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HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

Baby don't cry10



































しばらく接待が続き夜に時間が作れないというので、モッチリング修行も当分休みになってしまった。
ドーナツ作りを侮ってはいけない。
まだやっとモッチリングもどきが出来るかどうかの技術でしばらくの休みは厳しい。
きっと1から教え直しだろう。



せっかくハードな生活にも慣れてきたのに。
一気に教えて目的を達成し、営業後にドーナツトレーニングなんて馬鹿げた仕事をはやく終わらせたかった。
そして傲慢で口煩い人からさっさと解放され、副店長のソジュンと力を合わせて店舗存続の為業績アップに励むんだ。



「うん、そうだよ。こんな中途半端じゃお店に集中できない。もうあのモッチリングもどきで合格ってことにしてもらおう。」
形はイビツだが計量はしっかり出来るようになった。 
同じ原材料を使っているのだ、味は保証できる。
「そうだ、そうしよう!ソンミさんに頼んで1時間だけでもユノさんを借りよう。さっさと作って完成させちゃおう。」
名案とばかりにスマホを手に取る。
番号は知らされていたけど、なぜか僕はユノさんではなくソンミさんにばかり連絡をとっていた。
好印象のソンミさんについ電話してしまうのは仕方ない、それが人間ってものだ。



半分ほどタップしたところで1階のホールから呼び出しブザーが鳴った。
ちょうど昼を過ぎて製造が一段落し、片付けまでバイトさんの仕上げを待っていたところだからすんなりと呼び出しに応え階段を降りていく。
一気に客が並んだりトラブルがあるとブザーで応援を要請されるから特にめずらしいことでもないのだ。



ホールを覗けばそれほど混んでる様子はなく。
レジの前でバイトの女の子2人がいやにテンション高く接客をしていた。
「どうした?」
ドリンクを用意していた子へ声を掛ける。
いつもの接客風景なのに、なぜか2人とも妙に浮き足立っていた。
「あ、店長。あの、駐車場へ、」
「え?駐車場?」
「はい、私、噂でしか聞いたことなくて。初めてお会いしちゃいました!///」
「…?」
言ってることがまるでわからない。
駐車場とか噂とか、なんの話だろう。
「えっと、落ち着いて。誰か来たの?」
「はい!店の前に立派な車が横付けされて、噂通りでビックリしちゃって。店長いるかって聞かれて、いますって答えたんです。そしたら車を停めてくるって、…///」
ん~、…やっぱりよくわからない。



「あのさ、…それって、」
言いかけた僕の言葉を遮るようにキャッ!と跳ねた女の子達とその甲高い声に慌ててシィッ!と人差し指を立てる僕。
そして僕はついさっきまで考えていた内容とはまるで正反対に動く心音に呆れながら、でも止められず。
「あ、…」
道路を挟んだ駅前ロータリーの人混みを縫うように歩くひときわ目立つ人から目が離せなかった。
「店長!あの人、…新しいオーナーですよね?」
「素敵~!あんなに若い方だったんだぁ。」
ショーケース前に客がいなくてよかった、平日の昼間にはめずらしいスーツ姿の8等身を見つめていたのは僕だけではないから。



信号のない横断歩道で左右を確認する姿さえキマってるからいやになる。
さっさと解放されたいと思っていたはずなのに、今、胸の高鳴りを言葉にすればきっととんでもないことを言ってしまいそうで。
ほんの少し息を弾ませ自動ドアを抜けた人へ、“いらっしゃいませ”すら言えない。







夜のトレーニングは休止中でソンミさんと来る店舗チェックも最近なくて、久しぶりに会ったその人はなぜかとても急いでるように見えた。
仕事の合間に寄ったのだろうか。
でもたったひとりで?
忘れ物にしては最後に来た日から間が開きすぎている。
ぐるぐる回る思考をなにひとつ言葉にできず、サービス業とは思えない愛想のなさで僕はただ突っ立ったままで。
「チャンミナ。」
バイトの子達の刺すような視線には目もくれず真っ直ぐに僕をよぶ人へ、店長と呼べと頭の片隅では思うけど。
「…ユノさん。」
僕から出たのもオーナーではなく、その人の名前だった。










「2週間ぶりの休みだってのに結局朝から会議が入って、やっとこの時間に解放された。」
「はあ、…」
そして今ユノさんはせっかくの半休になぜかドーナツショップを訪れて2階の休憩スペースにどっかりと腰をおろしていた。



「アメリカーノが飲みたい。」
「んなもの、ありません。」
そういうのはコーヒー専門店へ行ってくれと軽くあしらい、でもブレンドくらいは出してやろうか。
「…ドーナツ、食べますか?」
「ん、…オールドドーナツがいいな。口のなかでとろっと蕩けるやつ。」
「アナタ、わざと言ってるでしょ。あれはフライ後1分以内の特別なんです。」
ふんと鼻息あらく言ってやれば、ユノさんがふっと笑う。
蕩けるオールドドーナツは無理だけど、チョコくらいはつけてあげます。と恩着せがましく言って用意したものをユノさんは美味しそうに口にした。



この人は何のために来たんだろう。
せっかくだし丁度いいじゃないかとキッチンエプロンやキッチン帽を渡したらそういう気分じゃないと断られた。
じゃあ、どういう気分なんだよ?
モッチリングのトレーニング以外でユノさんがここへ来る理由なんてないのに。
「最近付き合いが続いて、…まぁ、愛想振りまくのに疲れてる。」
コーヒーカップに唇を寄せてそう呟いたユノさんがそういえば少しだけ疲れて見える。
「お前はいつもニコニコ接客で本当にここが好きなんだな。ソジュンに聞いたけど、常連のおばさま達のアイドルなんだって?」
にっと笑ったユノさんはやっぱり意地悪げで、もしかして溜まったストレスを僕で解消しようって魂胆じゃないだろうな?



「僕はドーナツと一緒に幸せも売ってますから。」
もう何度も言ってるそれをもう一度。
「カッコいい~ってキャーキャー言われる幸せ?」
なぜかムッとするユノさんだが、バカにされたみたいでムッとしたいのはこっちの方だ。
「それに夕方来る女子高生や女子大生にも騒がれてるらしいな。」
しつこい。
確かにアイドル扱いされてるかもしれないが、それはそれで彼女達の生活に多少の潤いを与えているのなら僕としてはやぶさかではない。
それに断じて客へ手を出したことはない。
男女問わずバイトへ言い聞かせてることだが、身なりを整え最高の笑顔で迎えることはドーナツをより引き立たせるためのものなんだ。
あくまで主役はドーナツで、僕らは脇役。
それも最高のホスト役になるのが僕の望みで夢なんだ。



ということを、また熱く目の前の人へ語ってしまった。
どちらかと言うと人見知りでそう多くを語らない僕だけど、どうやらドーナツに関しては別のようだ。
それにユノさんが痛いくらいの視線を向けてくるから適当には答えられず、そのうち言い足りないほどの言葉が湧き出てくる。
不思議な人だ、ユノさんは。
傲慢で自分の意見を押しつけてくるくせに、僕が話す余白もしっかり残してくれる。
それが採用されることはほぼない、なんたって唯我独尊男だから。
けれど、不思議とこの人には何でも話せてしまう。
今まで周りに遠慮して話せなかったことが、なぜか思うままに話せてしまうんだ、この人には。




「そうか、…やっぱり面白いな、シム店長は。」
「っ、な!」


「それにお前と話してると疲れない。どうしてだろう、…これもドーナツ効果か?」







僕もだよ、とはどうしたって言えないけど。


第一印象から苦手で、
本来なら一生関わることなんてない人なのに。
例えば疲れたときとか、
何年も住み慣れたはずの部屋でふと寂しくなったときとか、


どうしてかな、──あなたが浮かぶんだ。

















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