HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

Baby don't cry16


































そうか、テソンはジウのことが好きだったのか。


僕は結構お似合いの2人を頭のなかで並べて意味もなくうなずいていた。
店長にとってショップ内の恋愛は全く無関係ではない。
付き合いはじめの浮かれた時期はミスが多発するし、別れたといっては急にバイトを辞めたりするからだ。 


でもまぁ、テソンとジウなら勤務時間がズレてるから大丈夫だろう、と付き合ってもいないのに別れた時の心配をしてしまう薄情な僕だが実際これまで何度もバイトの恋愛事情には泣かされているのだ。


「店長、テソンさんは全体ミーティングくらいでしかジウと会うこともないし、…好きとか、ないと思いますよ。それよりか、…ん~、…まぁいいですけど、」
はっきりしない物言いで苦笑いを浮かべ帰っていったバイトくんを思いだし首をひねる。
ジウをまだ好きじゃないけど、これから好きになりそうだということか?
それに僕が邪魔だと言うのなら安心してほしい。
僕が店のバイトへ手を出すことは絶対にないのだから。









なんてことを考えていたら、玄関ホールで微かに人の気配がした。
ドクンと波打つ心臓を咳払いでは到底ごまかしきれず、焦って立ち上がるからよろけた拍子に当てた膝が泣きそうなほど痛い。



「ただいま、チャンミン。…どうした、泣きそうな顔して。そんなに腹へったか?」
「~~っ、///」
悠長に言ってくる人に心底腹が立つ。
一体誰のせいでこれほど動揺してると思ってんだ。
それなのにとんだ八つ当たりを受けてる当の本人はなんてことないように口元を緩め奥の部屋へ入っていった。
すぐに出てきたユノさんの手にはファイルがひとつ。
「玄関で待たせてる秘書へこれだけ渡してくるからもう少しだけ待ってな。」
などとまるで僕が待ちわびた犬っころのように言ってくるから大いに反論したくなる。



「あ、…ユノさ、」
秘書と聞いて勝手にソンミさんだと勘違いした僕が悪い。 
ユノさんへ直接電話しろと言われ、でもついクセでタップしたソンミさんの番号を中途半端に切ってしまった。
折り返しあった着信へ出られなかったから、ソンミさんがいるのなら今から謝ってしまおう。
僕の声が聞こえなかったのかユノさんはずんずん進んでしまい、仕方なく僕はなかなか引かない膝の痛みを数回擦ってゆっくりあとを追った。






まず視界にとびこんできたのは、ユノさんの背中。
ほんの少し屈みぎみに左手を真っ白な壁につき、右手は無造作に腰のあたりへ置かれていた。


ユノさん、と、思わず声を掛けそうになり。
でも、掛けなくてよかった。
華奢な体がユノさんにすっぽり隠れて、ユノさんの首に回された両腕でやっと事態に気づく。


一歩前にでたヒールがカツンと鳴り、上品な巻き髪がユノさんの肩へ触れた。
顔は見えないが、強請るようにユノさんを引き寄せる女性はおそらく以前社長室で会った美人秘書だろう。




一瞬重なって、「もう少し」と甘えるように気の強そうな美人秘書が囁き、再び重なり角度を変えたところで運悪く僕と目があってしまった。
どうしてか、根がはえたように足が動かない。
偶然とはいえ覗き見のようで、そんな悪趣味、僕には無いのに。
無理やり視線をそらす瞬間、彼女がふっと笑った気がした。
ユノさんの首へ回した腕にいっそう力がはいり、永遠に続きそうな口づけがますます深くなっていく。




ユノさんはどういうつもりで僕を呼びつけ、見たくもないラブシーンを見せつけるのか。
ううん、わかってる。
ユノさんにそんなつもりはない。
今だって多分気づいてないと思う。
バカな僕がユノさんを追って勝手に覗いてしまっただけ。



「…もう、いいだろ、」と低い声がした。
「約束を忘れてた社長が悪いのよ。」と今度は甘ったるく拗ねてみせる囁き声。
「腹っ減りが俺を待ってる。悪いがまた今度な。」
ってそれ、僕のこと?
ついさっきまでの情熱的なキスが嘘のようにユノさんはあっさりと言い放ち、もう一度と強請る腕をゆっくりと剥がした。
「っもう、…社長の優先順位が信じられません。今夜は久しぶりにゆっくりできると楽しみにしていたのに。今度って順番待ちしてたら一体いつになるか、…」
以前僕へ向けた気の強さはどこへいったのか、甘えるようにつぶやく彼女はとても儚げで。
「最近はどの誘いも断ってる。空いた時間はほとんどドーナツ作りに使ってるって知ってるだろ?」
「それこそ意味がわかりません。社長ほどの人がドーナツごときに時間をかけすぎですよ。そのせいでどれ程私やソンミさんが苦労しているか。その穴埋めと言われるのでしたら一晩では足りませんから。」




ぼそぼそと聞こえる会話を僕は宇宙語のように聞いていた。
はは、…とユノさんが笑って了解とでも言うように彼女の肩を撫でる。
これはどういうことなのか。
キスって恋人同士がするものじゃないの?
“客や仕事仲間に手を出さない”を信条とする僕としては一番近しいだろう秘書との恋愛など信じられないが、彼女の美しさはユノさんとお似合いに思えた。
それなのに2人の会話は恋人同士のそれではなく、体だけの軽い関係のように聞こえ。


信じられない。


モテるだろうし、それこそ遊び放題だろう。
引く手あまただと本人も言ってたじゃないか。
ユノさんが誰と遊ぼうが僕にはまるで関係ない。



──はずなのに、どうしてこれほど胸が痛いのか。



つい先程見た光景が脳裏に焼きつき、何度も再生する。
小刻みに揺れる広い背中。
ユノさんの後頭部を引き寄せる華奢な手、ベージュ系の上品でいて女性らしいマニキュア。
皮膚を擦り合わせる音が粘着質なものに変わり、それは絡みあう舌を嫌でも連想させ耳を塞ぎたい衝動でどうにかなりそうだった。




凍りついたように止まった呼吸が。
張り裂けそうに痛む胸が。
逃れられない真実を突きつけて、僕はもう認めるしかなかった。




僕はユノさんが好きだ。
同性で、何もかも僕とは相容れないユノさんが、──悔しいけど、好きなんだ。




認めてしまえばすべての疑問は容易に解かれ、僕の心臓が恐ろしいほどの拍動を刻みだした。
どうしよう、なんてことを認めちゃったんだ僕は。
ドーナツショップでアルバイト時代はそこそこ女の子と付き合いもしたけど、社員になってからは仕事に夢中でそんな暇なかった。
いつかワンピースのよく似合う女の子と運命の出会いを果たすんだと信じていたのに。
まさかワンピースとは縁遠い僕よりはるかに男らしい人へこんな気持ち、…あり得ない、あり得ないのに、…




「チャンミナ?」
「っ、…!///」


名前をよばれ、ハッと気づけば僕を悩ませる張本人が目の前にいて、思わず後ずさった背中が壁にぶち当たる。
僕はどれほど放心してたのだろう、すでに美人秘書の姿はなくユノさんと2人きり。


「どうした、ふらついて。そんなに腹が減ったか?」
「あ、…や、えっと、…」


可笑しそうに口角をあげる人の口元へどうしても目がいってしまう。 
ああ、こんなところにホクロがあったんだと今さら気づいて、そこへ唇を寄せた女性を思ってはズキズキと胸が痛む。
女性関係が派手だと予想していたしソンミさんだって漏らしていたのに、実際に目撃して気持ちに気づくなんて自分の馬鹿さ加減にほとほと呆れてしまう。



「待たせたな。お前が飲んでみたいってワインをお前の生まれ年のもので取り寄せた。たまには飲みながらお前の思い出話でも聞かせてくれよ。」
「え、…なんで?」
たかだかドーナツトレーニングをしてるだけの、数多く抱える社員のひとりの何を知りたいというのか。
「なんでって、…」
そこで少し考えるような素振り。
この人は企業の頂点に立つほどの賢さなのに、時々自分の発言に不思議そうにすることがある。



「なんでかな、…でもチャンミンのことが知りたい。従業員を知るのは経営者の義務だってことにしといてくれよ。」
そう言って照れくさそうに笑った人に、そんなのおかしいだろと従業員の人数すら把握してないのかと突っ込みたくなるが、
「…ワイン、1本じゃ足りませんよ、」
なかなか止まない動悸をごまかすようにため息ついて、でも自然と緩む頬はとめられず。



もうごまかしようのない想いをさとる。


生まれ年のワインとか、
それを調べて取り寄せるひと手間が嬉しいんだ、僕は。















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