HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

【ホミンホ合同企画ミーアゲ(meeting again)】あなたが笑えば~最愛~その後39


































もう二度とあんな光景は見たくない。


一瞬で心臓が凍りつくような。
身体中の血が一気に地へ墜ち流れ出たような。


ガタガタと震える手は何も掴めず、強く噛みしめた奥歯が鳴るのを地鳴りのように遠く聞いていた。











その日チャンミンとハイルはめずらしく同じ時間にバイトをあがり、今夜こそ一緒にライブ鑑賞をしようとまっすぐ家路に着いていた。
ユンホはまだ帰っていない。
きっとまだ仕事だろうと特に気にせず風呂へ入ろうとしたときだった。
ガタンッと何かが倒れる音。
チャンミンはハイルと顔を合わせ不思議そうにする。
こんな夜中に訪ねてくる人などいない。
外は夕方に降りだした雨が昼間の蒸し暑さを洗い流すようにいまだ降り続いていた。



「ハイル兄、…なんだろ?」
「猫がチャンミンの鉢植えでも倒したんじゃねぇの?」
なんてことない会話をしながら、それでも二人して様子を見に玄関の引き戸を開けた。




「っ、…ひっ!」 
「ぅわ!」



最初視界に入ったのは降りこんだ雨ではないドス黒い滲み、それが雨をはじく敷石を点々と濁していた。
チャンミンの心臓が大きく跳ねる。
玄関照明だけでも分かる、…あれは血だ。
視界のすみに片足が見えた。
此処で力尽きたのだろうか、玄関戸へ浅く凭れるように倒れた人。
今朝着ていったスーツは見る影もなく血と埃で汚れ、所々破れて肌が露出している。



「っ、ユノ兄!!」
最初に駆け寄ったのはハイルだった。
チャンミンは動けなかった。
身体中の血液がサァーっと引き、恐怖と衝撃で足が竦む。
「ユノ兄!ユノ兄!意識がない、…っ、チャンミナ、救急車!!」
ハイルの怒鳴り声が聞こえるのに、チャンミンは指先ひとつ動かすことができない。
ユンホの端整な顔は痛みで歪み、泥で汚れた頬は腫れ、唇をつたう血は黒く変色していた。



「チャンミナ!!」
もう一度名前を呼ばれチャンミンは呼吸すら忘れていたことに気づいた。
酸素をとりいれ震える膝を折る。
血で汚れたタイルの上で膝をつきユンホの手へ怖々と触れた。
冷たい。
血色を失くした氷のような手へ体温を分け与えるように、そして震えて定まらない手でユンホの頬を包む。



「……っ、…ユノ、…ユノ?」
囁くような声ではユンホへ届かないのか、雨音がすべてを消し去るのか、ユンホはピクリとも反応せずぐったりと肩で息をしていた。






驚きとショックで震えていたのはチャンミンだけじゃない。
これまで卑怯な手口で喧嘩を仕掛けられた兄を何度も見てきたが、多勢に無勢であってもここまでぼろぼろな姿を見たのは初めてだった。
ぼろぼろどころかかすり傷ひとつ負うことなく相手を沈めてきた兄なのだ。
真っ青な顔をして兄の名前を呼び続けるチャンミンも心配だが、まず兄を病院へ連れていかなくては。
いつもはハイルよりしっかり者のチャンミンだが、今回ばかりは頼りになりそうにない。
目に見えて震える体はまるで生命を吹きこもうとするようにユンホへ触れて熱を分け与えている。
混濁した意識ではチャンミンだと理解できないだろう。
鼻先を擦り頬を寄せるからチャンミンも血だらけじゃないか。



とにかく救急車だとハイルが体を翻したとき、──ん、と低く唸り声を背にした。
「ユノ兄?」
ハイルは振り返りユンホへ歩み寄る。
少し意識が戻ったらしい。
苦しそうに呻きながら、手だけは優しくチャンミンの頬を撫でていた。



ユノ、ユノ、…と変わらず名前を呼び続けるチャンミンへかすかに微笑み、痛みを吐き出すように大きく肩で息をする。
「っ、痛っ、…」
「ユノ!」
顔を歪め腹の辺りを押さえるユンホを肋骨が折れているかもしれないとハイルは見ていた。
自分も経験があるからわかるのだ。
「ユノ兄、とにかく病院へ行こう。救急車をよぶ?それとも救急へ運ぼうか?」
ハイルはユンホの怪我の具合を確かめたいがチャンミンがユンホの傍を離れようとしない。
退くように言っても絶対に退こうとしないのだ。
「いや、いい。病院へは行かない。…ってぇ…、はぁ、…俺は、大丈夫、…」
「大丈夫じゃないだろ?そんなボロカスにされてさ!」
ふっとユンホが笑った。
変わらずチャンミンがユンホの頬や手を撫でていて、少しばかり血色が戻ったように見えた。
「ああ、…でも、アッチの方が酷いからな。…っ、はぁ、…ま、相討ちだ。ヤツが病院へ行くとは思えないから俺も行かない。」
「はあ?」
アッチとかヤツとか、ハイルには誰を指して言っているのかまったくわからない。
それに相手が病院へ行かないから自分も行かないなんて子供の我儘かよと呆れるばかりだ。
「関係ないだろ?治療しなきゃ治るもんも治んねぇじゃん!」
武術で鍛えた体と受身の技でユンホはこれまで怪我という怪我をしたことがない。
それがこの瀕死の状態。
ハイルは兄へこれ程のダメージを与えた人間に興味を覚えた。
これほどの凄腕だ、きっと大物に違いない。
それが相手も同等の怪我を負っているなら仲間が仕返しにくるかもしれないのだ。
病院の方が安全に決まっている。
ハイルは無理矢理にでもユンホを連れていこうと決め、チャンミンを押しやり身を乗り出した。




「ハイル兄!」
「え?」
そのハイルを逆に押し返したのはチャンミンだった。
さっきまで血の気を失くしガタガタ震えていたチャンミンじゃなく、真っ直ぐな視線と意思のこもった口調でハイルを制止してきたのだ。
「ユノを、…ユノを部屋へ運ぶから手伝って。」
「は?車を呼ぶのが先だろ?」
「ユノが行かないって言ってるんだから病院へは行かない。様子をみて医者へ来てもらってもいい。看護は僕がするから。」
馬鹿を言うなとハイルの喉元まで出た言葉はチャンミンの真剣な眼差しにのみこまれる。
時々チャンミンは恐ろしく頑固で鋼のような意思を見せるが、これもそうなのだとハイルは理解した。
「…それに、…多分、ハイル兄にも少しは責任あると思うから。」
「え?何のことだ?」
まったく身に覚えのないことを指摘されハイルは食って掛かるが、取り敢えず運びましょうと言われれば言う通りにするしかなかった。





「っ、…つぅーー、痛ぇ、…ん、はぁ、…」
「ユノ、…もう少し。もっと僕へ寄っ掛かっていいから。」
長身のユンホをたかが数メートルの距離と言えど運ぶのは大変な仕事だった。
しかも怪我人だ。
慎重に少しずつ進み、痛みからか脂汗の浮いたユンホの額をチャンミンは自分の袖で拭ってやった。
ふとユンホの口元が緩む。
それを見てチャンミンも微笑み返した。
もう震えてはいない。



寝室へ寝かせてからのチャンミンの行動は迅速だった。
断ち切りバサミでユンホの衣服を素早く剥いでいく。
熱湯に浸したタオルで全身を丁寧に拭き、傷をひとつひとつ調べ細かくメモに記した。
ユンホも心置きなくチャンミンへ体を預けているようにハイルには思えて、その二人だけの世界に踏みいることがどうにも憚れるのだ。
本当についさっきまでのチャンミンはなんだったのかとハイルは驚いていた。
それほど迷いなく動き、ハイルは眺めることしかできない。
「ユノ、…お水飲んで、」
「ん、…っ、」
やはり肋骨が折れてるのだろうか、上半身を持ち上げるのさえ億劫なようでユンホの眉根に深くシワが寄った。
「ユノ?」
「ああ、大丈夫。」
我慢強いはずのユンホが尋常じゃない汗をかいている。




ハイル兄、…とチャンミンがハイルを呼び、少し迷ってから「目、…閉じてて、…」と言う。
何を言いたいのかハイルにはわからない。
わからないまま目を閉じろだなんて。
逆に凝視してしまったチャンミンの背中がゆっくりと下がっていく。
「 ん、…チャンミ、…」
ユンホの声が口移しで与えられた水によって消えていき、代わりにコクリと鳴った喉とユンホの満足そうなため息をハイルは聞いた。
ハイルからはチャンミンの背中しか見えない。
見えないはずなのにハイルは恥ずかしくて堪らない。
チャンミンの首筋から出てきた手がそのまま後頭部を引き寄せ、もう一度とせがむ様はどんな映像よりいやらしく映るのだ。



少しずつ何度かに分けた口移しは、やがて愛おしむようなキスに変わる。
すがりつく後頭部を擦り傷だらけの手が撫で、もう一方の手は離れないよう首筋に置かれていた。
ユノ、…と消え入りそうなチャンミンの囁き声をハイルは胸がしめつけられるような気持ちで眺める。
「泣くな、…チャンミン、…泣くな、」
「…っ、…泣いてない。」
そう言いながらしゃくりあげるチャンミンをユンホは抱き寄せるが、不規則な呼吸と堪らず漏れる呻き声は怪我の酷さを示していた。



「僕はなにもされてないよ、…少し話しただけ。殺気も感じなかったし、本当にただユノへの興味だけで僕へ話しかけたんだと思う。」
「ん、…わかってる。」
「それなのに、…っ、…」
チャンミンの震える肩がまるくうなだれ、それをユンホは宥めるように撫でる。
それを見てハイルは先日の光景を思い出していた。
さきほどチャンミンが言ったこと。
身に覚えがないと不思議に思ったハイルだったが、思い返せばそれが原因としか思えないのだ。





学校帰りに待ち合わせた駅でハイルは小走りに目的地へ向かっていた。
帰りがけ友人につかまって少し遅れてしまった。
そしてこの角を曲がればすぐ、というところで、ふと見慣れた後ろ姿に気づく。
それは待ち合わせた本人と長身のチャンミンよりもさらに背の高い男だった。
背が高いだけじゃない、がっしりとした体躯は細身のチャンミンをさらに華奢に見せていた。
知り合いなのだろうか。
遠くて細かい表情までは見えないがそれほど警戒した雰囲気でもない。
ただ以前何度も連れ去られた経験からチャンミンに対する警戒心は強く、ハイルは心配になってさらに足をはやめた。
もしチャンミンに何かあったらそれこそユンホの怒りが恐いのだ。
今でも登下校は車で送迎させるユンホだが、ハイルと約束した日だけはハイルの頼みもあり電車通学を許していた。
それもあって焦るハイルの気配に相手の男が気づき、ハイルを一瞥したあと消えるように立ち去ってしまった。




──だって、…ハイル兄から聞いたんでしょう?


そうつぶやくチャンミンを眺めながら、ああ、やっぱりとハイルは奥歯を噛みしめる。
そして不用意にユンホへ話してしまった自分をハイルは責めた。
せめてジノへ話せばよかった。
いつも冷静な男がチャンミンに関してだけは別人だから注意しろよ。とジノから言われていたのに。





「…キッカケにはなったけど、原因ではない。大丈夫、チャンミナ、…」


優しく諭すユンホの声が届いているのか、
チャンミンの背中は自分を責めるようにいつまでも震えていた。














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