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HOTミンな関係

天然なのにがっつり男なユノと賢く清廉、つんとしてもやっぱり可愛いチャンミンが大好きなほみんペンです。R18あり。

Baby don't cry45


































しばらくマンションに来るな。と勝手なことを言っておいて、自分はたびたびショップへ顔を出すから腹が立つ。



「クリスマス商品の売れ行きが好調らしいな。」
「あ、ユノさん、…」と、その後ろにソンミさん。
まるで自分ちのように、…って本当に自分の店だからいいんだけど、それにしても気安く厨房まで来すぎだ。
こっちはユノさんの顔を見ただけで動揺しまくって仕事への集中力が半端なく落ちるんだから連絡くらいしてくれよと思う。
ちょうど今は製造を終えポーター作業にかかっていたからタイミング的に良かったのだけど。


そのまま奥の倉庫で在庫チェックや数ある管理表のチェックをはじめたユノさんを横目に、僕はグレーズ容器の清掃を続ける。
マンションへ来るな。と言った理由をユノさんは何も教えてくれなくて、僕は少なからずむくれていた。
どうもユノさんは言葉が足りない。
主寝室へ入るな。というのもそうだけど、理由を言わないからコッチは突き放された衝撃でドンと沈むんだとユノさんはわかっちゃいない。


「な、正解だったろ?」
「はい?」
その当人は僕の感じがいいとは言い難い態度を気にもせず、普段通りなのも面白くない。
「クリスマス商品。発売から初週の売上げでそれ以降の自動納品数が決まるから思いきり製造して売りきる計画が功を奏したな。」
確かに思いきりよく発注を掛けれない弱腰な僕を、俺が責任を取るとまで言って追加発注を掛けたのはユノさんだ。
毎年変わるクリスマス商品はその年によって当たり外れがあるし、うちのような零細ショップでは原材料を余らせたら即赤字に繋がる。
「今年のは売れると思ってた。当たりだろ?」
嬉しそうに笑うユノさんだが、去年のクリスマス商品をこの人が知ってるとは思えない。
「そうですね。感謝してます。」
ぶっきらぼうに言う僕へ心外だという表情。
「…どうした、シム店長。困ったことでもあるのか?」
さすがに僕の態度が神経に障ったらしい。
眉間の皺が恐い。
さらに研ぎ澄まされる切れ長の眸が恐い。
立ってるだけでオーラがあるのに、それに怒りが加わると挫けそうなほど恐いんだってば。


「いえ。強引に振り回されるのは慣れました。けど、フライヤーへ落としたら終わりじゃなくて、モッチリングのようにタマにバラしたり空気を抜いたりすることが必要な時だってあります。」
「は?」
何言ってるんだ、僕は。
これじゃあ自分がモッチリングみたいに面倒くさいヤツだって言ってるようなものだ。


一瞬ユノさんの眉根が寄って、言葉なく僕を見つめる。
僕はなんだか居たたまれなくて、大型のグレーズ容器を殊更丁寧にタワシで擦り続けた。




「ソンミ。」と呼んだのはユノさん。
チラリと厨房出入口にあるドーナツ運搬専用の小型エレベーターへ視線を向け、最後に製造したオールドドーナツをひとつ手に取った。
「特別に出来立てのオールドドーナツをご馳走しよう。内線で連絡しておくから下のホールで珈琲と一緒に食ってこいよ。」
そう言ってソンミさんの返事も聞かずオールドドーナツひとつをペーパーナフキンにのせエレベーターのボタンを押してしまった。
「え、…社長、…そんな時間ありませんって。今日だって15分の滞在予定じゃないですか。」
「いいから。10分で食えばいいだろう。ほら、さっさと行かないと下でアルバイトの子が急にオールドドーナツひとつ降ろされて不思議がるだろ?」




なんという強引な社長様だ。


という僕の呆れ顔をすぐさま大きな手が包みこむ。


「ちょ、ユノさん。スーツ姿で厨房に入るなっ!」
「 じゃあお前が厨房から出てこい。」
そんな押し問答を続けたあと、僕はあっという間にユノさんの腕のなか。
「何を怒ってる?言わなきゃ分からない。」なんて言ってくるから、その説明足らずの口をムギューっと伸ばしてやる。
イテッって当たり前。痛くしてるんだ。
「マンションに来るな、って言うなら理由が知りたい。ユノさんを縛るつもりも面倒なヤツになるつもりもない。ただ、…理由が知りたい。」


一瞬間があって、身長が変わらない僕らの距離はピントが合わせにくいほど近い。
ユノさんの大きめな黒目が所在なさげに揺れた。
左右に何度か。
そして消えそうな声で、──ゴメン、って、謝り慣れてないな、っもう。




一方的な命令口調がユノさんの常だったのだろう。
けれど、それじゃ駄目。と言ったら、ユノさんは自嘲気味に苦笑い。
そうだな。と、大切に胸にしまうような仕草で頷いてくれたから僕はそれだけで嬉しくなる単細胞らしい。



「時間がある時に話そうと思ってた。近々連絡するから、それでいいか?」
「…いいも何も、今は制限時間残り5分を切ってるじゃないですか。」
そもそも滞在時間15分ってなんだよ。
何しにきたわけ?と思うけど。
「そうじゃないとソンミのお許しが出ない。アイツはああ見えて結構厳しいんだ。」
肩を竦めながらニッと笑う愛しい人が啄むようにツンと口づけ、5分でも会いたい。なんて言ってくるから恥ずかしくて堪らない。
「めでたいな、お前。」と初対面でいきなり吐き捨てた仏頂面が遥か昔のようだが、きっとそれは僕だって一緒だ。



きっかり5分お互いの口内を味わってから僕らは一緒に階下へ降りていった。
ソンミさんは珈琲片手にバイトの女の子と談笑していて、それまでの緩んだ表情をわざとらしく正すのに笑ってしまった。
コホンとひとつ咳払い、「どうやら社長は貴重な休み時間を随分ここで費やしてるようですね。」と呆れたようにため息つくが、責めるのとは違う。
僕らの関係を知ってか知らずか、ソンミさんの視線はいつも優しい。


“アンドロイドのように仕事をこなす社長のメンタルが大きく揺れ動くとき、ほとんどの原因はチャンミン、貴方です。”


そう言われたのは確か外販最終日だったと思う。
毎朝手伝ってくれたユノさんの代わりにソンミさんへは多大な迷惑を掛けたに違いない。
申し訳なくて深く垂れた後頭部を、優しく手のひらが往復した。


“感謝してるんですよ。”とは、どういう意味だろう。
不思議そうにする僕へソンミさんは意味深な視線をよこし、僕の肩をポンポンと。 
“まあ、チャンミンが初めて社長室の扉を開けてドーナツ愛を語った日から分かっていたことですがね。”
そう自己完結して去っていったソンミさんは、あの日初対面で感じた好印象どおり安心感とぬくもりを僕へ与えてくれるんだ。










暫くしてユノさん達とすれ違うようにやって来たのは、僕の人生をまるごとひっくり返す力を持つ人だった。
いつものように上品な所作でモッチリングとブレンドを注文しカウンター席に腰かける。
すぅっと息を吸い、「ドーナツの甘い匂いと珈琲の香りが落ち着くのよね。」と優しげに微笑んだ。
僕はこの人をいち常連さまだと思っていたときから、いやユノさんの祖母だと知ってからも、この目の前の老婦人が結構好きだ。


母を亡くし身寄りのない僕を、求めて探し出してくれた人。
母を大好きだったと、眸を潤ませ愛おしそうに僕の名を呼んだ人。
それに嘘偽りは無いのだから。



けれど、「つい先程までユノさんが店舗チェックにみえてたんですよ。」と言ってしまったのは失敗だった。


「あらあら。あれほどドーナツショップ買収に難色を示していたあの子がこの入れ込みようとは驚きだわね。」
そう言ったあと、 
「余程チャンミンを気に入ってるのかしら。これではユリンが妬くのも無理ないわ。」とはどういうことか。


ユリンって確か、ユノさんの女性秘書がそんな名前だった。
ユノさんがあまり名前を出さないから僕もすっかり忘れていた女性秘書の名前がユノさんの祖母の口から出ようとは。
「あの、どういう意味ですか?」
「彼女はもうずっとユノに仕えてくれてる秘書なのだけど、それ以上の関係じゃないかと私は踏んでるのよ。彼女なら反対しないからそろそろ身を固めなさいと言ってもユノは首を振るばかりでもどかしいったらない。」
はぁとついたため息を飲み込むように会長は話しはじめた、まるで内緒話みたいに手のひらを口元へ寄せて。
「それがここのところ最近、ユノのマンションで頻繁に会ってるみたいなの。そろそろかしらね。」
ふふと人懐っこい笑顔を向けられ、僕は同じように返さなくちゃいけない。
そう思うのに、強張った筋肉が思うように動いてくれず返事すらできそうになかった。




「…チャンミン?」
「あ、…いえ、」



なにか理由があるとわかっているのに、



「以前貴方のことをユリンに尋ねたら、“ドーナツ限定ではありますが、夢想家という点では社長のお父様と同類ですね”って。やっぱり親子だから似るのかしら?」


そんな見当違いな思いこみに反論することもできず。




「もしかしたらチャンミンの義姉になるかもしれない人よ。仲良くしなさいね。」


全力で否定したい事柄をこの場で言うわけにもいかない。




テープルを拭くためのダスターをほつれるほど強く握って、さっきの5分でなぜ少しでも事情を聞いておかなかったのか後悔しながら、


僕は今夜のシフトに思いを巡らせていた。













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