HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

【ホミンホ合同企画ミーアゲ(meeting again)】あなたが笑えば~最愛~その後12


































離れを出て母屋とは反対方向へユンソクは歩く。
昨夜降った雨が日の当たらない土壌へ色を濃く残し紫陽花の青を鮮やかに見せていた。
そう言えば出会った頃も紫陽花の季節だったとユンソクは気の遠くなるような過去へ思考をめぐらす。




その頃子役のユンソクがちっぽけな劇団の経営を支えていたのは事実で、だから新しく劇団を買い取ったヤクザものへ対する物怖じしない態度や反発は致し方ないことだった。
初対面の印象が最悪だからかユンソクはガンソクを前にして素直になることができない。
子役は大成しないと言われて傷つかない人間などいるだろうか。
それだけじゃない、会うたび口煩く注文をつけてくるガンソクがユンソクは大嫌いだったのだ。



最初の頃は無視を決めこんでいた。
何を言われても右から左。
そうすれば年の割に冷めた人間だと噂される男なのだ、そのうち自分へのイジメのような難癖もやむだろう。
そう思っていたユンソクだがそうそう簡単にはいかない。
「もっと真剣にやれ。ちょっと顔が売れてるからって甘えるな。子役での知名度はお前にとってデメリットでしかないぞ。」
たびたび言われるそれにユンソクはうんざりだった。
真剣にやってる。甘えてなんかいない。
痕が付きそうなほどこぶしを握って思いきり睨めば、その時だけガンソクの口元が緩む。
「悔しいか?可愛いだけのペットはいらない。いつまでも綺麗でいたいなら余所をあたれ。」
そう吐き捨て去っていく背中へユンソクは何度思いつく限りの悪態をついたことか。


「人でなしのヤクザ野郎!」
捨て子だったユンソクが旅一座の座長に拾われてから、見た目も良く愛想のいいユンソクは大人達に猫可愛がりされ育ってきた。
演技も踊りも楽器も、すべてを器用に操るユンソクを誰もが誉めた。
そのなかでガンソクは初めてユンソクを貶め厳しく叱咤する大人だったのだ。



「…ユンソク。」
背中を向けたままの低い声にユンソクはビクンと肩を揺らし思いきり出した舌を引っ込めた。
ポキッと音がしたのは何だろうか。
そう思うユンソクの目の前に何かが飛んできて、思わず手に取ったのは紫陽花の花。
「お前にやる。」
「や、やるって、…庭の紫陽花を勝手に折ったくせに、…っ!」
ユンソクは真っ赤になって怒るが、ガンソクはまったく動じない。
それどころかニヤリと笑みを浮かべ、
「お前は紫陽花になれ。」などと意味の分からないことを呟いて行ってしまった。





それからいつしかガンソクの暴言のなかに優しさの欠片を見つけ、ユンソクの意識は次第に変化していった。
認めてしまえば確かに甘えていたのかもしれない。
切羽詰まった真剣さもなかった。
仲良くとは到底いかないがユンソクはガンソクの存在を認め知らず頼るようになっていたし、ガンソクは普段どれほど忙しくても必ずユンソクの元へ来て口煩くダメ出しをするほどになっていた。


「あの時の紫陽花、…あれってどういう意味?」
知り合って一年が経った頃、ふいにユンソクは思い出して聞いてみた。
「ん?…さあな。」
寝ていると思っていたガンソクが普通に答えるからユンソクは驚き、そして眸を伏せたまま仰向けに寝転がるガンソクの頬をむにっとつねる。
「紫陽花になれって意味がわかんない。花言葉を調べたら、“冷淡”とか“移り気”とか、…それって全部社長のことだし。」
ふっと笑ったガンソクが、忘れた。と素っ気なく言うのにユンソクはつんと胸が痛くなる。
ここ最近、そうなのだ。
傲慢で強引な態度のガンソクを最初は敬遠していた劇団員たちもそのうちガンソクの実力を認め信頼するようになってきた。
それに伴い流れてきた噂はユンソクを驚愕させるものだった。
若くして子供がいると聞いていた。
だから普通に結婚して妻子がいるものだと。
それがどうもガンソクは男を愛する種類の人間で子供をもうける為だけに婚姻し既に別れているというのだ。
そして頻繁に流れてくるガンソクとタレントの噂。
ガンソクは普通に立っていてもタレントと見まごうほど端整な容姿で、ヤクザとは思えないほどスマートな身のこなし、決して自ら暴力を振るうこともなく豊潤な資金力にものを言わせ気前もいい。
これでモテないわけがない。
引く手数多のガンソクがその日の気分で周りのタレントを食っていくのを、ユンソクはいつも遠巻きに見ていた。




「あまり節操なく手を出してるとそのうち痛い目見ますよ。」
ポツリとユンソクは言う。
その日も篠笛を聴かせろと屋上まで無理やり連れてこられた。
篠笛を吹くのは自分だけじゃない、劇団あがりのタレントなら全員吹けるのだ。
それなのにガンソクはユンソクの篠笛だけを求め、強引に引っ張ってくるくせに一切手を出そうとはしない。
そういうことなのだ。
ユンソクはガンソクにとって性の対象にはなり得ない。
つんとまたユンソクの胸が鳴る。
それが何なのか、ユンソクにはまだわからない。




「抱いてくれと言ってくるから抱いてやってる。俺から手を出してるわけじゃない。」
「──そう。僕もそれくらい適当に遊べたら演技に深みが増すだろうって、…っ、痛ッ、」
つい先程まで寝転んでいたガンソクが急に起き上がりユンソクの手首をつかむからユンソクは慌てて腕を振り払う。
だがその手はビクともせず、またユンソクの胸が鳴る。
こんなのはおかしい、そう思うのに止められない。
おかしい、嫌だ、離せ、──ぐるぐると回る言葉を口に出すことができず。


「適当に遊ぶな!紫陽花はそんな意味じゃない。」
たった今紫陽花の意味を忘れたと言った人がそんなことを言ってくる。
ユンソクは首から徐々に火照るのを感じていた。
「じゃ、じゃあ、…何なの?」
震える声で聞いた小さな問いかけはドサリと再び寝転んだガンソクによってかき消される。
「せっかく寝てたのに邪魔するな。昨夜はほとんど寝てないんだ。もう一曲吹けよ。」 
そう言ってまたガンソクは眸を閉じ、頭の角度を変える。
その拍子に見えてしまった鎖骨あたりで鬱血した痕の意味を、ユンソクは考えないように首を振った。



「……あと一曲だけだよ、…」



それでもやはり言われるがまま奏でてしまうのだ。















「ユンソク。」


あれから紫陽花の季節になるとなぜか思いだす人。
そして最後まで教えてくれなかった紫陽花へ込めた意味。



つい紫陽花の前で足を止めてしまった。
背後から聞こえる声にユンソクは振り向くかどうか迷う。
自分のしたいことがわからないのだ。
なぜいつまでもユンホの好意に甘え此処へとどまっているのか。
なぜガンソクが離れにやってきた日だけ篠笛を奏でてしまうのか。
それに対してなんの反応もないのに、なぜ自分は。




ガンソクが芸能事務所から手を引きユンソクを料亭へ呼び出し会えずじまいだったあの日から、すぐにガンソクは誰かにユンホを宿らせた。
そして10年後にはハイルまで。
ユンソクが仕方なく監督に抱かれ、その後もだらだらと続いた関係を正当化するつもりはない。
自分は女性を愛せないのかと試したこともある。
けれど、体の深く奥底で何かが違うと声がする。


再び、二度と交わることがないと思っていたガンソクとの関係。
果てしなく記憶の彼方であろうガンソクとの触れ合いを、どうして自分はいつまでも忘れられないのだろうか。





「 ユンソク。チャンミンがせっかく用意してくれた席だ。…戻ろう。」
穏やかなガンソクの言い様にユンソクは時の流れを感じていた。
昔はあれほど尖っていたのに年を重ねてまるくなったものだと思う。
「相変わらず節操なしですね。息子へ譲ったチャンミンに手を出そうなんて。」
ユンソクは脳裏に焼きついた先程の光景を追い払いたくて軽く頭を振るが、それはなかなか上手くいかない。
ユンソクから見てもチャンミンは可愛いと思う。
容姿もさることながらユンホへ一途なところや健気に頑張るところ、どこか天然なところも愛嬌があると思う。
「冗談だ。どれほど欲してもチャンミンが手に入らないのは知ってるからな。」
ガンソクの一語一句がするどい刃先でユンソクの胸を抉る。
「…どれほど欲しても、…ですか、…」
ユンソクは今すぐ逃げ出したい衝動にかられていた。
ユンホとの甘い生活に完全に邪魔者の自分を疎むこともせず、自分を敬い懐くチャンミンに対して醜い感情を持ってしまう自分が許せなかった。




「だがチャンミンを奪うことはユンホとチャンミン、両方を失うことだと気づいたからな。仕方あるまい。」
「…そうですか。」
「それにチャンミンが言うには、俺の本気は別のところにあると、…」



「っ、…え?」
思わず振り返ったユンソクと一瞬だけ視線を合わせ、すぐにガンソクは顔をそらしてしまう。
「 …いや、なんでもない。」
それだけ言って体を翻し、さっさと離れに向かって歩き出した。
「あ、あの、…社長?」
その背中がなぜかユンソクには照れているように見えて思わずあとを追ってしまう。



「っ、うるさい。篠笛を手元に置いておけよ。久しぶりなんだ、たくさん聴かせろ。」


ガンソクが乱暴に吐いたセリフにユンソクは小さく笑った。


そして、──はい。と少し浮かれた調子で言ってしまい、慌てて口元を手で覆うのだった。












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