HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

【ホミンホ合同企画ミーアゲ(meeting again)】あなたが笑えば~最愛~その後30


































その店はチャンミンの通学路の乗換駅を少し歩いたところにあった。



カランコロンと軽快なベルの音が鳴る。
「いらっしゃいませ。」と言いかけた男の表情がめずらしいものでも見たような驚きでかたまるが、でもそれは一瞬で、すぐに柔らかく口角をあげ。


「いらっしゃい、ユノさん。」と言って笑った。






チソンのカフェの場所をユンホはチャンミンやハイルに聞くことはせず、逆にどうしてわざわざ店まで足を運んだのか疑われないよう内緒で行動していた。
チソンだって不思議に思っただろう。
こんな平日の真っ昼間にユンホたったひとりでやってきたのだから。
けれどそんなことはおくびにも出さず人当たりの良い笑顔でユンホをカウンター席へ案内した。



ところが当のユンホは店へ入ってからひとことも発せず案内されたカウンターへも近づこうとしない。
テーブル席が4席とカウンターだけの小さなカフェには壁一面に大小の風景写真が飾られていてギャラリーのような雰囲気だった。
綺麗に磨かれたガラス扉を開けたユンホはまずはその店全体を、そして徐々に視線を近くの壁まで戻し一枚一枚丁寧に眺めていく。




海外の有名な絶景写真もあれば、なんてことない近所の高台から広がる街並みを撮ったものもある。
少し先には濃い木目に射しこんだ鋭角の朝日だったり、水滴が転がり弾ける雨音が聴こえそうなガラス窓だったり、それがほんの少し撮る角度を変えるだけでこんなにも豊かな表情になるのかと驚く。
チャンミンが言っていた“風景が会話してるみたいな”とはこの事かとユンホは思い、まじまじとそれらを眺めた。




そしてふと、店の中央付近に掛けられた写真に気づく。
知らない人から見れば川べりの道を夏の真っ赤な夕日が染めるただの風景写真だろう。
鬱蒼とした森林の向こうに霞むビル群と反対側のなだらかな空き地やグラウンド。
しかしユンホはこの景色を知っていた。
そして、まさかと燻っていた僅かな疑問が徐々に確信へと変わっていく。



「チソンさん。最初から多少の違和感はあったんです。」
「え?なんの話です?」
ふっと頬を緩め、真剣な表情のユンホを前にチソンは珈琲を淹れはじめた。
おすすめのブレンドでいいですか?と慣れた手つきで豆を挽き、芳ばしい香りが店に漂う。
「すみません。貴方のこと、少し調べさせていただきました。やくざと知っていて物怖じせず屋敷へ出入りしたり、チャンミンが望むまま写真を撮りながらさり気なく本宅辺りへカメラを向けてましたよね。」
「っ、それは、」
「確かにあの屋敷の庭は立派でつい撮りたくなる気持ちもわかります。武道場からは駐車場がよく見える。よく遠い目をしていたのは俺の気のせいですか?」
淡々と話すユンホを前にしてチソンの顔色が少しずつ曇っていく。
ユンホが言わんとすることをどう弁解すればいいのか、とぼけたように笑いながらチソンの頭は忙しく回転していた。



「僕はやくざだろうが偏見のない人間です。現にユノさんにしてもチャンミンやハイルにしても普通の立派な若者じゃないですか。それにあの立派な屋敷は職業柄うずうずしてついシャッターをきってしまう。もし都合が悪いのでしたら今後そのようなことは、」
「チソンさん。」
思えば出会いから出来すぎていた。
けれどチャンミンのきらきらと輝くような笑顔を見てはユンホも嬉しくて、少しの疑念ならば見て見ぬふりをしてしまった。
「ずっと不思議に思ってました。道楽のようなカフェの経営と豊富な撮影旅行の資金。どう見てもスポンサーがいると考えて間違いないですよね。」



チャンミンやハイルへ危害を加えようとするものではなく、それが分かっているからユンホもチソンを責めに来たわけじゃない。


「この写真の川べりはある人と父の思い出の場所なんです。ご存知でしたか?それとも依頼されて撮ったものですか?」


ゆっくりとユンホが振り向きチソンと目線を合わせた。
強張った表情に動揺で揺れる視線。
手元が狂いポットのお湯がドリッパーを外れカウンターを濡らす。
「っ、熱っっ!」
「チソンさん!」
熱湯がチソンの手首にかかったらしい。
弾むように後ずさり顔を歪めたチソンへユンホの対応は素早く、一瞬のうちにチソンを引き寄せ気づけばチソンの腕を水道水が冷やしていた。
「あ、…すみま、…」
「いいから。もっと冷やしてください。動かないで。」
めいいっぱい捻った蛇口は水飛沫をあげチソンの赤く色づいた患部を濡らし、チソンを背後から覆うように立つユンホまでも濡らした。
稽古で肌をぶつけ合うのは初めてじゃないけど、このシチュエーションはそれとは違う。
ユンホは見た目筋肉質のチソンが思ったより華奢なことに驚いたし、チソンは今まで横顔を盗み見るのがせいぜいだったユンホの顔が自分の耳元で触れ合うほど近いことに胸の動悸を抑えられない。




大した火傷ではない。
大袈裟に反応してしまったのをチソンは後悔していた。
ユンホがいつもの稽古着や部屋着ではなくスーツ姿なのも良くない。
どことなく面影の似た容姿に隠しきれないカリスマ性。
チソンは心臓の音が背中を突き破りユンホへ届いてしまうのではと心配し、そして大きくため息を吐いた。



「昔、…お世話になった女性がここで飲み屋をやってたそうです、…」
「え?」
チソンの小さなつぶやきは水道の音にかき消され、耳を寄せるユンホへさらに激しくなる動悸を自覚しながら再度つぶやくしかなく。
「懐かしさからか、こっそりとひとりで店へやってきたのが3年ほど前です。あの写真は当時から壁に掛かってて、…あの方はそれを見つけて暫く時が止まったように見つめていました。」
あの方とは誰か、…名前は出さなくても当然ユンホにはわかる。
そして昔世話になったという女性のことも。



そうか、…母は昔、ここで店を開いていたのか。



以前ロジンに聞いたガンソクと母の馴れ初めをユンホは思い出していた。
ユンソクに裏切られ荒れて逃げ込んだ場所。
ガンソクが唯一“愛”に似た思いを抱いた女性との安らぎの場所で、かつてユンソクと歩いたであろう川べりの写真を見つけた。
ガンソクはその時何を思い、どう運命づけたのだろう。



「本当はもっと入口近くに掛けてあったのを少しずつ中央へずらしていったんです。度々訪れるあの方にもっと奥まで入ってほしくて。」
伏し目がちにポツポツと話すチソンは武道場で会う爽やかな男前とは印象を変えていて、そう言えば初対面で笑った顔が誰かに似てると思ったのをユンホは思い出していた。



──そう、ユンソクに似ているのだ。



つくづくガンソクは好みがわかりやすいと、息子ながらユンホは苦笑いが浮かぶ。
そういうことなのだ。
昔馴染みの店を訪れ、そこでユンソクに似た男を見つけた。
ユンホには到底理解できないが、ガンソクはいくつになってもモテるらしい。
それに金もある。
もしかしたらパトロンになることを条件にチソンへせまったのかもしれない。




ところが少しずつ話しはじめたチソンの話はユンホの予想を裏切るものだった。 
純粋に支援を申し出たガンソクはチソンへいっさい手を出さず、男色だという事実も隠していたらしい。
勿論この界隈で店を開いていて東神会の名を知らない人間などいない。
ガンソクがそこのトップだということもすぐにチソンの耳に入ったに違いない。




「俺には才能を見抜く力があるんだと、あの方はよく仰ってて。見返りを求めず、援助してくださってました。それなのにあの方を求めたのは僕です。相手に不自由しないと知っていても止められなかった。あの方は憐れみをくださった。僕はそれでよかったのに、…それがまさか、」
ぐっとチソンが言葉につまり、ユンホは信じられない思いでチソンを覗きこんだ。
ガンソクには常に絶え間なく愛人が何人もいたが、愛人同士が揉めたという噂もなく、屋敷へ乗りこんできたこともない。
一定の距離を保ち、愛人と言えど愛することはない。
ガンソクの冷酷さはそれによるものも大きいのだ。



「まさか、…なんですか?」


愛人をすべて切ってるとロジンから聞いた。
それでこんな行動に?
チャンミンやハイルと知り合い、屋敷へ入り込んで何をしようと言うのか。
ユンホにはチソンが悪い人間とは思えず、無闇に誰かを傷つける人間でもないと直感的に知っていた。
では、どうして。



「あの方がすべての愛人を切ってると聞いて、…僕にはいつ別れ話があるのか、ずっと不安な日々を過ごしました。それが、…なんて言ってきたと思います?」



「友人に戻ろう、って。このまま援助させてほしいから元の友人に戻ろうって言うんです。」



お願いするのは僕の方なのに、可笑しいでしょう?と言ってチソンは半分泣き笑いの状態で、ユンホはガンソクがそこまでユンソクの為にしているのかと驚きでうまく言葉が見つからない。
チソンは愛人と言っても少し種類が違うのだろうが、それにしてもそこまで労力を費やして肝心のユンソクへはあれほど冷めた態度とは。



「…あの写真の川べりは父が本当に愛する人と歩いたかけがえのない場所なんです。」
再びユンホは確認するようにゆっくりと口にする。
「知ってます、…と言うか、もう亡くなってる人を想ってるのだと勝手に思い込んでました。」
すべて告白して楽になったのかチソンの口調が少しばかり軽くなり、それを見てユンホも僅かに口角をあげる。
「残念ですが、それはチャンミンではありませんよ。」
当然わかっているだろうことを冗談混じりにつぶやくユンホへチソンはいつもの柔らかい笑みを見せ、


「それも知ってます。ただ、あの方の支援で海外へ勉強に出る前に一目会ってみたかっただけなんです。」と。




どこで知ったのか、
“篠笛を奏でる天女に”と付け足したチソンへ、
「それじゃあ俺が会わせてあげましょう。」
一瞬考えたあと、不敵な笑みを浮かべユンホはそう言った。















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