HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

あなたが笑えば~最愛~43

































産業廃棄物処理業を主な収入源として運送や土建業など昔ながらのしのぎに頼る鳳昌組は組長の道楽とも言える恐喝で潤ってきた組だ。
経済ヤクザとして名を売ったガンソクとは正反対に位置する鳳昌組組長は見た目もガンソクとはまるで違う。 
おそらくガンソクと同年代であろうがガンソクのようなスマートさはなく、無骨で野卑な外見にそれを裏切らない野蛮な物言いの男で、その男とユンホは今まさに対峙していた。




「お前が噂のチョンユンホだな?まだまだ若造じゃねぇか。うちの若いもんも情けねぇなぁ、こんなのにボコボコにされやがって。」
ガンッと蹴飛ばされたイスが大きく音をたてたがユンホはまったく動じない。
逆にさらに冷静さを纏い静かに部屋の中央で立っていた。
「ふんっ、…父親と態度までそっくりだな。俺はな、そういう澄ました奴が大っ嫌ぇなんだよ。たった2人で乗り込んできて格好いいとでも思っているのか?あっ?」
耳障りなダミ声が腹の底に響く、これも一種の攻撃だとユンホはわずかに口元を歪めた。
“脅しの蛇”とはよく言ったもので、畳み掛けるようなダミ声で脅されたら誰でも怯んでしまいそうだ。
しかも恰幅のいい身体に似合わず、抜け目無さそうな細い目は堅気の人間であれば気味悪さに震え上がるだろう。





「組長に会いたいと申し上げただけなのですが結構な妨害に遭いまして。暴れて破損した分の請求書は送ってくださって構いません。」
ユンホは丁寧に言って軽く頭を下げた。
目の前の男が恐いのではなく、かりにも組を構えた組長に対して礼を尽くさなければと思ったのだ。
「ただし同じヤクザ同士、それでやられたとなっちゃあ恥ずかしいでしょうから慰謝料はご遠慮ください。備品の破損を見積書つきでお願いします。」
しかし恐喝のネタをわざわざやるわけにいかないから釘をさすのも忘れない。





ふんと鼻をならし、男はユンホの頭のてっぺんから足の爪先までそれこそ舐めるように視線を這わせた。
階下での乱闘の一部始終は監視カメラがモニターを通し伝えていて、一見ヤクザものとは思えない知性的で端整な男の擦り傷ひとつない身体を忌々しげに見つめる。
チョンユンホが乗り込んできた理由は言わずもがな昨日の拉致未遂に違いない。
いくら調べようが女の影さえなく、やむを得ず同居して世話をしているという東神組組長の愛人らしい高校生へちょっかいを出したのだ。
それがほぼ単身で乗り込んでくるとは、男色の父親の愛人を弟のように可愛がってると噂で聞いていてまさかと疑っていたもののあながち間違いでもないらしい。




「それで、用件は?」
男はとぼけた物言いで厚めの唇を歪め笑った。
もともと産業廃棄物の不法投棄用地として企業を間に立てて買い叩くつもりの土地を横からかっさらわれただけでも面白くないのに、その土地が金の卵を産む土地だと知れば黙っているわけにはいかない。
ゆくゆくは相手企業や裏で手を引いた政治家をゆすりにゆすり骨の髄までしゃぶり尽くしてやるつもりだった。
それにはまずチョンユンホを黙らせることが必要だと脅し恐喝するネタを探していたのだ。
「ふ、しらばっくれないでください。貴方を傷害罪で訴えるつもりはありません。その代わり一切シムチャンミンからは手を引き、二度と手を出さないで頂きたい。」
きっぱりとユンホは言い切り男へ鋭い視線を投げるが、一瞬怯んでしまいそうな迫力に海千山千の男も黙っちゃいない。
「ふざけたことをっ、…最初に手を出してきたのはソッチじゃねぇのか。悪いが鳶に油揚げさらわれて大損したとなっちゃあ俺の面目丸潰れなんだよ。簡単には手を引けねぇなぁ。」



お互い息もつかせぬ睨み合いが続く。
ユンホは鳳昌組の土地購入の目的が不法投棄用地だと調べていたから代替地をくれてやってもいいと用意はあったが、目の前の男はそれだけでおさまりそうになかった。
それが、くっくっと男の不気味な笑いが漏れ聞こえユンホは訝しげに眉をひそめる。
「…そうだなぁ、昨日の高校生、写真で見ただけだが可愛らしい顔してたよな。お詫びに組長の愛人を俺へ贈呈するってのはどうだ?俺が飼うなり売っぱらうなり好きにさせてもらおうか。男に興味はないがチョンガンソクの愛人には興味がある。あの男に抱かれ若くして熟れた身体を俺も堪能したいものだ。」



その途端、ユンホから発した怒りのオーラをなんと形容したらいいか。
ユンホから数歩離れて立っていたジノでさえ思わず後ずさるほどの迫力に部屋全体がゾクリと凍った。


「…フザケルな、…」
「は?」
「それ以上ほざいたら、…この組ごと、潰す。」




脅しの迫力にかけては右にでる者がいないと言われた蛇が言葉なく立ち竦む。
完全にのまれ、青白く燃え盛る炎のような男へ為すすべもなく恐怖を感じていた。



時に恐怖心は人を惑わせムチャな行動に駆り立てる。
ジノ自身動けずに突っ立ったままの背後から音もなく風が通りすぎ、驚き凝視した先にキラリと光る刃物が見えた。 
その背中はここまで案内した男のもので、意味不明の叫び声をあげながらユンホを目掛け突進していく。
危ない!と声に出すより男の呻き声が先だったかもしれない。
ジノが気づいたとき、男は片腕を捻り曲げられ折った膝を床につき足元には鈍い光を放つ短刀が転がっていた。



なんという速さだ、…と、味方ながらジノの背筋が凍りつき血の気が引く思いだった。
そして組長が長男を差し置いてユンホを推す理由を身をもって理解したのだ。


チャンミンの名前が出てからのユンホはまさに修羅の如く殺気を放ち、もし暴れだしたら自分でさえ止められるかジノは不安だった。



離してやれ、と言ったのは鳳昌組組長で、先ほどまでの横暴な態度はなりをひそめ野蛮な物言いが改まっている。
ユンホは押し出すように鳳昌組若頭と名乗った男を組長の前へ解放した。
「チョンユンホ、…お前、東神組と鳳昌組の戦争にするつもりか?」
「まさか。貴方と刺し違えるだけなら俺ひとりで充分でしょう。」
「なにをそれほど、…」
鳳昌組の代紋を背負って、どう見ても組長である自分の方が有利なのにそうは思えない。
目が合っただけで首を絞められそうな迫力と怒りはどこからきているのか。



「もう一度言います。シムチャンミンには二度と手を出さないで頂きたい。」



静かに繰り返すユンホを男は不思議な思いで見ていた。それほど高校生ひとりに固執するユンホが理解できないのだ。



「その高校生がそれほど大事か?…所詮父親の愛人だろうが。」



何気なく言った男へユンホは再度突き刺さるような視線を向ける。



「シムチャンミンは俺のものです。誰ひとり触れさせるつもりはありません。」


ハッキリと宣言したユンホへ噂と違うじゃないかと反論しようとして男はそれをのみこんだ。
ユンホが嘘をついている顔ではないとすぐに察知したからだ。


「そうか、…ではもしお前の言うことは聞けないと言ったら?」
男はニヤリと笑って言う。
最初の火を噴きそうな態度ではなく半分冗談まじりに。
それをすぐさま感じ取って、ユンホも微かに口角をあげる。
そして、「では、貴方のゴルフ場へ2メートルの植木をこっそり植えに行きます。」と言った。



意味がよく分からずキョトンとするジノとは対照的にゲラゲラと男の高笑いが部屋中に響く。
そのうち若頭の男も汚れたスーツを払いながら肩を揺らしはじめた。
ユンホの口角も満足げに上がる。
意味が分からずジノだけがきょろきょろする部屋で、気づけば張りつめた空気は緩やかに様相を変えていた。
「お前、よく調べたな。それを当人である俺へ言うとはクソ度胸のある奴だ。」
満足そうに笑った男はドサリと椅子に座りユンホへもソファーへ座るようすすめ、ユンホはそれを和解と受け取りゆっくりと腰かけた。




大したことではない。
ゴルフ場建設や維持にはさまざまな規制があり、場内の特定区域では3メートル以上の樹木を植えてはならないというのもそのひとつだった。
それを“脅しの蛇”は利用し、それも忍び込んだゴルフ場に2メートルほどの木を植え何年も辛抱強く待ったらしい。
それが3メートルを超え、規則違反を確認した時点でゴルフ場を相手に脅しを繰り返し巨額の金を脅し取った“脅しのプロ”をユンホは揶揄ったのだ。



そのくだらないやり取りが男はツボにハマったらしく、いまだに意味が分からず突っ立ったままのジノを置き去りにして男の機嫌は良くなるばかりだ。




「ユンホ。お前の腕っぷしは東神組のような企業ヤクザには勿体ない。俺のところへ来ないか?」
「嫌です。恐喝は好きじゃない。」
「ハハハ、はっきり言う奴だ。俺は色男は好きじゃないが、お前ならいつでも受け入れてやる。俺のために働け。」
「……だから、…っ、」


ユンホがウンザリしかけた頃、組長へと電話が取り次がれた。
来客中だぞ?と忌々しげに吐く男をよそに、若頭の男は神妙な顔つきで首を振る。
そして、「チョンユンホさんもこのままで。」と畏まって言った。



 






 



にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト