HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

Baby don't cry4










     











 










「あぁぁ、…また目分量で入れたでしょ、…」
「んなわけ、あるか。ちゃんと計量したぞ。」
「だったらこんなにペッチャンコのドーナツにはなりません!」


正直、モッチリングだけであればそう時間をかけず作れるようになると思っていた。


「あー、計量器がゼロ設定になってませんってば。」
「あー、…」


…が、どうやら僕はこの人を甘く見ていたらしい。






超難関大学を卒業し、留学経験まであるとか。
頭がキレて勘も良く、対人関係もそつなくこなすらしいとか。
一族を仕切る会長が変わり者の息子ではなく孫兄弟へそれぞれ会社を継がせた為、若くしてトップにならざる得なかった事情とか。


望んでもないのに噂話は嫌でも聞こえてくる。
それだけ聞けば完璧な男だろう。
実際、閉店間際にやってくるこの人会いたさにアルバイトのラスト希望が激増したし。
なぜか閉店まで粘る客も増えた。
さながら王子様かアイドルか。
初対面で僕へ向けたあの皮肉っぽい傲慢な態度はどこへやら、バイトの子や常連客への紳士的な態度に僕としては呆れるばかりなのに。




またしても僕にしか見せない残念すぎるほどの不器用さ、生活能力の無さ。
どうして卵ひとつマトモに割れないんだ?
おいおい、ホイッパーはもっと高速で回してよ。



「…ユノさん。卵、僕が割りましょうか?」
「うるさい。お前は手出しするなと言ってるだろ。」
でもさ、あんたが両手でおそるおそる1個の卵を割ってる間に僕は片手で10個の卵を割れる。
その分僕の睡眠時間がとれるんだけど?
「モッチリングは最低仕込み量で50個分なんです。それを2度失敗したら2倍。経費削減しなきゃならないのに原材料のロスが多すぎます。」
チラッとチョンユンホが僕を見る。
どうだ、何も言い返せないだろう?と得意気の僕へ小さく口元を歪めながら。
「誰もタダで材料を使うとは言ってない。モッチリング100個分の請求書をきってこい。原価なんてセコイことは言わないからな、売価できっちり払ってやるよ。」


このっ、金持ちめ!
ニヤリと笑った口元がイヤミったらしいんだよ。
「この店の平日モッチリング販売個数が平均で120個だから有り難いだろう?」
「ハイハイ、そうですね。大変ありがとうございます。」
「ちっ、可愛くないな。」
「可愛くなくて結構です。」
オーナーだから仕方ないとわかっているけど、店の売上げから経費や減価償却まで勝手に調べたこの男に僕はどうしたって面白くない。
せめて店長の僕に断りをいれるべきじゃない?
お前は信用できないと言われてるようで、そんな奴に可愛い態度なんてとれないよ。






週に3回ほど現れるチョンユンホへのドーナツ指導もこれで6回目だった。
そろそろそれなりのモッチリングが出来上がってもいい頃なのにいっこうにドーナツとよべるものが出来ない。 
細かい売上げの推移は読めてもグラム単位でミックス粉を量ることすら出来ないとは。





チョンユンホは予想外に手間取るドーナツ作りに。
僕はそんなチョンユンホに。
お互い少しづつ苛立ちやストレスをためていたのだと思う。










コンコンと厨房のドアが鳴って、ひょっこり顔を出したのは副店長のソジュン。


「チャンミナ?ポーター作業終わったから俺はそろそろ帰るな。戸締まり頼んだぞ。」
「あー、うん。僕の方はもう少しかかるから、」
僕がそう言えばソジュンは労うように苦笑いをしつつ、チョンユンホへ「オーナー、お先に失礼します。」とバカ丁寧にお辞儀をした。
「ああ、お疲れさま。」
そう返したチョンユンホもこんなヘンテコなドーナツを作ったとは思えないオーナー然とした威厳のある微笑みを浮かべる。



ソジュンは僕と同じ年で数字にはめっぽう弱いが気のいい奴だ。
僕と同じくドーナツを愛し、店に誇りを持っている。
そして何より酒が好きでゲーム好きという僕と似た者同士だからプライベートでも親友といえる存在だった。
「じゃあチャンミナ、待ってるからな。」
「ああ、お疲れ。」
そして目配せしながら帰っていくソジュンのマンションで僕は時々お世話になっている。
時々というのは今夜のような、営業後ドーナツ作りのトレーニングをして翌朝4時出勤の日だ。



店から5分だというチョンユンホのマンションでお世話になるくらいなら20分かかってもソジュンのマンションがいい。
困ってる僕を見かねて声を掛けてくれたソジュンが神様に見えたくらいだ。
ふんと鼻をならし感じがいいとは言い難いチョンユンホを無視して、ああ、そういえばとソジュンへ声を掛けた。
「ソジュン、季節限定商品の終売が近いけど今日大量に納品があった。そろそろ発注の調整をしてくれないかな。」
発注を任せているソジュンには結構こういうことが多い。
季節限定商品などは終売日を過ぎると店頭に出すことが出来ないから過剰な発注はすぐに無駄な在庫になってしまうのだ。
「あーっ、…そうだった。悪いな、気をつけるよ。」
「ん、…頼むよ。」
それほど気にしてる様子もなく帰っていったソジュンの後ろ姿を眺めながら僕は小さくため息を漏らした。




すると、聞こえてきた呆れたような無遠慮すぎるため息、それはチョンユンホのもので。



「お前さ、甘いだろ。毎回限定商品の使えない在庫を抱かえて、それがどれほど無駄な経費に繋がっているか。」
「…分かってます。だから注意したじゃないですか。」
そんなこと分かってると言いたげに僕は背をむける。
細かく計算して発注の調整をすることが苦手なソジュンだけど、決していい加減な気持ちで仕事をしてるわけじゃない。
丁寧な接客と細やかな気配りが出来るいい奴なんだ。
ただいずれ店長になるのを見据え、発注は副店長の仕事というのが会社の方針で。
それが苦手のソジュンへ僕は丁寧に教えていかなきゃならないと思っていたのに。



「はっ、さっきの様子で反省したようには見えないな。お前の言い方が悪い。」
「な、っなにを、…わかったような言い方して、…」
ボウルを洗おうと掴んだスポンジからボタボタ泡を落として。
よく知りもしないくせに勝手なことを言う男にぎゅうっと拳をにぎる。
「無駄になる限定商品の在庫だけじゃない。毎回来るたびにバックエリアが原材料であふれかえってるだろうが。所定の場所に収まらず床に積まれたものまで。これがいいと思うのか?」
そんなこと当然わかってる。
少しずつ注意をしていても直らないそれをはっきり指摘され、僕は悔しくてほっといてくれよとしか思えない。



「…そんなこと言われなくても分かってます。」


「分かってんならやらせろよ!仲良しこよしもいいが、これは仕事だ。馴れ合いはよせ。」



真っ直ぐに僕の目を見て、
叩きつけるような言葉が胸に刺さる。
人というのは図星をつかれると無性に腹が立つもので、僕も一瞬で頭に血がのぼったらしい。



「この店の店長は僕です!無用な口出しはしないでくださいっ!」



卵の殻がべっとりついたホイッパーをシンクへ投げ入れ、勢いのままキッチン手袋を脱ぎ捨て厨房を飛び出してしまった。



フライするばかりのモッチリングのドーとか、シンクに山積みの洗いものとか、戸締りとか。
それこそ店長失格だと思うのにどうしようもない。



これ以上チョンユンホと同じ空間にいることが耐えられないほど僕のなかで嫌悪感が渦巻いて。



「おいっ!チャンミン!」



気安く僕の名前を呼ぶなよ!と思ってしまうくらい相容れないのだ、チョンユンホとは。
きっと、これからもずっと。



















にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト