HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~最愛~34


























 







「──おじさん、って呼んだんです。初対面で。老けてると言うよりは、重い荷物を背負いすぎて落ち着かざる得なかったというか。」



川べりを少し歩くと無造作に置かれたベンチがあり、ユンソクに促されユンホはそこへ並んで座る。
なかなか核心に触れないユンソクの話を我慢強くユンホは聞いていた。
時おり川のせせらぎに合わせるように鳥の鳴き声が聞こえ、チャンミンにも聞かせてやりたいとユンホは思う。
きっとうっとり目を閉じ時間を忘れて聞き入るのだろうなと容易に想像できた。




「そしたら、…ふふ、怒ったんだ、あの人。それはもう子供みたいに。」
ユンホへと言うよりはまるでひとり言のようにユンソクは話す。
なみなみと注がれた水が一旦溢れたら止まらないように、…それはユンソクの想いなのだとユンホは思った。
「その頃僕は劇団の稼ぎ頭で、子役としてCMやドラマに出演しては劇団の経営を助けていたんです。でもそろそろ年齢的にも頭打ちで、悩んでいたところをあの人に“子役は大成しない”ってズバッと言われちゃって、…」
「…ひでぇな、…」
ボソッとつぶやいたユンホへ、──でしょう?とユンソクは笑う。
「でもそれがあったから、悔しくて無我夢中で頑張ったんですよね。会えば酷いことばかり言ってくるから、最初はあんなヤツ!って大嫌いでした。」
クスクスとユンソクが笑う。
それは大嫌いという顔ではなかった。



その顔がふっと曇る。
「小さな劇団を芸能事務所にして、スカウトしてきた女優や男優を売り出したんです。あの人、オーラを見極める天才なんだ。あの人に認められたタレントはあっという間に売れて、…僕、焦ったなぁ、」
目を細め昔を懐かしむように口元を緩めるユンソクだが、その笑いには自嘲めいて後悔の色が見える。




数日前にユンソクと会ったあと、ユンホはかなり細かく当時のことを調べていた。
ガンソクの手腕は大したもので、20人程の旅一座が2年経った頃には100人を超す社員数になり、それに伴い事務所の規模はみるみる大きくなり業績もアップした。
まさに破竹の勢いだったのだ。
それが一度だけ暗雲が立ち込めた時期がある。
金で引き抜いたタレントは金で裏切るもので、当時看板スターだった女性歌手が移籍しその痛手はかなり大きかったらしい。
後にその女性歌手が原因不明の病気で再起不能になり引退を余儀なくされたことは大きく話題になったものの、結局真相は明かされていない。
ユンホはその女性歌手の末路を思い胸が痛いが、それがガンソクなのだ。



その痛手を救ったのがユンソクだった。
ユンホでも何度か観たことのある国民的映画の準主役に大抜擢され、それからは一気にスターダムにのしあがった。
そして今の俳優としての地位を築いたのだ。





そこまではユンホでも調べられた。
だがこれではガンソクとユンソクの関係が見えてこない。
芸能事務所の社長と生え抜きの所属俳優、それだけなのだ。




「素晴らしい篠笛の音色でした。その、…父も、貴方の篠笛をよく聴いていたのですか?」
試しに聞いたユンホへユンソクは思い出し笑いで返す。
クスクスと揺れる肩がみょうに色っぽい。
14歳で22歳のガンソクと出会った。
年の差は少し違うがまるでチャンミンと自分のようだと思うユンホだが、肝心の気持ちが分からない。


「聴く、…と言うより、どうだろう?聴いていたのかな。会えば必ずつかまって篠笛を吹けと強要されました。事務所の屋上であの人は寝っ転がって。でもね、ふふ、…三小節目には寝てるんです、あの人。」
可笑しそうにするユンソクが本当に幸せそうに笑うから、ついユンホの頬も緩んでしまう。
20年も会ってないと言うのに、そこには確かに愛を感じるのだ。
「常に気を張って生きてきた人がつい寝てしまうくらい幸せであたたかい音色なんですよ。俺も聴かせてやりたいって思いましたから。」
「……大切な人に?」
そうおどけたようにユンソクが言うから、はい。とユンホは正直にこたえた。
「この川べりの道を見せたいとか篠笛を聴かせたいとか、ユンホさんは余程相手の方を愛しているのですね?」


包み込むような優しい笑顔だった。
だから本当は言ってはいけないのだろうが、ユンホはどうしても言いたくなった。


「…はい。──チャンミンって言うんです。年こそ離れてますが、いつも俺の世話をやいて俺に堂々と指図してくる可愛いヤツです。貴方は噂で聞いてませんか?父が愛人にと望み、16の誕生日まではと手を出さず育てた子のことを。」
「え、…っ、あ、」
ユンソクの肩が一瞬で強張り、見てとれるほどの動揺が伝わる。
「…俺は、裏切者です。父に逆らい本宅にまで入れようとした男を、…男なのに、俺はどうしようもなく愛してしまった。」


ユンホはみるみる沈んでいくユンソクの顔色を覗き見る。
どうしてそこまで?
「父が男を愛す種類の人間だということはご存知ですか?」
「はい、…当時からスタッフやタレントにまで手を出していましたから。」
それなのに、どうして今、そんなに悲しげな表情をするのだろう。
「…貴方とも、…そういう関係だった?」
ガンソクのあの日の動揺、そして“篠笛を奏でる天女”。ただの昔なじみであるはずがないとユンホは思っていた。
「いえ、…僕には指一本触れませんでした。」
嘘を言ってるようには思えない。
けれどチャンミンの存在を知っていて、その存在にこれほど動揺しダメージを負っているのだ。




「…兄弟のような関係でした?」
「ああ、…そうかもしれません。いつだってあの人は僕へ厳しくて、…そして、優しかった。失敗して落ち込んでると馬鹿な奴だと言ってハグしてくれましたし、評価されれば本人の僕より嬉しそうに笑ってくれました。」
伏し目がちに自分の靴先を見つめるユンソクは真剣な表情で覗きこむユンホを見ようとしない。
もう長いこと押さえつけていた感情が今になって沸々とわきあがるのを感じる。
いい歳して何をと、嘲るように上げた口角はピクリとも動かず麻痺してるようだった。


  




ガンソクが芸能事務所を仕切って2年もした頃、世間ではヤクザと芸能界の繋がりを批判する風潮が高まり、次第にヤクザはおもてだって動きづらくなってきた。
それを感じとったガンソクはすぐさま事務所から表向き手を引き裏で操るようになる。
そしてその直後に看板スターの移籍問題が起きたのだ。




「でも、…おそらくあの人は僕を許さない。」
ポツリと無表情のユンソクが漏らした。
誰に向かって話しているのか本人さえ定かじゃなく、言葉ひとつを噛み締めるたび徐々に眸の色が濁っていく。
「監督が、…取引で僕の体をとか、…あの人、絶対駄目だって、でも逆らったら芸能界では生きていけないほどの大物で。捨て子の僕を育ててくれた劇団を潰したくない。勢力争いが絶えない組内であの人の立場を悪くしたくない。…違う、…僕は、何よりも自分が可愛かった、…」
「っ、…なにを、…?」


ユンソクが自分を見ていないのは分かっているが、それでもユンホはユンソクの視界に入ろうと近寄った。
切れ切れに話される内容はおそらくユンソクの出世作である映画のキャスティングを言ってるのだろう。
ユンホは隣に座る男の背をゆっくりと撫でる。
もう数十年前の話を今さらのように懺悔する男へユンホは絞られるような胸の痛みを感じていた。






「あの日、…あの人から大切な話があると食事に誘われたんです。そんなこと、初めてだった。どうしても二人きりで話したいと、ある料亭を指定されました。でも、…僕は行かなかった。」




「まだ女性経験さえない16歳の身で、男に、…監督に抱かれていたから行けなかったんです。」




ユンホは何か言わなければと思うが言葉を探すことが出来ないでいた。
そして、生まれて初めてガンソクという父親を身近に感じた自分に驚く。



チャンミンの16歳のバースデーにとガンソクがこだわった理由。
チャンミンは、ユンソクという男の身代わりだったのだ。



幼いチャンミンを一目見て、どこかユンソクに似た面差しに目を止めたのだろう。
ガンソクはユンソクを愛していた。
自分の制止も聞かず別の男へ身体を拓いたユンソクを許せないほどに。
それでもきっと遠くから、…気が遠くなるほどの時間、ユンソクを見守っていたに違いない。
だからこそ誰も愛さず、背中に背負った天女を誰にも見せず後生大事に背に抱いてきたのだ。




ゴクリとユンホの喉が鳴り、ふぅと息を吐いた。
「…よく話してくださいました。大丈夫、誰にも言いません。ユンソクさん、チャンミンは貴方にとても似ている。これの意味することが分かりますか?」
最初はユンソクとの関係からガンソクの弱味が握れたらいいと近づいたユンホだったが、たった今事情を知りそんな気持ちは微塵も残っていなかった。


「……分かりたくありません、…」
頭を垂れ、膝についた両手で顔を覆って。
年齢を忘れてしまうほど張りのある美しさが眩しいほどだったのに、今は震える背が丸く折れて年齢相応に疲れて見えた。
ユンホはどうしてもユンソクにチャンミンを重ねてしまう。
14歳で出会ってたった2年ではあるが、ガンソクは目の前の清廉とした男を慈しみ愛したのだろう。
男色で散々遊び、しかも子供を作る為だけに女も抱いた、そんな自分では手を出すことすら躊躇するくらいに。
それを告白する前にユンソクは別の男に抱かれ、代わりにと待ち望んだチャンミンはユンホに抱かれてしまったのだ。




もし、ユンソクがチャンミンだったら。
あの時、チャンミンがガンソクに抱かれていたら。



ユンホは胸をかきむしるように胸元へ手をやり、ガンソクの苦しみが自分へ流れ込むのを防ごうとした。
耐えられない。
嫉妬の業火に全身が焼かれてしまいそうだ。
  



「父は、…貴方を愛している。…おそらく、今も。本当に欲しいのはチャンミンではなく、貴方なんだ。」



ほとんど親子としての絆など築いてこなかったが、遺伝子レベルで通じあうものがあるのだろうか。
ガンソクの想いは確信となってユンホに伝わり思わず口にしてしまった。



「…ユンホさん。」


ずっと避けていた視線がユンホを見つめる。
一筋の糸が冬晴れの太陽に反射し、キラリとひかってユンソクの膝を濡らした。






「──やだな、…そんなに似てるなんて反則です。忘れていた、…忘れようとしていたのに。」




涙で滲む眸を眩しそうに細めユンソクが微笑む。
ユンホはつい見惚れてしまった。


これが“天女の微笑み”だと思ったのだ。













*********************


おはようございます、えりんぎです。



8月に入りチャンミンの“おかえり”までいよいよあとわずか!ヽ(〃∀〃)ノ
「チャンミンが帰ったら」ってユノが言ってくれた報告?発表?楽しみですねぇ♪




さて、コチラのお話も着地に向かってひた走っておりますが、、、 
実は昨日の33話で訂正があります。


ガンソクさんが22歳とき、14歳のユンソクと出会ってます。
当時デイルは産まれていますがユンホとハイルはまだ産まれておらず、現在ガンソクさんは51歳です。
ということで、25年前というセリフが出てきますが29年前の間違いでした。
もし、細かく計算された読者さまがみえたらゴメンナサイ。。。



そしてもうしばらく続きますので、おつきあいくださいね(〃∀〃)ゞ
早朝からたくさんの拍手やポチをありがとうございます。


では!











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