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HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

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Baby don't cry5


































沸騰した頭で車に飛び乗ってから後悔が波のように押し寄せてきた。
いくら腹が立ったと言っても店の施錠もせず飛び出してくるなんて。


ボーナスで買った中古のミニバンを店の裏手にある銀行の第2駐車場へ乗り入れた。
ここから2階建店舗の2階部分がよく見える。
その2階に厨房と倉庫、休憩所があり、現在煌々と明かりがともっているのはチョンユンホがまだ中にいるからだろう。
それとも明かりをつけたままで怒りにまかせ帰ってしまっただろうか。
とにかく。 
店の鍵を持っているのは僕で、でも奴の顔は見たくない。
奴が帰るのをこっそり確認してから施錠しに戻るか、もう速攻で帰ってしまったのであれば暫く待って様子をうかがいに行こうと思っていた。




はぁ、と大きく息をつく。
まだ秋だというのに時おり吹く風が冷たく頬を刺す。
そのおかげかほんの少しだけ冷静になって、さきほどのチョンユンホとのやりとりを反芻してみた。



言ってることは、…間違っていない。
確かに僕は甘いかもしれない。
女手ひとつで育ててくれた母を幼い頃に亡くし教会に隣接した施設で育ったからか、僕ははっきりと主張することが苦手だった。
だって仕方ないだろう?
どれほど神父様やシスターが優しく、施設であたたかく育てられたとしても。
父親を知らない僕が家族とよべるのは亡くなった母だけで、常にまわりに遠慮して生きてきたんだ。
他人を寄せ集めたアソコでは“協調性”がなにより大切だった。



それを協調性の欠片もない唯我独尊男が勝手に僕を引っかきまわす。
ホームを持たない僕が初めてホームとよべる居場所を見つけた。
恩人である社長とドーナツを愛する仕事仲間と。
忙しくも充実した日々をカネの力で踏み荒らしてきた男に対し良い感情を持てなんて無理だ。



傲慢で、皮肉屋で、ずけずけと物を言う。
そのくせ自分ちへ簡単に入れようとしたり名前を呼べと言ったり。
それなのにすげなく断った僕へふんと鼻をならしただけとか。
つかみどころのない人間は苦手だ。
ついでに言うと、生活能力のない不器用な男も苦手だ。


僕はチョンユンホが、苦手なのだ。






どれほど時間が経っただろう。
店舗の2階は変わらず明かりが消えることなく、きっと僕が車へ向かってる間に帰ってしまったのだと結論づけた。
でも後もう少し。
そしたら店へ戻ってフライ前のドーを片付け、明日の、いやもう今日か、…とにかく遅らせるわけにいかない製造の準備をしなくちゃいけない。
寝る暇なんてないじゃないかと思えば更に憂鬱になる。



そんなことを考えただけでどっと疲れが押し寄せ急な睡魔に襲われた。
そういえば今日はクレーム対応に忙しかったのだ。
買ったクリームドーナツにクリームが入ってなかったというクレームは完全にこちらのミスで、バイトの子がひとつだけ注入し忘れたものを店頭でも気づかず売ってしまった。
クレーム対応こそ店長の仕事だから誠心誠意対応する。
せっかく楽しみに買ったドーナツにクリームが入ってないのだ、その怒りはどれほどかと申し訳なくなるが、お客様が良い人でよかった。
ただ良い人なのはよかったけれど新しいクリームドーナツを届けた先が結構遠く、その往復と抜けた仕事の穴埋めでかなり労力を使ったのだ。
この初歩的なミスを起こさない工夫はないだろうかと考えるうちについウトウトしてしまったらしい。







ハッと気づいたときには小一時間ほど過ぎていて焦る。
焦りすぎてフロントドアに頭を打ちつけてしまった。
「あー、っもう、…くそっ!」
じんじん痛む額を押さえながら舌打ちして車外へ出る。
時計を見れば深夜2時。
変わらず店舗の明かりは点灯したままだが、さすがに店内は空っぽだろう。



裏口を入ると目の前に階段と脇に木製のドアがある。
木製のドアを開ければ右手に洗面所があって、真っ直ぐ通路を挟んでテーブル席が並ぶ。
そのまた向こうはカウンター席と2人席がいくつか。
そして奥には対面式ショーケース。
テーブルもイスもカウンターも、すべてが木製のカントリー調の店内は大きなガラス窓から柔らかな陽射しが降りそそぎ、ほっと安らげるようなあたたかい雰囲気の店内だった。


目の前の階段は立地条件上いやに急勾配になっているのがつらい。
2階が倉庫のため納品した原材料を運ぶだけでも大仕事なのだ。
僕は今、その急な階段をゆっくりとのぼっていた。
何の物音もしない。
やはりチョンユンホはさっさと帰ってしまったのだ。
階段をのぼりきって正面が倉庫兼休憩スペースで左手が厨房だった。



「…あ、」
思わず声が漏れたのはフライ前のドーがしっかりフライされ、それがやっぱり失敗作だったことではなく。 
フライヤーのスイッチをきちんとオフにしてシンクの洗い物もすっかり片付けられていたことでもない。


「ユ、…ユノさん?」
仕上げ用ベンチに凭れるようにうつらうつらと寝入るその人を見つけたからだった。





休憩スペースから持ち込んだ丸イスに座りベンチに寄り掛かる人へ静かに近づく。
不安定な格好なのにぐっすり寝入ってる人になんだか笑えた。
ピクリと睫毛が震える。
キツくて冷たいと思っていた眸が実は案外長い睫毛に覆われていたことを初めて知った。
これは最初から知っていた見惚れるほど整った鼻梁と芸術的な顎のライン。
つい見つめてしまうのは寝入ったチョンユンホがあまりに無防備だから。



一瞬寄った眉根がすぐさまなだらかになり、緩く開いた口の可愛さを起きてるチョンユンホへ見せてやりたいよ。
色が白くつるっとした肌質だからか、穏やかな表情のチョンユンホはとても若く、そして美しかった。





しばらく見惚れ、
なに考えてるんだよ!とぶるっと頭を振る。
男が男に“美しい”は有り得ない。
どれほどいい男だろうが、起きてしまえば傲慢で指図ばかりする男だ。
そして細かい数字を羅列したデータばかりを言ってくる頭でっかちでそのくせドーナツひとつマトモに作れない男なんだ。




でも、…と思う。


あんなデカイ会社の社長さまが理由があるにしろ、よくマメにこんなところへ通ってくるよな。


そうソジュンが言っていた。
確かにそうだ。
忙しさで言えば僕以上かもしれない。


さっさと潰す予定だった店を残しただけじゃなく、口煩く言ってくるのもすべて店のためになることで。
細かく調べあげたデータだって簡単にできることじゃない。


どうしてそこまでモッチリングにこだわるのか知らないけれど、この純粋な寝顔を見ていたらもう少し頑張ろうと思えてくるから不思議だ。
ついさっきまで一緒の空間にいることさえ我慢できなかったのに。






よく考えたらこの店はチョンユンホのもので、それを不用心に鍵も掛けず帰ることなどできなかっただろうと思う。
それに早朝4時には僕が来ることを知ってるし。
でもそれでも、
向こう部屋から丸イスを運ぶチョンユンホを想像して胸がチクンと鳴った。
無意識に伸びた手が誰よりも小さな頭に触れる。
キレイにセットされた髪は線が細く、なぜか洗いざらしのサラサラを想像して不思議な気持ちになった。




起きたらきっと、勝手に飛び出た僕へ怒鳴り散らすかイヤミのひとつでも言うか、…できれば永遠に寝ていてほしいくらいだ。



それでも今はこの安らかな寝顔の隣で一時休戦とばかりに寄り添い、少しだけ僕もまぶたを閉じた。












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