでもないから。あの、…合意というか、…むしろ今は僕からしちゃったと言うか、…」
焦りすぎてチャンミンは頭が真っ白で、自分が何を言ってるのか分からなくなる。
エナが何か言おうと口を開くのを止めるようにチャンミンは喋り続けた。
「でも、…ごめんなさい!エナさんを騙すつもりも裏切るつもりもなくて、…でもでも、ずっとユノが好きで、…ユノじゃなきゃ駄目で、…ユノなら何でもよくて、…ごめんなさ、」




「ぷっ!」
「…へ?」


そこまで言ったチャンミンをさえぎるように吹き出したエナはもう我慢できないといった感じで、よく見れば顔が真っ赤だ。
可笑しいのと恥ずかしいのと、そしてチャンミンが可愛いのと、そんな様子のエナだった。



「ぷくく、…っ、もう、ユンホ坊っちゃんもえらい好かれようですねぇ、…ぷぷ、」
「ふ、…まあな。」


「は、はぁ?///」



ここへきてエナの様子にまったく嫌悪感がないのをチャンミンはやっと気づく。
エナはユンホが無理矢理チャンミンを組み敷き、それに悩んだチャンミンが吐き気に襲われてると思っていたのではとチャンミンは不思議に思う。
あの時の台詞はなんだったのかと疑うくらい柔らかな表情のエナ。



「良かった。チャンミンが体調を崩すほど旦那様との約束に悩んでると思っていたからね。こんなに熱いラブシーンを見せつけるくらいだから大丈夫そうだ。」
ひとり納得するように頷きながら思わずニンマリ崩れる口元を隠せないようだった。


「……エナさん?///」




「チャンミナ。私はね、アンタの恋愛相談にのってやるのが夢だったんだよ。」
「っ、恋愛相…っ、…///」



「でも相手がユンホ坊っちゃんではどちらも知りすぎてて想像しちゃうから年甲斐もなく照れちゃうわねぇ。困ったわ。」



それほど困ったふうでもないエナが笑顔のまま言い、ユンホも──頼むよ、なんて馬鹿なことを言っている。



一番困ったような顔をしたチャンミンが、知らず滲んでくる涙をごまかすように何度も指で拭った。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                  
 

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