HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~最愛~41

































「…チャンミナ、…」



しばらくしてユンホは押し出すような声でチャンミンの名を呼んだ。
どれ程の沈黙が流れていたのか、はらはらと静かに泣き続けるチャンミンの顔と左肩下の鮮やかな刺青を交互に見つめユンホは小さく息を吐いた。


「内緒にしていて、…ごめんなさい。」
「あのビルか。あそこにテナントがあるんだな。」
チャンミンが毎日のようにビルへ通う理由をどうしてもっと早く聞こうとしなかったのか。
「旦那さまに紹介してもらって、…でも、ユノ、…」
「っ、どうして!どうして親父が知っていて俺は何も知らない?」
若者がよくやるタトゥシールじゃない、本物の刺青。
ユンホが子供の頃はガンソクが跡目を継ぎ刺青を禁止するまで何人もの組員が刺青を背負っていて、何度か見せてもらって触ったこともあった。
深く鮮やかな色合いは機械彫りではなく手彫りだと聞いたことがある。
「…ユノには言えなかった。」
「なぜだ?こんなの、…っ、一生、消えない、…」


チャンミンの肩下へユンホは指先で触れる。
丁寧に描かれ色鮮やかに跳ねる錦鯉、まるで見守るような目の表情までが細かい。
寄り添うように咲く大小の桜は濃淡に染められ、美しく儚く舞い散り、姿を変えチャンミンの身体で尚咲き続けているようだった。



それでも、一生消えない傷を背負ったことの重みをチャンミンは分かっているのだろうか。



「…だからだよ、ユノ。」
「チャンミナ?」



「一生僕はこの刺青を胸に抱いて生きていく。だからユノ、…僕はユノと一緒に生きていきたい。」



いまだ涙をいっぱいに溜めたチャンミンの零れるほど大きく真っ直ぐな眸に射竦められ、ユンホはなぜか突然すべてを理解した。
ヤクザという家業に最初こそ抵抗はあっても今では自分の価値を見出だしつつあるユンホへ、チャンミンの文字通り身体を張った覚悟の現れなのだ。




「っ、…バカなことを、…」
「…うん、…」
「本当に、…いいのか?チャンミンの夢を叶えるのに一番の近道は兄さんへついていくことなんだぞ?」
「バカはユノだよ、…僕の道はユノにしかないのに。」
「チャンミナ。」
「ん、…」
「また危険な目に合わせるかもしれない。」
「もっと真面目に護身術を習うから、ユノが教えて?」
チャンミンの眸の奥がユラユラ揺れて、照れくさそうに形を変える。
ユンホは堪らない気持ちでベッドへ乗り上げ、包帯に触れないよう気をつけながら囲むようにチャンミンを抱いた。
「ガキん時みたいに弱音を吐くなよ?実践的なものから厳しく教えてやる。」
「だってユノ、道場へ入ると別人みたいに厳しくなるんだもん。」
「当たり前だ、遊びじゃないんだから。」
睨みを利かせるユンホと泣き腫らしたチャンミンの視線が合う。
自然に近づき掠めた鼻先、焦がれるように開いた唇を強く押しつけ合うのに言葉なんていらない。





「ん、…っ、ぁ、…」
ユンホの激しいキスにチャンミンは必死で舌を絡めた。
泣きすぎたからか息が続かず苦しい。
酸欠で頭がぼぅっとするがそれでもやめてほしくないとユンホの後頭部を引き寄せ不自由な腕で掻き抱く。
「っ、…チャンミナ、…んん、…っく、…」
病室特有の匂いや乾いた空気がむんと熱気を帯びお互いの匂いが混じり合い、夜中の静けさに淫らな水音が響いても気にならない。
お互いの気持ちを確かめあうように熱い口づけは呆れるほど長い時間止むことはなかった。











そろそろ空が白みはじめる頃、チャンミンはユンホの膝に頭をのっけていた。
二日ほど入院して様子を見ようと医者から言われ安静にしなければならない。
もう寝ろとチャンミンから離れようとするユンホだったが、「病人はいたわらなきゃ。」とこの時とばかり甘えてくるチャンミンを無下にもできずベッドへ深く腰かけたユンホの膝がチャンミンの枕になっていたのだ。



「ユノ、…眠くないの?」
「くっ、…お前、膝枕を強要しておいてよく言うよ。」
呆れたように言うユンホだが、怒ってるようにも嫌そうにも見えない。
実際ユンホは一睡もせず夜明けを迎えたけれど、これまでにないほど気持ちは満たされ視界がひらけたような清々しい気分だった。




組を抜けたいと言う兄の要望がそう簡単に通るかどうか、それはユンホにはわからない。
だが病弱で温和すぎる兄がヤクザに不向きなのは誰の目にも明らかで、だからこそ自分が助けなければと長い間思い続けてきたし自分が組を去った時の唯一の心残りだったのだ。
だから兄が自ら組を抜けるのなら、ユンホにとってもう遠慮するものはなく心のまま進めばいいのだ。
そして、心優しく優秀な兄であってもチャンミンは譲れない。
チャンミンが自身に刻んだ覚悟のしるしごと、もう何があろうと愛し抜くとユンホは決めた。




「ふふ、一度ユノの膝枕で本を読んでみたかったんだ。今日は本を持ってないから今度やってくれる?」
くりっとした愛らしい眸で見上げてくるチャンミンの髪をユンホは摘まんだり指で擦ったりして遊ぶ。
「元気になって帰ったらまずは護身術の稽古だな。」
「えーーっ、…じゃあ、ご褒美?」
「…お前な、…」
子供のように甘える姿とはだけた病衣から覗く刺青が最初こそ不釣り合いに思えて視線を外してしまうユンホだったが、一晩中見比べていたら見慣れるどころかその美しさに魅了されている自分にユンホは気づいた。
それになんだか愛嬌もある。
チャンミンがサン太と呼んだ錦鯉がなるほど見れば見るほどサン太に思えてきた。
多色使いで深みのある目はまるで意思を持つようにチャンミンの病衣をかいくぐりユンホへ視線を投げかけてくる。




──そうか、お前も俺と一緒にチャンミンを守ってくれるか?



ユンホはその視線の意味をすぐに理解した。
そして心強く思う。
背徳心も罪悪感もいらない。
運命の人を愛しただけだと。












やっと日が昇りはじめた頃、病院の規則正しい朝が慌ただしくはじまる。
「シムチャンミンく~ん。っ、あ、…!///」
「あっ///」
「あー、…」
ノックと同時に開けられたドア、カーテンを引いてないから丸見えのベッドでは変わらずユンホの膝で寝転ぶチャンミンがいて、チャンミンの両腕がユンホの首にまわりふざけるように引っ張ってキスをねだっていた。
腰を屈めたユンホがチャンミンの鼻先を捉えたところでドアが開いたからどうにも言い逃れできそうにない距離。
「目にゴミがっ!///」と慌てて言っても真っ赤な看護師には通用しそうにない。



「シムくん!点滴がズレちゃいますからあまり激しく動かさないで、…っ、」
言いながら近づいてくる看護師へ、ユンホはチャンミンを慎重に寝かせ立ち上がり丁寧に頭をさげた。
「今日もう一度検査をして退院は明日以降と聞いています。俺は仕事へ行かなければならないので、チャンミンをよろしくお願いします。ほとんど風邪もひかず病院知らずなんでビビって迷惑をかけるかもしれませんが。」
ニコリと笑ったユンホをまだ若い看護師はうっとりと見つめる。
チャンミンはそれを遠巻きに眺めながら、当然面白くない。
「あ、あの、シムくんのお兄さんですか?///」
「あー、、まぁ、」


「っ、違います!」
とっさに言ったチャンミンの拗ねた唇が盛大に尖っていてユンホは思わず苦笑いした。
そしてやっぱりお約束のようにユンホは一歩後退しチャンミンのそれにチュッと唇を重ねる。
「っっ、…!///」
「え?あ、あの、…///」


「可愛い恋人をよろしくお願いします。」





そして誰をも魅了するような満足げな笑顔を向けるのだ。













特別室には付き添い用の簡易ベッドにシャワーブースもある。
そこでユンホは1時間だけ仮眠をとってシャワーを浴びた。
着替えがないので仕方なく脱いだシャツとスーツを身につけブースを出れば点滴スタンドを片手にチャンミンが立っていた。
面白くなさそうな顔。
ユンホはふっと笑った。
「飯、食った?」
「ん、…でも足りない。」
「そっか、それくらい元気なら安心だ。食事制限はないから後でなにか持ってこさせるよ。」
腹が減ってご機嫌ななめなチャンミンも今回の件が大事に至らなかったから見られるのだとユンホは胸をなでおろす。
そして。

「ユノが、…持ってきてくれる?」
「え?」
「ユノが、来て。」
「…あー、…ごめん。すぐには来られないから他の奴で我慢しな?夜にはまた来るから。」
「やだ、ユノがいい。」
「おまっ、…子供かよ?」
そんなめずらしい我儘を言ってくるチャンミンへ苦笑いを返し、ユンホはチャンミンの不安を感じとっていた。
「すぐ人を呼んで病室の前で見張らせるから、…大丈夫。ここは安心だから。」
そう言ってユンホはあやすようにチャンミンの背を撫でた。
ずっと一緒にいてやりたいが、ユンホは行かなくてはならないところがある。



ユノ、…と縋るように見つめるチャンミンからユンホは目をそらしたい、この引き込まれるような眸が好きだけど、苦手なのだ。
下手な誤魔化しが通用しない、自分だけを視界にいれる真っ直ぐな視線。



「僕の不注意でこんなことになっちゃって、…僕は平気だから。だから、…あの、護衛の人達にひどいことしない?」
「ああ。」
若干苦笑いでユンホは頷く。
ひどいこととはどれくらいのことを言うのか。
昨日冷静さを欠いたユンホが殴りつけた何人かは歯が折れたと聞く、チャンミンには会わせられないなとユンホは反省した。 



そろそろ行かなければと体を離そうとするユンホだけどスーツの裾をつかむチャンミンの手がなかなか離れない。
「チャンミナ?そろそろ行くな?」
「行かないで。」
「え?」
「ヤクザって、ケジメだとか言って報復するんでしょ?」
チャンミンの表情は真剣そのもので、先ほどからずっとこれが言いたかったのかとユンホは納得し出来る限り柔らかく笑った。


「……しないよ、報復なんて。」


まだ何か言いたげに開いたチャンミンの唇をユンホは塞ぐ。
軽く触れたあと少しだけ深く唇を重ね、プチッと器用な指がチャンミンの胸ボタンを2つほど外した。
「…っ、ユノ?///」
「ちゃんと良い子で医者の言うこと聞くんだぞ?」
また子供扱いして!と一瞬むっとしたチャンミンの頬を愛おしげに撫で、チュッとキスをする。


───スベスベの頬から拗ねて尖った唇へ、そしてしおりを模したような桜とサン太へ。






これはヤクザ同士の報復ではない。
盃を受ける前、焦って調査不足のまま仕事へ臨んだツケは自分で払わなければ。
相手が“脅しの蛇”であれば尚のこと。


これ以上チャンミンに手出しはさせないと、ユンホはひとり病院をあとにした。













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