HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

Baby don't cry2

































「僕は、チョンソンミ。じゃあ、君は君の作ったドーナツで世界中の人を幸せにする自信があるの?」


そう言ったのは“好印象”のほう。
でもそれが嫌味っぽくなくて優しげな柔らかいトーンの声で、僕の好印象ポイントがさらに上がる。


「はい。もちろん!」
「 ふふ、威勢がいいなぁ。僕もドーナツは好きだよ。今度はぜひ君のドーナツを食べに行こう。」
「あ、ありがとうございます!」


ああ、なんていい人なんだ。
この人が社長だったらどんなにいいか。
でも、残念ながら社長の名前はそんな名前じゃなかった。
ってことは、ふんと鼻で笑った“ちょっと苦手”が“結構苦手”にランクダウンしたこの男が社長なのだろうか。



「甘いな、ソンミ。それにコイツの店はもう無くなるんだ、残念だったな。」
素っ気なく言い放ったソイツがやはり社長かと、残念でならないのは僕の方だ。
「あの、その件でお話を聞いていただきたいのですが。」
前のめりに足を踏みだした僕をまあまあと宥めソファーへ座るよう勧めてくれたのはソンミさん。
「大丈夫。まだ時間はあるから落ち着いてゆっくり話しなさい。」
この人は初対面のはずなのに、なぜこれほど僕へ安心感を与えるのだろう。
「ありがとうございます。」と丁寧にお辞儀をして店で鍛えたとびっきりの笑顔で応えれば。
「おい、社長のチョンユンホだ。ソイツは俺の右腕だが決定権は俺にある。無駄な営業スマイルはよせ。」
そう吐き捨てるように言ってきた、結構どころかかなり苦手な男がやっぱり社長なのかとげんなりする。



それでも僕は愛するショップのため、真摯に誠実にそして熱意を込めて語ったつもりだ。
ほとんどがショッピングモールでチェーン展開するなか、温かみのある昔ながらのショップがとても貴重だということ。
駅の利用客は減ったものの一杯飲み屋ばかりだからか、早朝から常連客が珈琲を求めて賑わうこと。
セルフ式のショーケースにはない対面式ショーケースのぬくもり。



早朝には出勤前の会社員が。
日中は子連れの若い主婦や老夫婦が。
夕方になると近隣の学生や園児にせがまれた母親。
夜は図書館代わりに毎晩通う学生もいる。
僕はいかに広い客層から愛され地域に根づいた無くてはならない店かを熱弁した。





───が、



くっ、と今、聞こえたような。
僕の熱弁に感動しての“くっ”ではない。
そう、嘲笑としか思えないそれは当然チョンユンホの口から漏れたものだ。


「っ、…なんですか!」
ソファーの肘掛けに寄りかかり、軽く口元をおさえる手が水仕事の経験などないのだろうと簡単に想像できるくらいキレイで。

 
「──めでたいな、お前。」
「え?」 
整いすぎる切れ長の眸は、こういう場面になると驚くほど冷たく感じる。
「勝手に不治の病だと思いこんでる会長の命令でドーナツなんてもんを作る羽目になったが、ボランティアでドーナツショップを買い取ったつもりはない。」
低くゆっくりと話す声はハスキーで、僕の捲し立てるような熱弁よりも余程迫力がある気がした。
「ビジネスは利益をあげてこそだろう?シムチャンミンって言ったな、お前はあの店がどれ程他の店の利益を食ってるか、知らないとは言わせないぞ。」
「…それは、」
「駅前で維持費が高いうえに駐車場がないから客数が伸びない。ドーナツ屋でドーナツが売れなければ意味がないだろう?近隣住民の憩いの場にしたいだけなら他を探せ。」
「っ、な、…っ!」


何も言い返せないのが悔しい。
そうなんだ。
ここ数年、ほぼ赤字経営なのは何よりも僕の頭を痛めてることで。
ショッピングモールのような集客数は望めず、大量買いをする客もいない。
ほとんどの客がドーナツ2,3個とドリンクで数時間過ごしていく。
数字だけ見れば会社の経営を圧迫している劣悪店舗かもしれない。
でも、だからといって簡単に切り捨ててしまっていいものか。



「僕の店にはドーナツショップの原点があります。機械的に大量のドーナツを売るだけじゃない癒しの空間です。僕はそこでドーナツだけじゃない、“幸せ”を売ってるんです。無駄な経費の見直しや売上向上に努力しますから、…だから今すぐ潰すなんて言わないでください。」
喉元からせりあがる思いを奥歯を噛みしめ耐えて、苦手とか関係なく店の命運を握る人へ頭を下げる。
油断したら泣けてしまいそうで、でも店長たるものそんなんじゃ駄目だと必死で堪えた。





長い長い沈黙が続く。
すぐに一蹴されると思ったのに、チョンユンホは真剣な表情で僕を見ていた。
僕も、口先だけじゃない思いを伝えるように目の前の人へ目線を向ける。


切れ長の鋭い眸はよく見ればアーモンド型で、黒目がちのそこは深く、すいこまれてしまいそうだ。
なぜかむくむくと負けん気がわいて、お互い先に視線を外したら負けのような様相を呈してきた。
大人しく見られがちな僕だけれど、実は人一倍負けず嫌いだとは誰も知らない。
それに、このチョンユンホという男も相当負けず嫌いなようで意地でも目線をそらそうとしないのだ。



この妙に整った男前が夢にまで出てきそう、…そう思った矢先、


「社長、お電話です。」


先程の美人の呼びかけにふとそちらへ目線を向けてしまったチョンユンホ。
勝った!と、つい顔を綻ばせた僕もなんだけど、忌々しげに舌打ちをする男はもはや社長っぽくもなんでもなくただの子供のようだった。





 



「チャンミン君、君は不思議な人だね。」
そう言ったのはソンミさん。
チョンユンホが電話で席を外してる間、ニコニコと僕を見る目が気味悪いくらいだ。
「あ、いえ。しがないドーナツショップ店員ですから、」
誉め言葉とは到底とれないが、取りあえず謙遜しておく。
くくくっと更に肩を震わせ笑うのはやめてほしい。
僕は今、人生を左右するほどの話し合いにのぞんでいるのに、この人ときたら茶飲み友達に話すような態度なんだ。
「あのチョンユンホが一瞬だけど素を見せた。しかも初対面でだ。君は自慢していいくらいだぞ。」
「は?」
意味がわかんない。
別にチョンユンホの素なんて見たくない。
見たいのは閉店取消しの契約書だけだ。



「ふっ、…面白くなりそうだな?」
「 はい?」
不思議なのはソンミさん、貴方です。と言ってやりたいが、それは勢いよく開いたドアの音に打ち消された。
その先に立っていたのは勿論この部屋の主で。




「何をしている?」
そう怪訝な顔で僕とソンミさんを見比べたあと、


「──いいだろう。条件を話し合おうか。」 


不機嫌極まりない様子で宣った。











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