HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~最愛~39


































ぬかるんだ沼地を走っているような感覚。
何度も足をとられ、どっぷりと沈む。
沈んだ先は真っ暗な闇で、息苦しさに喉を掻き毟り闇雲に光を探すが、もう自分が立っているのかさえわからず。
彷徨うように差し出した手は闇に溶け、ただひたすら愛しい人の名をよんだ。



───チャンミナ。








「っ、ユノ!!」


ドンッと派手な音がしてユンホは真っ白な壁に押さえつけられハッと我に返った。
ここは何処だ?とユンホは思う。
ユンホを押さえつけていたのはジノで恐ろしく顔色が悪い。


「ユノ、…取りあえず深呼吸しろ。いいか、ゆっくりだ、…吸って、吐くんだ。」


ジノは何を言ってるんだ、とユンホは思うが、あまりに真剣な表情のジノへ反論も出来ず言う通りにした。
ジノ以外見えていなかった視界が徐々に開け、ユンホの足元に数人の屈強な男達が転がっているのに気づく。
「あ、…」
そしてユンホは思い出した。 
転がっている男達は組のもので、チャンミンの身辺警護をさせていたのだと。
ユンホはゆっくりと両手を広げグッとこぶしを握れば関節は赤く腫れていて、目の前の無惨な状況が誰のせいかをすぐに理解した。
「ユノ、…落ち着いたか?」
「……、」
「誰かを責めても起きちまったことはしょうがない。それよりもチャンミンの方が先だろ?お前が冷静さを欠いちゃ話にならないじゃないか。」




「……悪い。」


そう言ってユンホは前にデイルの見舞いで来たことのある特別室のフロアで、廊下のすみに置かれたパイプ椅子へどかっと座る。
一気に爆発した怒りでユンホの全身がぎしぎしと鳴る。
まだ顔さえ見ることの出来ないチャンミンを思い、ユンホは地を這うようなため息を吐いた。
チャンミンはなかなか処置室から出てこず、意識も戻ってないと聞く。








ここ最近毎日のように通っていたビルへチャンミンは今日も学校帰りに寄った。
警護していた男達にとってそれはもう慣れたもので、いつものように1時間後にはいつもの出口から出てくると思い油断したのだ。
1時間をとうに過ぎて焦った男達はビルの周辺を探しはじめ、別の出口から出てチャンミンを車に乗せようとする明らかに堅気とは思えない男達を見つけた。
緊急事態だとチャンミンの名前を叫べば、ふと振り向いた顔が驚きでかたまる。
チャンミンを車に押し込もうとする男達をユンホが送り込んだ警護のものだと勘違いしていたらしい、そんな顔だった。




一斉に走り出した警護の男達と急に暴れはじめたチャンミン。
車はまだ発進しておらずあと数メートルの距離でチャンミンへ届く、無事に保護できると男達が踏んだその時、突き飛ばされたチャンミンが派手に転ぶのを男達は見た。
慌てて発進した車のあとに残されたチャンミンは運悪く頭を強打していて、おびただしい出血がアスファルトを真っ赤に染め、ぐったりと倒れたチャンミンの意識は遠くピクリとも反応を示さない。



すぐに救急で運ばれ数時間経つが意識が戻らず、裂傷の縫合と検査のためユンホはまだ面会もかなわずにいた。











「ユノ、…っ、ユノ!」
何度か呼ばれ意識が呼び戻される。
ユンホの視界には呼んだ張本人のジノではなく、病室の窓から見える夜空が映し出されていた。
氷柱のように尖った月が冷たく輝いている。
あれから何時間経ったのか。
ひどく長いようで短い、まったく感覚のない時間。



「出血のわりに傷口は浅かったし脳波の異常もなかったんだ、医者が言うようにそのうちチャンミンも目覚めるさ。だからユノ、…お前は少し休めよ。チャンミンよりお前の方が顔色が悪いぞ。」
心配そうに覗きこむジノをユンホは軽く一瞥し、目の前の安らかな表情で寝入るチャンミンの手を握った。
「俺のことはほっておいてくれ。他の患者の迷惑になるから病室の外の奴らを連れてお前はもう帰れよ。」
「ユノ、でもさ、」
「チャンミンの目が覚めるまで一歩も動くつもりはない。…悪いけどお前の親父さんへうまく言っておいてくれるか?」
今回の件が鳳昌組の仕業というのは車のナンバーや警護をしていた男達の証言により明白だった。
今すぐ鳳昌組へ乗り込んで暴れたいのをユンホは必死で抑える。
まずはチャンミンの意識が戻り無事を確認してから、そうでなければユンホの体は重く動けそうになかった。




 
「ユノ。一応組員には口止めしておいたが、親父が今回の件を知るのも時間の問題だろう。チャンミンは表向き組長の愛人なんだ、組同士の抗争になるかもしれない。くれぐれも勝手に動くなよ。」
ジノはチャンミンが眠るベッド脇の椅子に座るユンホへ言い含めるが、分かってると言いながら思い詰めた表情のユンホが心配でならなかった。
ユンホとの長い付き合いのなかでこれほど取り乱したユンホを見たのは初めてだった。
周りを敵に囲まれても冷静さを失わず、不利な状況で尚攻めの一手を取るため静かに且つ大胆にその場の空気を掌握する姿がジノにとってここ最近のユンホなのだ。



「やっぱり俺もここで泊まるか?」
それが病院へ到着してすぐ警護をさせていた組員達を殴り倒したユンホには冷静さの欠片もなく、自分の声が届いているのかさえジノは不安になるほどのユンホの様子だった。


「いや、いい。チャンミナと2人きりにしてほしい。」
「…チャンミンの意識が戻ったらすぐに連絡しろよ。それが出来るなら俺は帰るから。」
だがきっとチャンミンが目覚めたとき、自分に晒したくない姿をユンホは見せるだろうなとジノは容易に想像できるから2人きりにしてやりたかった。
何時でもいいからすぐに連絡しろよともう一度ユンホへ言い含め、ジノは病室を出ようとしてそう言えばと思い出した。
「お前はそれどころじゃなかったから言ってなかったけどさ、実はチャンミンが救急で運ばれたとき偶然デイルさんと一緒になったんだ。」
「…デイル兄?」
「そう。この特別室を手配してくれたのもデイルさんだよ。もしチャンミンが目覚めたらデイルさんへも連絡しておけよ、心配してたからな。」
それだけ言ってジノは出ていき、パタンと閉まったドアをユンホは暫く見つめていた。
デイルと話さなければと思いながらなかなかきっかけが掴めずにいたのに、結局またチャンミンを口実に話すことになりそうだとユンホは思ったのだ。





デイルが現れたのはそれからすぐだった。
たったひとりでやって来て、久しぶりだなと穏やかな口調で言う。
ユンホはなぜか嫌な胸騒ぎがしてデイルへ笑い返すことができなかった。
それはおそらく怪我で未だに目覚めないチャンミンを前にして変に余裕たっぷりの様子がデイルから窺えたからで、戸惑うユンホの脇をすり抜け特別室の名に相応しい応接セットへデイルが腰かけてもユンホの胸騒ぎは続いた。




「…デイル兄が病室の手配をしてくれたんだって?助かったよ、ありがとう。」
「ああ、俺も急に体調を崩して、今日の散歩は出来ないってチャンミンへ伝えそびれたから丁度よかったんだ。」
丁度よかった?とユンホは訝しげな視線をデイルへ向けた。
頭部に巻いた包帯が痛々しくてユンホは見てられないほどなのに丁度いいってなんだよ?と思う。
そんなユンホに気づいたのか、デイルはユンホへ苦笑いを返しつつソファーへ座るようユンホを促した。


「選んだ言葉が悪かったか?丁度いいと言うのは他にも意味があるんだ。」
「…デイル兄?」
「今回の件は明らかにお前への嫌がらせだろう?その為にチャンミンを狙った、表向きは組長の愛人と言われているチャンミンをだ。そのリスクを加味してもお前が痛手を負うのはチャンミンだと判断されたってことだ。」
デイルの言うことはもっともで、ユンホは何も言い返せない。
今までは表立って仕掛けることのなかった鳳昌組が動いた、それはやはり土地売買をめぐる裏工作が漏れたということだろう。



「なぁ、ユンホ。男がのしあがろうとする時は、どうしたって敵も増える。それは仕方のないことなんだ。そしてお前が目立てば目立つほどチャンミンの危険が増える。それも仕方のないことだと今回チャンミンの拉致未遂だけで気づけて丁度よかったじゃないか。」
ぐっとユンホの手に力が入った。
言い返せない、…何も言い返せない自分が腹立たしくて唇を噛む。
デイルが本当にチャンミンを可愛がってるのを知ってるユンホだからこそ悔しいし強がることも出来ないのだ。




それでもやっと押し出すように口にする。
「俺がチャンミンを守る。」
その気持ちはずっと変わっていない、何よりも優先させるべきはチャンミンなのだ。



「守れないよ。」
「…え?」
「言い方がマズイかな。今のお前ではまだ守りきれない。現に親父にだって許されてないチャンミンを恋人だと大手を振って宣言できるのか?俺のものだから手を出すなとは言えないだろう?」
デイルの口から出てくる滑らかな言葉をユンホは黙ったまま聞いていた。
どれほどチャンミンを愛して、どれほど自分がのしあがれば許されるのだろう。
誰にも奪えないと思っていたユンホの意志がほんの少し揺らぐ、尊敬し敬愛していたデイルの言葉だから揺らぐのだ。




「デイル兄、…俺はどうすれば?」
そう聞いたユンホへデイルは優しげな視線を向ける、長年気にして可愛がってきた弟へ向ける視線だった。
「ユンホ、…俺は無理がきかない身体だ。セヨンは反対するが、組を抜けて弁護士になろうと思う。」
デイルの突然の告白はユンホへ大きな衝撃を与えた。ロジンからそれとなく聞いていたがまさか本当に組を抜けるつもりとは。



「その時に、…俺はチャンミンを連れていきたい。俺がチャンミンを一人前の弁護士にしてまっとうな人生を歩ませてやるから、」


「…兄さん、…!」



「──だから、チャンミンを俺にくれるか?」





いつかチャンミンへ話して聞かせたことをデイルは同じようにユンホへ話した。
ただチャンミンへはユンホと別れる必要はない、暫くの間離れるだけだと言ったが。


もうデイル自身も分からなくなっていた。
慈しみ愛情を注ぎあう2人を分かっていながら、それを守ってやりたいという思いと、真っ直ぐで純粋なチャンミンの心のなかに自分も住み着きたいという想い。



だからデイルは賭けたのだ。
ユンホがどうでるか、そしてチャンミンがどうでるかを。
















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