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HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

Baby don't cry14


































豪華なエントランスでコンシェルジュさんとも余裕の笑みで挨拶ができるようになった頃、


「チャンミンさん、そろそろ起きてくださいね。社長から帰宅の連絡が入りましたよ。」
「ん~、…ふぁい、」
「ふふ、またシャワー浴びてすぐ寝ちゃったでしょ?頭が鳥の巣になってますよ。」
「ん、…今朝はスタンドミキサーが故障したり、…バタバタで疲れちゃって、」
「それは大変だったわね。特別に大きい方のお肉をあなた用に焼くからはやく起きてくださいな。」


肉っ!と言われて飛び起きる僕は単純だけど、若いんだから仕方ない。
それにここでの肉は普段滅多にお目にかかれない最高級の肉なのだ。
「ヨネさん!もう一回シャワー浴びてきます。」
「はいはい。」
いつの間にか僕は豪華なマンションのゲストルームに備え付けられたシャワールームを気前よく利用するようになっていた。



なぜかユノさんは僕が早朝シフトの時ばかりを選んで指定してくる。
わざとか、偶然か。
ユノさんが自分のパソコンでいつでも見られるように設定した店舗システムにはシフト表も入ってるから知ろうと思えば簡単に知ることができる。
でもそれを僕は聞くことができなかった。
だってなんて聞けばいいんだ?
せっかく渡したカードキーを大いに利用させたい?とか。
必ず用意される夕食をなぜかユノさんと一緒して、5分かけて店へ行きドーナツトレーニングを終え、また5分かけてマンションへ帰ってくる、そして数時間睡眠を取って早朝勤務へむかう僕を満足そうにしてるよね?とか。



そんなこと、恥ずかしくて聞けやしない。
でも確実に、僕とユノさんの距離は縮まっていると思う。



「社長、…ユノさんは昔から弟を欲しがっていたから、きっとチャンミンさんを弟のように思っているのよ。」
いやいや絶対にそれはないと全否定したくなるようなことを言ってくるのはヨネさん。
彼女はもう長いことユノさんの実家に仕えている家政婦さんで、週に何度かここへも通ってくる気のいい女性だ。
今まで外食ばかりのユノさんへ食事の用意などしたことなかったのが、最近僕が来るときに限り頼まれると言う。
「この立派なキッチンがお湯を沸かすためだけに使われるのは勿体ないと思っていたから良かったわ。」
そう嬉しそうに笑うヨネさんは僕のことをどんなふうに聞いているのか。
僕はユノさんをお兄さんっぽいなんてこれっぽっちも思わないけど、ヨネさんがまるで家族のように僕を扱うから僕はそれがなんだか嬉しい。




好き嫌いは駄目よと苦手な椎茸を細かく刻んでくれたり、どうせ一緒だからと僕の洗濯物まで洗ってくれたり。
馬鹿丁寧にお礼を言えば可笑しそうに笑って頭を撫でられる。
それもデカイ僕をわざわざ中腰にさせて優しく頭を梳くんだ。
家族に縁の薄い僕だけど、でもだからかな、人のぬくもりを感じたくて僕はサービス業についているのかもしれない。









「 チャンミナ、旨いか?」


黙々と食べ続ける僕の真ん前で僕の半分も片付いてない皿を前にユノさんが聞いてきた。
食事を用意してすぐヨネさんは帰ってしまう。
おそらく急いで帰ってきたであろうユノさんと食事は二人きりで、…それがなんだか落ち着かない。
だから黙々と食べるか、一方的にドーナツ講義を喋り続けるか、そのどちらかになってしまう僕は本当につまらない男だと自分でも情けなくなるというのに。


「食事といえば接待がらみが多いから、たまにはこういうのも楽しいな。」
などと言ってくるユノさんが少し信じられない。
「楽しい話なんて何もしてないのに?」
無言かドーナツ話のどちらかなんてユノさんにしたらどちらも楽しいとは思えない。
「そうか?食べることに夢中なお前を見るのも楽しいし、意気揚々と話すドーナツ話は気分が晴れる。お前といると疲れが取れるよ。」
「… それでこの豪華な夕食を毎回ご馳走してくれるなんて、ユノさんはおかしな人だ。」
言いながら僕の方が若干大きな肉を口へ放り込む。
肉汁がジュワッと溢れ蕩けるような食感が広がる。


「 うぅーーーっ、旨い!揚げたてオールドドーナツとはまた違う蕩け方ですよね。」
美味しい食事は人を平和にすると思う。
だって今ならユノさんのどんな嫌みも傲慢さも受け入れてしまいそうだ。
「そうか、…それはよかった。」
それなのにユノさんは愉しそうにくくっと喉を鳴らすだけで、その分もっと働けとか結果を出せとか要求してくるだろうと身構えていた僕は肩透かしを食らうことになるのだ。




だからと言ってこの現状に僕はただ甘えてるだけではない。
「ソジュンが発注のコツをつかんだみたいで、最近驚くほど倉庫がすっきりしました。納品が必要数だけくるから数が少ないし棚がすっきりしてるから片付けもすぐにできるんです。そのおかげでオープン時に並ぶドーナツが増え午前中の売り上げが伸びました。あと驚いたのがそれに伴って客数は増えているのに消耗品の減りが遅くなったんです。」
ユノさんは例えどれほど親しくなっても仕事に関しては容赦ないだろう。
それがわかるから僕も必死だった。
ユノさんの助言で改善したいくつかの事をしっかりと根付かせ結果へ導くのは僕の仕事なのだ。
「人間ってのは過剰にあると無意識で余分に使うものなんだ。適正の在庫しかなければ適正の量を使うことを覚えるんだよ。」
「 …確かに、」
ふむふむと頷く僕へユノさんが可笑しそうに笑う。
「少し前までは俺の言うことにすぐ突っかかってきたけど、どうした?最近素直だな。」
「 べ、…べつにっ!」
ぶっきらぼうに僕はこたえた。
だってさ、ユノさんは気づいてるのだろうか。
細められた眸の優しげな光。
柔らかに緩んだ口元。


───ユノさんこそ、変わったということに。








何度も乗っているユノさんの助手席シートは今日もふかふかで、僕は満腹の腹をさすりながら深くシートへ凭れる。
食器はすべて食洗機へ入れて、テーブルもキッチンもひととおりキレイにしてきた。
よし、帰ったらもう一度シャワーを浴びて寝るばかりだ!と思う僕はなんて環境に適応しやすいのだろう。
これも施設育ちだからだろうか。
それともあのマンションが居心地良すぎるのだろうか。




「ヨネさんはえらくお前を気に入ったらしいな。お前に振る舞いたい料理が順番待ちしてるらしいぞ。」
「もうそれだけはユノさんへ感謝してます!ヨネさんは優しいし料理は上手だし、最高です。」
「くっ、それだけかよ?」
食べ物に釣られたと思われたっていい、それだけヨネさんの料理は美味しいのだ。
あれほど乗り気じゃなかったユノさんちでの仮眠という福利厚生も今では心待ちにするほどで。


「今度はお前の休み前に来い。そのまま泊まればいいから旨い酒を飲ませてやる。」
なんてことを言われたら、本来ユノさんちへ行く目的などすっかり忘れて僕は大きく頷いてしまうのだった。











「さぁ、今回はフライした生地にグレーズをつけてモッチリングを完成させましょう!」



制服に着替えキッチンエプロンにキッチン帽、マスクに手袋の僕はそっくりそのまま同じ格好のユノさんと向き合っていた。
ショップの制服を着ていても、どうしてだろう、この人は店員に見えない。
先ほどまでのスーツ姿が印象強いからだろうか。
何度も見ているキッチンエプロンにみょうに違和感があるのは、この人が本来こんなところでドーナツを作っている立場の人間じゃないとわかっているからだ。
それが最近、ますます僕の胸にもやもやと正体不明の黒い影を落としていた。



「いいですか?時間勝負ですよ!」


が、そんなことに悩んでる場合じゃない。
僕はぶんぶんと頭を振った。
最低仕込み量でスクリーン2枚分のモッチリング生地ができあがる。
その1枚目があと少しでフライし終わるのだ。


グレーズをためた容器の蓋を開けヘラで攪拌し、滑らかになるまで混ぜていく。
フライ後すぐの生地を表面だけ素早くグレーズへ浸さなければならない。 



「あちぃ!」
最初に持ったモッチリングは跳ねるように離れた手により床に落下した。
「あー、何やってんですかっ!」
「これ、すっげ熱いって!」
「当たり前です。揚げたてなんですから!」
「火傷するだろ。」
「キッチン手袋してるし、しませんってば。」
余程熱かったのか、手をぶるんぶるん振ってる人がなかなかモッチリングへ手をのばさない。 
そりゃ200度近い油でフライされてるのだ、熱いに決まってる。
けど、ここで怯んでは美しいモッチリングは作れない。



熱々のモッチリングを潰さないよう加減しながら5本の指でそっと持ち、なみなみと張ったグレーズへぽんと落とすように浸す。
そして素早く持ち上げひっくり返しバットへそっと置いて余分なグレーズをきっていく。
生地が熱ければ熱いほど乾いたときグレーズは透明に光り輝く、てかてかピカピカの美人なモッチリングになるのだ。



それが、、、


「あーあ、…かなり冷めちゃいましたよ。もう最初の生地は練習用にしましょうか。」
「あーあってさ、お前。こんなに熱いなんて聞いてないぞ。」
「だから練習用にしましょうって。どれだけ手の皮が薄いんですか。普段からお湯を沸かすくらいしかキッチンを使わないからですよ。」
「関係ないだろうが。」


ああ、最近にしてはめずらしく嫌な雰囲気になってきた。
この人は本当に負けず嫌いで、僕に腹を立ててるわけじゃない、出来ない自分に腹が立つんだって今の僕ならわかるから。


「大丈夫。最初から上手く出来る人なんていません。生地の持ち方にもコツがあるんです。冷めた生地で練習して、次のモッチリングでもう一度やってみましょう。」
「ん、…わかった。もっと具体的に教えてくれ。」


身体中から伝わる苛立ちを僕はやんわりと宥める。
以前は自棄になってほうりだしていたユノさんも随分落ち着いていて、それは僕たちの間に少なからず信頼関係が芽生えているのだと思えた。








「っもう!潰さないように優しくって言ったじゃないですか!!」
「ちっ、」


結局2度目のモッチリングも熱さには勝てずアッチコッチばらまかれ床がモッチリングだらけだ。
今夜はここで終了だ。
でもコレが上手くいったらそれこそモッチリングは完成し、僕のドーナツトレーニングは終わる。


「そう何度も製造して無駄にされちゃかなわないからまた次回にしましょう。」
そろそろ見えてきた終わりが少し延びたことに安堵する僕がいるのも事実で。
「そうだな、って、おい、手が赤くなってる。やっぱ火傷してるじゃないか。」
ぎゃあぎゃあ言いはじめた人を置いて僕は厨房を出てエプロンをはずす。
トレーニングが無事終わるのは僕が望んでやまなかったことなのに、どうしてこんなに寂しいんだろう。



「おいって、」
僕へ続いて厨房を出てきたユノさんに腕をつかまれた。
できれば、見ないでほしい。
きっと僕はなんとも言えない複雑な顔をしてると思うから。
「…手のひらが赤い時点で落第です。指の腹で優しく触れるように持つんですから。」




「…こういうふうに?」


ユノさんの指が、正確には指の腹が撫でるように触れたそれは、──僕の唇で。


「柔らかさは一緒くらいか?ああ、でもモッチリングのが熱いな、」
「っ、…!///」


かたまった僕の唇をやわやわと何度も往復する指が、それを覗きこむように小首をかしげる目の前の人が、今まで知っているユノさんとは別人のようで。
ほんの少し伏せた眸のラインにさえ見惚れた自分が恐ろしく恥ずかしい。


なんてところを触るんだ!と怒りたいのに、一瞬で真っ白になった頭ではうまく言葉を探せず。


「俺の手よりチャンミンの顔の方が赤い。」
そう言って緩やかに微笑んだ人を僕は恨みがましく睨みつけることしかできなかった。















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